「柔軟なIT環境作りに必要な製品をすべて揃えているのは当社だけ」。米ヒューレット・パッカード(HP)で企業向け事業部門を率いるアン・リバモア執行副社長は明言する。ITサービス大手の米EDSを買収するなど事業拡大に余念がないリバモア氏は「現状に決して満足せず、常に自分たちを追い込む」と語る。(聞き手は谷島 宣之=日経コンピュータ、写真は菅野勝男)
企業向けのビジネスにおける戦略を改めて伺いたい。
私たちが参入している事業領域のすべてにおいてリーダーになる、というものです。非常に単純かつ基本的な戦略ですけれども、それを実行するのは大変難しい。私たちは日々、困難に立ち向かいながら取り組んでいます。
まず、私たちが提供している製品群のそれぞれを、市場でナンバーワンないしナンバーツーの地位に持っていかなければなりません。同時に、私たちの製品を利用されるお客様にビジネス面で益を得ていただくために、開発や運用をはじめとするITサービス事業を強化していきます。
11月から新事業年度に入るにあたり、“Converged Infrastructure”に取り組んでいくと発表した。これは何か。
お客様に貢献するために私たちが集中して取り組む事柄を一つの言葉に集約してみました。目指しているのは、お客様がITを利用するために用意されている環境を、もっと柔軟にすることです。お客様のビジネスが伸びるときであれば、IT環境は需要の伸びに即応する。厳しい経済状況が続くときには、ITの運用コストを素早く減らせる。これがお客様が望むIT環境です。
私たちがお客様のIT環境について調査したところ、ITにかけている費用の70%が現行のIT環境を動かし保守するためだけに使われていました。イノベーション(ITによる業務改革や新システムの構築)に使えるお金は30%しかありません。すべてのお客様がイノベーションにもっと投資し、ITによる業務改革を進めたい、とおっしゃっています。この要請に応えるアイデアがConverged Infrastructureです。
アイデアを実現するには、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器に至る製品群を緊密に統合しなければなりません。運用を自動化してコストを下げる管理ソフトも必要になります。
私たちは、かなり以前から重点テーマを決め、投資してきました。例えば、発熱を抑え消費電力を減らす技術、仮想化、運用自動化にそれぞれ投資し、成果を出しています。これらすべては統合されたIT環境を整備するための投資だったわけです。今やHPは、必要な製品群をすべて持つ唯一の存在になったと自負しています。さらに、ITサービス大手のEDSを買収したことで、私たちのサービス能力を大幅に向上できました。
柔軟なIT基盤を作る、とどのIT企業も言っている。HPが唯一の企業とはどういう意味か。
まず製品の品揃えです。サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、管理ソフトをすべて持っているのは、HPだけです。しかも、古い技術を使った製品ではなく、将来性がある標準技術に基づいたサーバー、ストレージ、ネットワーク機器を自社開発し、知的財産もすべて社内で保持しています。