ネット広告代理店大手のオプトは、ユーザーのネット上の行動履歴を複数の事業者で共同利用する日本初の「オープンデータプラットフォーム構想」の発表、他社技術を活用したTwitter分析システムの提供など、他企業との提携をベースにした新施策を相次いで打ち出している。同社社長の鉢嶺氏に、その狙いと今後の展開を聞いた。
新施策を矢継ぎ早に打ち出しているが、ネット広告代理業大手としてどのような狙いがあるのか。
ネット広告の市場は、2けたペースで伸びている。ただ、これだけでは面白みがない。本業だけで考えると、広告代理事業は手数料ビジネスなので、売り上げのロットをどれだけ大きくできるかが問題になる。広告分野では電通が約1兆4000億円の売り上げで大きな収益基盤を持っているが、広告代理など仲介事業は一般的に2000億円を下回ると収益基盤が怪しくなる。ネット広告代理事業だけでいくなら、最低でも3000億~5000億円規模にするめどがないと不安定になる。最低ラインを上回ることを目指しながら、それ以外のビジネスにチャレンジして、新たな収益の柱を作らないといけない。
新たな収益の柱とは。
ネット広告代理事業の周りで、市場が広がると考えているのが、「データプラットフォーム」「マスメディアのデジタル化支援」「ネットメディア・コンテンツ」「EC(電子商取引)支援」の4領域だ。
中でも、(ユーザーの行動履歴などを共同利用してより広範なターゲティング広告の配信を可能にする)データプラットフォームのビジネスは、米国で非常に大きくなっている。米国のバナー広告の市場は、2010年が8000億円、4年後には1兆6000億円となる見通し。そのうちの行動ターゲティング広告の市場は、2010年の1000億円が、4年後に8000億円となり、全体の約半分を占めるとみられている。このマーケットを取りに行くのが、データプラットフォームの構想だ。(オプトの広告効果測定サービス)「ADPLAN」は1000社以上が導入済みであり、これによってアドバンテージを持てる。(より多くの行動履歴データを取り込むために)ほかのアドネットワークなどにも参加を募っていく。
もう1つの領域のネットメディア・コンテンツは、現状でいえばソーシャルメディア、ソーシャルアプリの領域になる。米国でも、ソーシャルメディアの広告市場は700億円とまだ小さいが、4年くらいで3000億円程度まで伸びるとみられている。中身を見ると、従来型の代理手数料よりも、総合キャンペーンの手数料、コンサルティング料などの比率が圧倒的に伸びる。その意味で、従来の広告代理店的なビジネスモデルに固執すると後れを取りかねないため、新しいところへチャレンジしている。
3つ目のマスメディアのデジタル化の支援、4つ目のEC支援も外せない領域だ。例えば、ECは日本で6兆円の市場があり、これが20年先には60兆円になるというデータもある。こうした4つが大きな市場。積極的にチャレンジしようとしている。
データプラットフォーム構築に特に力を入れているように見えるが。
今、(ネット上で)一番もうかっているプレーヤーは、プラットフォーマーと言われるところだ。そのレイヤーには、ECであれば楽天やアマゾンジャパン、検索エンジンではヤフー、グーグルなどがいる。データプラットフォームは、広告主に(ユーザーの行動履歴)情報を提供できるメディアにもなるし、そのデータベースで我々自体も(ターゲティング広告配信の)プラットフォーマーとしてビジネスを展開できる可能性がある。
現在、システムの開発をやっていて、さらに(アドネットワークなどの)提携先の開拓を進めている。既に3000万ユニークユーザー(UU)の規模で、テスト広告の配信が始まりつつある。ある程度成果が見えると、いろいろシミュレーションもできるので、後は提携先を増やせるかが重要になる。