PR

[後編]日本は米国の10年先を行く 自信を持って技術革新を

「セカイカメラマシン」開発に着手

「ネットサービスはハードウエアになる」とのことだが、セカイカメラもハードウエアにするのか。

 当然やります。もうプロトタイプの開発を始めています。セカイカメラは基本的にプラットフォームとして作っていますから、その先にハードウエアを仕掛けるのは当然で、やらない手は絶対にないですよね。むしろ、やらなければ負けてしまう。

 セカイカメラのようなARは、クラウドにすごく向いています。目で見たままの世界が、そのままWebへの入り口になる。例えば人にかざしたらFacebookにつながるとか。人や自動車、企業や学校などがあれば、そこがクラウドの入り口になり得るんです。こうしたARのアプリケーションを普及させるには、クラウドと一体になっているデバイスが非常に有効です。

プロトタイプはどのようなものか。

 出るまでのお楽しみです。いつごろ出るかもわからないですね。こればっかりは自分たちですべてコントロールできないから。

ヒントだけでも。

井口 尊仁(いぐち たかひと)氏
写真:中島 正之

 そうですね…、それっぽいものだけ、お見せしましょう(おもむろに、手のひら大の透明な板を取り出す)。

 これはあくまで開発コンセプトだと思ってください。今のセカイカメラはiPhoneに付いているカメラで映像を撮影して、液晶ディスプレイに投影している。しかし透過型のLEDディスプレイ全体に映像を投影できれば、利用者はそれを通して物を見るだけでいい。あとはタッチセンサーをつけて、エアタグ(セカイカメラを通してだけ見える、仮想的な情報)を操作できるようにすればいい。メガネの一歩手前ですね。透明のディスプレイを使えれば省エネにもなる。バックライトもカメラもいりませんから。

 透明なディスプレイに映像を出すことができるようになれば、物を見る感覚が変わりますよ。カメラで映像を撮って映している今のiPhoneに比べてずっと自然です。現実の空間にエアタグがあるように感じられる。生活にもっと密着して、当たり前に使われるようになると思います。こういう世界が、もう目前に来ています。

日本企業には強みがないのだろうか。

 めちゃくちゃあると思いますよ。非常にきめ細やかで、サービス精神に満ちている。先進性もあるし、イノベーションを好む。日本の製造業ってすごく可能性があると思います。

 日本のモバイル技術や産業はとても進んでいるし、米国ではクールだと思われています。日本人は自身を卑下しがちだが、今、米国で始まっていることは10年前の日本で起きたことです。日本の企業は、その発想や技術をアプリケーションからどんどんハードに波及させて、技術革新を図ったらいいんですよ。日本のネットやクラウドの産業規模は米国より2ケタ少ないですが、全然問題ない。いけますよ。それだけのポテンシャルを持っている。

 ただ、現在の技術革新をすべて自前開発で担うのは無理。特にサービスの分野はオープンな方針でやるべきです。IT業界の「エコシステム」はどんどん変わっています。

 優位な時間はそんなに長く続きません。米国はモバイルに目覚めていますから。今、世界の企業はフルパワーで真剣勝負している。急がないと、世界の土俵に上がれなくなってしまいます。

頓智・(トンチドット) CEO
井口 尊仁(いぐち たかひと)氏
国内ベンチャー企業を経て2008年に頓智・を創業し「セカイカメラ」開発に着手。同年9月にTechCrunch50ファイナリストに選出され全世界で話題に。2009年12月には世界77カ国でセカイカメラをリリース。同時にITのアカデミー賞と称される「Crunchies 2009 Award」にアジアから唯一選出される。

(聞き手は、玉置亮太=日経コンピュータ)