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 オンライン決済サービスを提供する米PayPalは、2009年11月に、ディベロッパーネットワーク「PayPal X」をオープンし、決済プラットフォームのWeb APIを公開した。サードパーティによるビジネス展開をサポートし、オンライン上のマネーフローを加速させるのが狙いだ。

 公開から1年に満たないうちに、API経由の取引額が4000万ドルに達するなど、順調な滑り出しを見せている。日本法人ペイパルジャパンのシニア インテグレーション マネージャーの植野 稔之氏に、PayPalのWeb APIオープン化について聞いた。

(聞き手は佐藤有美=フリーライター)
今回のオープンWeb推進企業
写真1●PayPal XのWebサイト
写真1●PayPal XのWebサイト
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●企業名:ペイパルジャパン
●Web APIを公開しているサイト:PayPal X
●Web APIで提供している機能:
One-time Payments(1回限りの決済)、Recurring Payments(定期決済)、Refeewnce Transactions(受け取り側がキックできる決済)、Adaptive Payments(様々なお金の流れを制御)、Adaptive Accounts(PayPalアカウントをAPIで生成)など
●Web APIの提供形態:決済情報の伝達にAPIを使用(サーバー間通信)。データ形式は、Name-Value Pair (xxx=yyy&aaa=bbb)、SOAP/XML、JSON(一部APIのみサポート)。API認証方式は、署名あるいは証明書。
●Web APIの公開 開始時期:2009年11月

【企業データ】
PayPalは、米国のオンライン決済サービス提供企業。1998年12月にカリフォルニア州シリコンバレーで設立。2002年にインターネットオークション「eBay」グループに加入した。2010年現在、全世界で、8700万以上のアクティブ・アカウント、総計約2億2400万のアカウント数を有する。世界の24の通貨(日本では21通貨)、および、190の国と地域に対応し、約800万のECサイトで利用できる。2009年度の総取扱額は前年度比19%増の7.8兆円。その額は、全世界のEC市場の約15%相当を占める。

日本法人のペイパルジャパンは2008年6月に設立され、2010年4月に本格的な営業活動を開始した。2010年現在の日本国内でのアカウント数は100万以上、2010年上期の日本における総取扱額は45%増という。そのうち、日本と海外との取引に当たるクロスボーダー取引の割合は、総取扱額の70%を占める。

年間7.8兆円に及ぶお金がPayPal上で動いていますが、PayPalのビジネスモデルと安全性について聞かせてください。

写真2●ペイパルジャパン シニア インテグレーション マネージャーの植野 稔之氏
写真2●ペイパルジャパン シニア インテグレーション マネージャーの植野 稔之氏
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植野:PayPalはオンライン決済において、売り手と買い手の双方に向けたサービスを展開しています。買い手は、事前にクレジットカードをPayPalに登録しておくことで、売り手にクレジットカード情報を知られることなく買い物ができます。一方、売り手はPayPalを利用することで、オンライン決済を簡単に導入できます。売り手はクレジットカード情報を取り扱う必要がないので、管理コストも減らせます。

 PayPalの利用に際しては、アカウント開設料や月額利用料などを支払う必要はありません。決済において売り手がPayPalのアカウントに入金を受けた際に、取引金額に応じた料率の手数料が発生します。買い手に手数料は発生しません。

 PayPalは、クレジットカード会社が行うような加盟の審査をしていません。誰でも自由に登録できます。そのため、違法商材の取引、マネーロンダリング、成りすましなどが行われないように通常の決済業者以上に注意を払っています。

 例えば、全世界で3000人規模の不正取引監視チームを組織し、24時間すべての取引を監視しています。ロジック化した過去の不正取引のパターンに照らして、少しでも不審な取引や資金の動きの兆候が見られたら、まずアカウントを凍結し、ユーザーにヒアリングして確認を行うなどのプロセスを実施しています。

 さらに、「問題解決センター」を設置して、トラブルが発生した場合にPayPalが仲立ちして問題解決を図る体制を用意しています。当事者同士に任せるのではなく、PayPalが間に入ることで、売り手と買い手の双方が安心してオンライン決済を行われるよう万全を期してサポートしています。

Web API公開によって得られた実績を教えてください。

植野:2009年11月に、ディベロッパーネットワーク「PayPal X」を米国からワールドワイドに向けて展開し、Web APIを公開しています。その後6カ月で、3万人以上のデベロッパーがPayPal Xに登録し、数百に及ぶアプリケーションが作られました。

 ECは動きの速い市場です。市場のデマンドやデバイスがどんどん変化していく中で、内部のリソースや知恵だけでサービスを提供するのには限界があります。APIを公開することで、例えば、「業務を簡略化するアプリケーションをサードパーティが作成」したり、「他のECサイトに登録されている個人情報に基づいてPayPalアカウントを開設」したりできるようになりました。

 APIの公開から現在までに、PayPalプラットフォームを経由して、4000万ドルを超えるトランザクション(資金の移動)が行われました。ビジネスとして評価できる成果です。今後は、外向きのオープン化はもちろん、PayPal社内開発のプロダクトでもこのプラットフォームを活用していく方針です。

 このようなプラットフォームをオープン化する流れはもう止まらないと考えています。PayPalがオープン化の波に逆らったり、その波に乗らなかったりすることは決してありません。

API公開における課題、および、今後のビジョンについて聞かせてください。

植野:PayPalでは、オンライン決済の様々な機能のAPIをラインナップして、サードパーティが利用できるようにしています。しかし、決済方法には様々な種類があり、なかなかイメージが湧きづらい点もあると思います。今後は、デベロッパーとコミュニケーションをとるなどして、これらのAPIがどう活用できるのかをわかりやすく伝えていくことが課題です。

 PayPalは2010年4月に、日本での営業活動を本格化させました。国内のデベロッパーに向けて、PayPal Xを紹介し、使ってもらう施策の一つとして、マッシュアップ開発コンテスト「Mashup Awards 6(MA6)」に、API提供企業として参加しています。現在は、ECサイトで利用されている例がほとんどなので、複数のAPIがマッシュアップされた新しいサービスがサードパーティから出て来るとうれしいです。

 PayPal自体が他社のAPIを使って新サービスをリリースすることは難しいのですが、企業の枠を超えたサービスの展開は、オープン化が広がってこそ実現できることだと思います。この機会に、PayPal Xの利用がECサイト以外にも広がっていくことを期待します。

 オンライン決済やクロスボーダー取引は、今後さらに一般化していくでしょう。EC事業者や法人だけではなく、デベロッパーや個人が自分のアイデアやビジネスモデルをマネタイズできるようサポートする。それが、PayPalのミッションです。


インタビュアーより
オンライン決済に関する様々な機能のWeb APIを公開し、社内、社外での最大限の活用を図る、PayPal。オープン化によって、デベロッパー自身によるマネタイズが容易になり、新しいビジネスモデルの誕生が予見される。PayPalのAPIによる商習慣の広がりを期待したい。