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[前編]海外では事業者がネットワーク共有に向かう,競争はサービス・レイヤーで

MWC(Mobile World Congress)の運営で知られるGSMアソシエーション(GSMA)は,携帯電話にかかわる世界規模の業界団体。2009年3月には20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)に対し,携帯電話業界を代表して要望を発信した。来日したコンウェイCEOに,その要望の内容のほか,日本の通信機器メーカーや通信事業者に対する率直な意見を聞いた。

厳しい経済環境の下で,携帯電話業界は何を考えるべきか。

 モバイルそしてワイヤレス・ブロードバンドが非常に大きな経済効果をもたらすと考えている。4月に英国ロンドンで開催されたG20の前に,26社の通信事業者とベンダーがGSMAとしてメッセージを出した。

 ここで主張したのは,モバイル分野では,適切な条件の下に適切な周波数帯域が必要であること。そして安定した規制の枠組みが必要であるということだ。

 現在,経済環境は非常に特異な状況にある。こうした中でそれぞれの国が,同時並行でブロードバンドを拡大していけば,経済効果を高められる。

 今回,総務省にフォローアップをするために日本に来た。我々は,日本政府が全世界のブロードバンドの最適化に協力してくれると確信を持った。

電波政策について,2月のMWCで,“デジタル・デビデンド”について発言していたがその狙いは。

 デジタル・デビデンドとは,テレビ放送をアナログからデジタル化した後で,空いた周波数帯を指す。そのうちの低周波帯域をモバイル分野で活用したいと要望した。低い周波数帯を希望したのは,通信事業者がエリアをカバーするために効率が高いからだ。

 欧州ではスイスやフランスなどが,ITU(国際電気通信連合)が推奨する周波数帯を配分することを決めた。フランスはモバイル・ブロードバンドを有効に活用できることを証明してくれたので,GSMAが政府のリーダーシップ賞として表彰した。

具体的にはどのあたりの周波数帯を使いたいのか。

ロバート G.コンウェイ氏
写真:的野 弘路

 決まった周波数はないが,700MHzから800MHzあたりだと効率が良い。各国で同じような周波数を使うようになると,メーカーは全世界で共通に使える装置を製造できるようになる。

 これまでも携帯電話は,GSMから,W-CDMA,HSPAになって,LTEへ移行していくという共通のフレームワークを作ってきた。ただかつての日本は違う方向に進んでいた。技術は先進的だったが,日本だけで完結していたため,世界のどの国にも採用されなかった。これが日本の成長の可能性を阻害してしまった。

 先日,KDDIがLTEを使うことを発表した。この結果,日本の通信事業者はすべて,共通の技術を採用することになった。海外の事業者もLTEを使うようになると,大きな規模の経済性が見込めるようになる。

LTEを導入することで,将来どのようなことが起こるのか。

 経済性の側面から,通信事業者にはネットワークを共有していきたいという意向がある。特にLTEの構築は,各社がばらばらにやっていたら資金が不足する可能性が高い。このためネットワークを相互乗り入れするという機運が,スカンジナビアなど欧州で盛り上がってきた。

 さらに中国は2重,3重で投資をすると経済的な合理性がないため,通信事業者がインフラを共有するよう政府が主導した。可能なところを合理化できれば,ユーザーが支払う料金も安く済ませられるという考え方だ。

LTEによって,アプリケーションの将来も変わるのか。

 LTEでネットワークが共有されると,カバレッジの競争はなくなり,サービス・レイヤーでの競争になる。例えばアプリケーションやコンテンツ,ユーザー・インタフェースなどで通信事業者がそれぞれの特色を打ち出して,自身がターゲットとしている層にアプローチするようになる。つまりモバイル・ブロードバンドが,アプリケーションの活用を拡大する。

 既にスマートフォンと高速回線の組み合わせにより,モバイルを使ったソーシャル・ネットワークが発達してきている。例えば「Facebook」では,ユーザーは固定網を使ってパソコンから利用するのとほとんど同じように,スマートフォンからサービスを使っている。

 ビジネス・アプリケーション機能も発達してきている。iPhoneやBlackBerry Bold,同Stormは,モバイル・ブロードバンドとの組み合わせによって市場を広げ,アプリケーションを成長させた。象徴的な動きが,米アップルのApp Storeで10億回のダウンロードがあったこと。これは,世界中の多くの人たちがアプリケーションをスマートフォンにダウンロードしていることを物語っている。

GSMアソシエーション CEO
ロバート G.コンウェイ氏
ディキンソン大学で英国大学学士号(BA)を,カトリック大学法科大学院で法学博士号(LLD)をそれぞれ取得。ミュラー・ミンツ法律事務所での勤務を経て,モトローラに移籍する。モトローラでは幹部チームの一員として数年間勤務した後,1999年にGSMアソシエーションに参加。2003年にはGSMAを取締役会主導の構造に変革し,取締役会の創設メンバーとなる。さらにMobile World CongressとMobile Asia Congressを含めGSMアソシエーションのイベントを整備した。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2009年4月20日)