米APCがデータセンターのエネルギー効率を高める製品を拡充している。9月1日に受注を開始した「InRow OA」は天井近くに設置してサーバーの排気を冷やすという、他社製品にはない特徴を持つ冷却装置だ。この製品を日本市場に投入するAPCの狙いを、製品戦略の責任者であるジョン・ニーマン氏に聞いた。
冷却装置をデータセンターの天井に設置するメリットは何か。
InRow OAは、2列に並ぶサーバーラックの背面同士を向かい合わせた空間、つまりホットアイルにたまった熱気を冷やすための冷却装置。InRow OAの「OA」は「Over Aisle」の略だ。
ちょうど、ラックが並ぶ間の空間にフタをするような形で設置し、サーバーが排出した熱気を閉じ込める。熱気を吸い上げて冷やしてから、サーバーが吸気するラックの前面に送り出す。
ラックの上の空間に設置するため、従来の冷却装置のように場所を取らない。サーバーを設置するスペースが限られるデータセンターでは、大きなメリットになるはずだ。
データセンターによっては、サーバーに冷気を送るコールドアイルを密閉するケースもある。APCがホットアイルを密閉する方式を採用しているのはなぜか。
当社の技術検証では、同じ電力を使った場合はホットアイルの熱気を閉じ込める方式のほうが、サーバー冷却の効率が10%ほど高いことが分かっている。このため、当社はホットアイルのコントロールに注目している。
データセンター専用冷却装置の世界市場は、どのような状況なのか。
製品のニーズは高まっている。データセンターを新築、増床する事業者や企業が増えているからだ。
企業のデータセンターには絶えず変化が起きている。システム刷新やサーバーの追加導入などがそうだ。その際にサーバー室内の温度管理やエネルギー効率を見直すことが、専用冷却装置を導入するきっかけになっている。
外気を取り入れることで、冷却に必要な電力を減らすデータセンターが増えている。そういった動きにはどう対応していく方針なのか。
外気を取り入れることを、我々は「エアーサイドエコノマイザー」と呼んでいる。当社でも研究を進めている。特に気温が低い地域では有効だろう。
ただ外気を利用する場合でも、冷却装置は必要だ。また外気を有効利用できるのは、データセンター専用に作られた大型のビルだろう。オフィスビルの中にあるデータセンターでは、従来型の冷却装置が必要になる。