PR

徹底したパートナー連携が “クラウド元年”のカギ

「ベンダーの論理を押し付けてはダメ。お客様の経営課題を頭に入れながら相談に乗れる会社にならないと」――。マイクロソフトの樋口社長は、かつてユーザー企業であるダイエーの経営再建に取り組んだ時代の経験を踏まえて、自社の姿勢をこう戒める。その樋口社長に、同社が“クラウド元年”と位置づける2010年の事業戦略をじっくり語ってもらった。企業向けソリューション事業もクラウド事業も、パートナーとの連携強化が最大のカギになるという。(聞き手は 吉田 琢也=ITpro編集長)

大手IT企業のトップとして、今年の景気動向や企業の経営環境をどう見ていますか。

 景気は回復の方向にありますが、まだまだ予断を許さない状況です。特にグローバル展開している製造業のお客様は、かなりの需要減に直面しており、本格的な回復には至っていません。

 希望としては(4月以降の)新しい会計年度からいい流れになってほしいのですが、現実的には、回復は早くても夏以降かなと予想しています。中国市場の力強さなどに支えられて、輸出や個人消費が少しずつ回復し、その後に設備投資も含めて力強さが出てくれば、と期待しています。

日本企業のIT投資動向、あるいは、IT化のマインドについてはどうでしょう。変化が見えてきましたか。

 日本企業では、経営トップが自らITを活用した改革に取り組むということが少なく、欧米企業に比べるとITガバナンスが有効に機能していない、という印象があります。このことは日本全体の競争力低下という問題にもつながっていると思います。

 しかし厳しい経済状況に直面したことで、長期的な視点で体質改善を図ったり、IT化の問題に目を向けたりする企業が少しずつ増えてきました。世代交代によって、ITに対する知識や理解のあるトップが増えてきたことも一因です。最近ではCIO(最高情報責任者)出身の方が社長になるケースさえありますから。

 「本当に変わらなければまずいぞ」という意識を早くから持っていた企業は、ITに関しても“レガシー”なものから脱却して、軽く効率のよいものへと改善してきています。そういった、IT化のレベルや成熟度が高い企業は、総じて利益率も高い傾向にあります。利益率が高いからITに投資できる、と言えるかもしれないが、ともかくそういう好循環が生まれているわけです。

 一方で、IT化の遅れがビジネスの問題に直結している企業もあります。かつて私がダイエーの経営再建に着手した当時(編集部注:2005年5月に日本ヒューレット・パッカード代表取締役社長を退任し、ダイエーの代表取締役社長に就任)、IT投資を凍結していたために、ポイントカードが店をまたがって使えないとか、電子マネーがPOS(販売時点情報管理)につながらないとか、全く話にならない状態でした。そうしたビジネスの遅れを取り戻すには、本当に時間がかかると痛感したものです。

 これからの日本企業には、たとえ経営環境が厳しくてもIT投資を戦略的に考えることに加え、ITガバナンスによって「全体最適化」を図ることがぜひとも必要です。部門など組織ごとにバラバラに進めてきたIT化を、保守や運用も含めて、いかにすっきりさせるか。これは日本企業が今後も継続的に取り組むべき大きな課題だと考えます。

そうした状況認識を踏まえた、2010年の事業戦略を聞かせてください。柱は何でしょうか。

 大きく三つの柱があります。Windows 7を中核とするボリュームゾーン・ビジネスの拡大、パートナーとの連携を軸とする企業向けソリューション・ビジネスの強化、そしてクラウド・ビジネスの本格展開です。

 クラウドについては、昨年あたりからお客様の関心の高さをひしひしと感じており、当社は2010年を「クラウド元年」と位置づけて取り組んでいきます。当初はブームで終わるかも、と思っていたのですが、全くそうではなかった。底堅いですね。現在では、クラウドというキーワードに対して、お客様が確実に反応するようになりました。

 事業戦略としては、まずExchange ServerやOffice SharePoint Serverといったサーバー・ソフトの主要機能をオンライン・サービスとして提供する「BPOS(Business Productivity Online Suite)」の拡販を進めます。

 BPOSは大企業と中堅・中小企業の双方から大きな引き合いがあります。標準機能を提供するサービスと、お客様ごとにカスタマイズするサービスの2種類がありますが、お客様の関心はどちらも高い。

 拡販の方法ですが、まず中堅・中小のお客様に関しては、中堅・中小向けビジネスに精通した販売パートナーをきっちりリクルーティングして、組織化していくことが大事だと考えています。これに対して大手のお客様には、当社の営業が直接やり取りしながら成功事例を作っていきたい。

 一方、クラウドのプラットフォーム・サービス(PaaS:Platform as a Service)であるWindows Azureについては、現在、研究熱心なお客様と一緒に進めている実証実験を通じて課題を一つひとつクリアし、本格展開につなげていく、というのが今年のプランです。