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 米Adobe Systemsは2010年6月にモバイル向けのFlash Player新バージョン10.1の提供を開始した。同製品と、Flash Playerのマルチプラットフォーム戦略について、Adobe Systemsベルギー法人でPlatform Evangelistを務めるSerge Jespers氏に聞いた。

(聞き手は中條 将典=日経ソフトウエア



Adobe Systemsベルギー法人のSerge Jespers氏
Adobe Systemsベルギー法人のSerge Jespers氏

モバイル向けFlash Player 10.1の最大の売りは何でしょうか。

 まず挙げられるのが、パフォーマンスが向上したことです。「Automatic Memory Reduction」機能によって、Flashアプリケーションの実行時に必要なメモリー容量が半分から3分の1になります。これはエンドユーザーにとって、とても大きなメリットです。

 次に、マルチタッチをサポートするようになったことがあります。ハードウエアの仕様によるのですが、あるモニタースクリーンで試したところ、50カ所に触れていることを識別できました。

Flash Playerのマルチスクリーン、マルチプラットフォーム戦略の現状について教えてください。

 現在Android 2.2搭載端末向けに提供しているFlash Player 10.1では、パソコン向けのコンテンツをそのまま閲覧できます。すなわち、あるデバイス向けに開発したコンテンツを別のデバイスに流用できるのです。これは開発者にとって大きなメリットになります。2010年末には米Motorolaや台湾のHTCなどのプラットフォームでもFlash Player 10.1が動作するようになるでしょう。

 Flash Playerをすべてのプラットフォームで動作させることを目指すOpen Screen Projectには、MotorolaやHTCなど主要なモバイル・ハードウエア・メーカー20社のうち、19社が参加しています。参加していない1社は米Appleなのですが、Appleにも参加してほしいと考えています。

AppleはiPhone/iPadにFlash Playerを搭載しないことを発表しています。Flash Playerのマルチプラットフォーム戦略への影響をどう考えますか。

 確かに今、iPhone/iPadのシェアは大きいようですが、それは最初に登場したデバイスだからです。Androidをはじめとする魅力的なタブレット端末が数多く市場に投入されるようになり消費者の選択肢が広がったら、iPhone/iPadにFlash Playerが搭載されていないことは大きな問題にはならないかもしれません。

 技術的には、我々は既にApple向けのソリューションを提供しています。Flash作成ツールの最新版「Flash Professional CS5」は、作成したコンテンツをiPhone/iPad向けにエクスポートする機能を備えています。しかし、AppleがiPhone/iPadアプリケーション開発・配布に関するライセンスを変更したため、その機能は使えなくなってしまいました。

次期Web標準とされるHTML5を利用すれば、Flash Playerなどのプラグインは必要なくなるのでしょうか。

 HTML5に関して私は危惧していることがあります。インターネットの黎明(れいめい)期に、音声や映像などを提供しようとすると、Windows Media PlayerやReal Playerなど複数のメディア向けにそれぞれデータを用意する必要がありました。Flashが普及してそうした面倒がなくなったのですが、HTML5によって再び同じことが起こる可能性があります。

 HTML5の最大の問題点はWebブラウザ間の互換性です。HTML5で書かれたコンテンツのうち、Safariでは正しく動くが、Internet Explorer(IE)では正しく動かないものが出てくるのではないでしょうか。それぞれのWebブラウザのバージョンが上がれば改善されるでしょうが、ユーザーはそんなに頻繁にWebブラウザのバージョンを上げるわけではありません。今でもIE6を使っている人も少なくありません。Flash Playerは、最新版の提供を開始すると、9カ月ほどでほとんどのユーザーに行き渡ります。

 技術的にみると、HTML5には今のところDRM(デジタル著作権管理)やマルチタッチに関する仕様が無いようです。FlashとHTML5は対立するのではなく、共存し、連携することによってユーザーにメリットがあると考えます。

AdobeはFlashコンテンツ作成ツールとしてFlash Professional CS5を提供していますが、もっと安価なFlashコンテンツ作成ツールを提供することは考えていないのでしょうか。

 学生や教職員向けに安価なAcademic版を提供しています。また、オープンソース・プロジェクトとして開発が進められているFlexフレームワークを使えば、基本的にはどんなFlashアプリケーションでも作成できます。もちろんFlexを使う場合でも、有償のGUIツールであるFlash Builderを使えば、より効率的にアプリケーションを開発できるのですが。

Flash Playerの64ビット版の提供はいつごろになるでしょうか。

 64ビット版については、遅れていますが、それは当社に限ったことではありません。どのソフトウエアベンダーも同じです。もちろん今後のバージョンでサポートしますが、現時点でいつだということはできません。