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コマーシャルにより新しいモチベーションが生まれる

コマーシャルとオープンソースの協力についてお話されましたが,両者のバランスを取るために苦労されたことはありますか。

 それはプロジェクトによって違います。困難がないわけではありませんが,どんなプロジェクトにもそれぞれの問題はあります。例えば私はコマーシャルな営利企業といっしょに仕事をしたいとずっと考えていましたが,そうではなく,純粋に非商業的に技術を追求したいと考える人たちもいます。

 ただそういったプロジェクトの人々は技術が好きで,彼ら自身の楽しみのためにソフトウエアを開発します。そのため,その成果は時に,必ずしもすごく使いやすいとは言えない傾向があります。Linuxを含め,多くのオープンソース・プロジェクトが最初はそうでした。

 そのうち,オープンソース・プロジェクトを商業的に販売しようとする人が出てきました。そうすると,新しいモチベーションが生まれてきました。商品として販売するために,見た目を美しく,使いやすく,簡単にインストールできるようにしようとします。またマーケティングのための(広告宣伝などの)努力を行います。法律問題にも対処しようとします。

 コマーシャル側の人々は,オープンソースを単なる技術にとどまらないものにしようとするんです。これが,私が,コマーシャルとオープンソースが対立するものではないと考える理由です。

リーナス・トーバルズ氏
(写真:加藤 康)

リナックス・ファウンデーション フェロー
Linus Torvalds(リーナス・トーバルズ)氏
1969年12月生まれの39歳。ヘルシンキ大学コンピュータサイエンス学部の大学院生だった1991年秋、UNIX互換OS「Linux(リナックス)」の開発を始める。ソースコードをインターネットで配布し、共同開発するボランティアチームを組織、1994年春にLinux V1.0を世に送った。米トランスメタに勤務しながらLinuxカーネルの開発や保守を手掛けてきたが、2003年から、Linuxの普及を目的とする NPO(非営利団体、現The Linux Foundation)に移籍して開発を続けている。