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 「イノベーション創出は高価で消耗的な贅沢だと考えているが、それは間違いだ」――。米ガートナー・リサーチ マリー・マザーリオ リサーチディレクターはこう語る。莫大な研究開発費用を投じなくても、CIOがマネジメントに関する考え方をシフトするだけで、新しいアイデアを生み出して形にすることが可能だという。マザーリオ氏にイノベーションの創出について聞いた。(聞き手は羽野 三千世=ITpro編集)

今、CIOやIT部門にとってマネジメントのイノベーションが重要だと提言している。マネジメントのイノベーションとは具体的に何か。

 まず、「イノベーション」という言葉を定義したい。私が言うイノベーションとは、新しいアイデアを実行してビジネスのバリューを創出することだ。そして、そのイノベーションは「プロセスのイノベーション」「プロダクトのイノベーション」「マネジメントのイノベーション」の三つに分類される。

 プロセス、プロダクトのイノベーションとは、製造プロセスの改善や製品技術の革新など、これまでも指摘されてきた一般的な「イノベーション」である。一方、マネジメントのイノベーションとは、CIO(最高情報責任者)やIT部門の責任者が、自分たちの意思決定と監督の仕方を振り返ってみて、それがプロセスとプロダクトのイノベーションを推進しているのか、それとも妨げになっているのかを考えることだ。つまり、考え方のイノベーションである。

 例えば米グーグルが、マネジメントのイノベーションで成功した企業の一社だ。同社は、CIOがソフトウエアエンジニアの時間を管理することで、エンジニアがプロセスとプロダクトのイノベーションに使える時間を確保できるようにした。エンジニアが、労働時間の70%を業務に、20%を既存ビジネスに関するアイデア創出に、残りの10%は全く新しいアイデアの創出に使えるようマネジメントを変革したのだ。最後の10%の時間に、「Gmail」など革新的な新サービスが生まれている。

マネジメントのイノベーションにも多額の投資が発生するのでは。

 製品に関するイノベーションを実行するには、まとまった研究開発費用が必要になるかもしれない。しかし、マネジメントのイノベーションは考え方のシフトなのだから、非常に節約型のイノベーションだといえる。

 もちろん、マネジメントのイノベーションによって実現したいのは、プロセスや製品のイノベーションである。だが、これからのIT業界でビジネスのバリューを生み出すためには、全く新しい技術を開発する必要はないと考える。それよりも、アイデアのスループットを上げ、それらのアイデアを効率よくビジネスにつなげていくビジネスフローを確立することが重要だ。

アイデアのスループットを上げるためには、どのようなマネジメントイノベーションが必要か。

 昔は、米IBMのような大企業や、政府や軍といった大きな組織がイノベーションを生んできた。しかし、経済状況の変化により、今はこのような大組織からではなく、一般的な企業の一般社員からイノベーションのためのアイデアが創出されるようになってきている。組織における下位レイヤーで働く人々にも、高度な知識が求められる時代だからだ。だから、従来のような中央管理型のビジネスフローでは、イノベーションは生まれない。