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会員数の伸び、ユーザーの評価はどうか。8月28日にかざすクーポンの全国展開を完了したが。

宇井 昭如(うい・あきゆき)氏
撮影:山田 愼二

 1400万人のメール会員のうち、かざすクーポンの会員は2009年8月に450万人を突破した。2008年5月の九州での開始から1年3カ月で450万人を突破したことは、当初の予想をはるかに超える。おサイフケータイによる会員をここまで抱えている企業は無いはずで、これはクチコミが効いた結果だと思う。

 開始に当たっては1カ月間、福岡でサービスを提供して調査した。お客様からは慣れれば便利という評価。おサイフケータイは先端の機器で、それを使いこなすことはかっこいいという意見もあった。かざすクーポン導入でクルー(店員)も楽になる。こうした中で、エリア拡大とともに会員数が増えている。

CRMの面ではどのような効果が出ているか。

 9月4日から新しいプロモーションを始めた。(新機能の)「かざす会員証」を使ったスタンププロモーションだ。購入したときに、かざす会員証をかざすと、レシートに会員番号が付いてスタンプがたまる。今やろうとしているのは、あるハンバーガーを月間4つ買ったら、翌月は割引するというもの。スタンプカードはどこでもやっているが、途中で捨てたり、あきらめたりすることが多い。そのスタンプをケータイで実現できるのもCRMの1つの効果といえる。

 もう1つは購買履歴に応じて、セグメント化したクーポンを配布できること。例えば、来店が途切れているお客様にクーポンを配布して利用を促進できる。本格稼働はこれからだが、狭いエリアでテストを実施して既に効果を実感している。

ケータイで顧客をどこまで取り込めそうか。

 日本初に近い取り組みを、高校生、20代、ファミリー層と、老若男女に浸透させたい。2、3年前にケータイのサービスを使ってもらうことには誰もが懐疑的だった。我々のサービスは情報リテラシーの高くない人に向けている。ここがポイントだろう。

 2008年春にケータイのトップページはFlashを使ったものにしたが、実はNTTドコモからは当初、Flashを使うと利用者から使いにくいというレッテルを張られかねないと言われていた。一方、私の着眼点は、押せるボタンの数で使いやすさが決まるということ。HTMLページではリンクが数十にもなるが、Flashでは10程度にした。30代以上の人にもリーチするには「簡単」に。簡単とは少ないこと、という論理だ。押す場所を少なくすれば、分かりやすく誰でも使えると考えた。今でも50代以上のユーザーがいるが、ケータイでいけると考えている。

全社的に見た位置付け、成功の要因は。

 成長戦略の上にある「革新戦略」の位置付けになる。2008年の決算短信の中でも、主要な施策の一つにイーマーケティングが入っている。店舗開発と同じレベルで、当たり前の施策になってきている。

 成功の要因としては、会社としてのビジョンを持って専門部署を設けたこと。そうしてテクノロジーに結び付けて利便性を高め、利用者の価値を生み出したことだ。まずトップの理解が大きく、2007年9月に(かざすクーポン事業化で)NTTドコモとの共同出資会社を設立したことが大きな決断で、戦略的な投資をすることができた。また、外の企業から提案をもらうといったスタンスでは、充実したものはできなかっただろう。内部にITやモバイル、さらにマクドナルドの独自性を十分理解した上で成功するアイデアを出す、一人称で考えられる人が必要。たとえ外部企業でも、フルコミットで、一人称で考えてもらえる人を確保することが大事になる。

日本マクドナルド イーマーケティング本部 上席部長
宇井 昭如(うい・あきゆき)氏
1966年北海道生まれ。90年リクルート入社。教育機関広報事業部にて営業経験後、DTPを活用した求人・住宅情報誌の造本工程の効率化を担当。無代誌事業開発や「ホットペッパー」のWeb版立ち上げ責任者などを経て、2005年インデックス入社。ソリューション事業局長を経て、06年にGocco代表取締役に就任。07年日本マクドナルドに入社し、現職。

(聞き手は,渡辺 博則=日経ネットマーケティング編集長,取材日:2009年8月31日)