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 Web APIを外部に公開し、利用を促す「オープンなWebを推進する企業」のキーマンにインタビューする本連載の第2回目は、グループウエアを中心にビジネスを展開するサイボウズ。同社が提供する無償サービス「サイボウズLive」とそのWeb API公開について、狙いと目標を同社ネットサービス事業本部 副本部長の丹野瑞紀氏に伺った。

 サイボウズLiveは、カレンダー、タスク管理、ファイル共有といったグループウエアに必要な機能をWeb上で無償提供するサービス。2009年11月に提供を開始した。1グループ当たり最大20人という制限はあるものの、イントラネットで使用する従来のグループウエア製品とほぼ遜色ない機能を備える。複数の企業や組織にまたがるワークグループなどで使われているという。

 2010年9月16日にWeb APIを公開し、サイボウズLiveに格納した最新情報、スケジュール情報を、外部アプリケーションから取得することを可能にした。サイボウズLiveのスケジュール情報に基づいて、スマートフォン、モバイルなどにアラートを送るなど、他のプラットフォームと連携させた新たなサービスの広がりが期待される。

(聞き手は佐藤有美=フリーライター)
今回のオープンWeb推進企業
写真1●サイボウズLiveの画面サンプル
写真1●サイボウズLiveの画面サンプル
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●企業名:サイボウズ
●Web APIを公開しているサイト:サイボウズLive(注:現在は招待制サービス。2010年10月下旬以降、自由登録制に移行予定)
●Web APIで提供している情報:サイボウズLiveの新着情報/スケジュール/グループ情報
●Web APIの提供形態:通信方式はREST、認証方式はOAuth
●Web APIの公開開始時期:2010年9月16日

グループウエア機能をWebで無償公開した狙いについて聞かせてください。既存製品の売り上げには影響していないのでしょうか。

写真2●サイボウズ ネットサービス事業本部 副本部長の丹野瑞紀氏
写真2●サイボウズ ネットサービス事業本部 副本部長の丹野瑞紀氏
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丹野:サイボウズLiveは、インターネット上で使える無料のグループウエアとして2009年11月に提供を開始しました。有償で販売しているグループウエア製品の機能を無料で開放するわけですから、もちろん不安やリスクを感じていました。しかし、提供から1年近く経った今、弊社の既存製品と競合したり、食い合ったりすることはないという感触を得ました。事実、既存のグループウエア製品の売り上げは落ちていません。

 むしろ、サイボウズLiveの提供により、これまでグループウエアを使っていなかったユーザー層にアプローチすることが可能になり、グループウエアの利用シーンを確実に広げられたという実感があります。

 イントラ内で使われる既存のグループウエアとサイボウズLiveでは、明らかに用途が違います。サイボウズLiveは、Webサイト制作などの比較的短期間のプロジェクトで、「クライアント、制作会社、外部のデザイナー」のような、企業間にまたがるワークグループで使われることが多いようです。大学の同窓会、町内会やマンションの理事会などの地域コミュニティで使いたいという声もいただいています。

 弊社のターゲットはこれまで、社内の情報システム部がメインでした。これからはサイボウズLiveをテコに、プロジェクトを実際に進める現場の方や、BtoCの領域にもターゲットとなる層を広げて行きたいと考えています。

 企業内のコミュニケーションは、イントラのグループウエアで便利になりましたが、その場をいったん離れると、メールや電話など、20世紀から続いているような手段が中心です。また、mixiやGREE、Twitterなど、コンシューマー向けのSNSが流行っていますが、ビジネスなどのオフィシャルな用途で安心して使えるコミュニケーションツールはあまりありません。

 サイボウズLiveでは、安心してコラボレーションできるツールを提供することで、ビジネス上のコミュニケーションの在り方を変えたいと考えています。サイボウズの次の成長の柱の一つとしての位置づけです。

サイボウズLiveをどのようにマネタイズされる予定ですか?

丹野:一つとして、有料オプションの導入を検討しています。現在、20人まで利用できるのですが、それを超える場合の課金や、より高度な機能をアドオン的に有料で提供することを考えています。有料でいいから早く欲しいという声も既にあります。

 弊社の売り上げは現在、年間約40億円です。遅くとも3年以内には100億円レベルに押し上げたいと思っています。コンシューマー向けSNSの提供企業が100億円台の売上に達していますので、ビジネス向けのインターネットサービス領域でも不可能な目標ではないと思っています。

 また現在、弊社のグループウエアの累計出荷が300万アカウントにのぼりますが、これは一つの通過点に過ぎません。最終的には、1000万人、2000万人のユーザーに使っていただきたいです。

最近になってサイボウズLiveのAPIを公開されましたが、その狙いは何ですか?

写真3●サイボウズのキャラクター「ボウズマン」(右)と丹野氏(左)
写真3●サイボウズのキャラクター「ボウズマン」(右)と丹野氏(左)
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丹野:Web APIを公開しないWebサービスは、もうあり得ないと思います。API公開については、コモンセンス、当たり前といった感覚です。

 昨年、サイボウズLiveをリリースした段階から既にWeb APIを公開することを想定していました。実際、発表イベントでも明言しています。Twitterの例もありますが、サードパーティにアプリケーションを作ってもらった方が人気の出るサービスになるだろうと考えたからです。

 ユーザーの要求やデバイスが多様化していく中、弊社だけですべての要求を満たすことは難しくなっています。要求はロングテールです。多くの方が要求する機能がある一方で、少数の方が要求する細分化された機能があります。弊社はロングテールのヘッドの部分のユーザーの要求を満たす機能を提供します。テールの部分の要求に関しては、APIを公開することで、ユーザー各自やサードパーティに実現していただきたい。こうすることで、サイボウズLiveをより便利にしていきたいと考えています。

 サイボウズLiveのAPIは、2010年9月16日に公開したばかりですが、想定していたよりも早いペースで、公開後1週間で約100名の方にディベロッパーとして登録していただきました。一般の方にAPIを公開するのは初めてなので、どういう反応が返ってくるか想像できなかったのですが、公開初日に「使ってみた」というレポートをブログ上に上げていただくなど、高い関心を持たれているという実感を持っています。滑り出しは順調だと思います。

 マッシュアップ開発コンテスト「Mashup Awards 6(MA6)」に、リーディングパートナー企業として参加を決めたのは、弊社が初めて一般向けに公開するWeb APIを、広く開発者の方に知っていただきたいというのが大きな理由です。弊社は、ソフト開発メーカーとして、ビジネス領域で「便利さ」を求める方向で開発を続けてきましたが、「面白い」発想は、MAのようなコンテスト形式の方が出てきやすいと思います。「便利さ」の観点とは少し違う、私たちが予想もしない、コラボレーションが楽しくなるような発想のアプリケーションを期待しています。


インタビュアーより
有料で販売しているソフトウエア製品の機能を、無料のサービスとして公開するというチャレンジングな試みで、ターゲット層の拡大、事業の新たな柱の育成を図るサイボウズ。クローズされたままニッチな要件を自ら追い続けるより、オープン化してサードパーティを活用することでサービスの幅を広げる道を選択した。フリーのWebサービスをチャレンジの場として活用し、既存製品もブラッシュアップされるという循環も生まれつつある今後に注目したい。