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 ICチップ累計出荷4億6700万個と、広く普及しているインフラである非接触ICカード技術「FeliCa」。ソニーは、「FeliCa」を利用するAdobe AIR / FlashアプリケーションのSDK(ソフトウエア開発キット)である「SDK for FeliCa & Adobe AIR / Adobe Flash」を、2009年9月に一般公開した。

 2010年10月現在までのSDKのダウンロード数は、有償版/無償版を合わせて約5000に達する。従来、特定の企業にのみ提供していたSDKを一般公開することで、サードパーティによるFeliCaアプリケーションの開発を可能にした。

 FeliCaのようなインフラ事業には、様々なステークホルダーが複雑に絡み合う。ソニーのFeliCa事業部は、SDK公開にとどまらず、取引先との交渉、社内調整、デベロッパーへの草の根の普及活動など、多方面の活動に取り組んでいる。ソニーFeliCa事業部がSDKを公開した狙いや課題、今後の展望について聞いた。

(聞き手は佐藤有美=フリーライター)
今回のオープンWeb推進企業
●企業名:ソニー FeliCa事業部
●SDKを公開しているサイト:SDK for AIRブログ
●提供している機能:SDK for FeliCa & Adobe AIR / Adobe Flash Standard版(有償)、同 Basic版(非商用/無償)、同 Mac版FeliCa Proxy β版
●SDKの公開 開始時期:Windows版が2009年9月、Mac版(β)が2010年10月

FeliCaのSDK公開に踏み切った意図を教えてください。

写真1●プロダクト&サービス部 プロダクトマーケティング課の鳥居 三朗氏
写真1●プロダクト&サービス部 プロダクトマーケティング課の鳥居 三朗氏
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鳥居:「FeliCa」は主に、プリペイド型のEdy、携帯端末のおサイフケータイといった電子マネーや、Suicaなどの交通乗車券に挙げられるインフラに利用されています。以前当社はFeliCa向けアプリケーションのSDK(ソフトウエア開発キット)を、端末メーカーや大手SIerといった特定の企業にだけ提供していました。

 私たちには、FeliCaの新しいサービスをどんどん提供したいという思いがあります。FeliCaのアプリケーションの拡充を図るためには、様々なアイデアを持つクリエイターの方々にもSDKに触れてもらう必要があると考え、2009年9月に「SDK for FeliCa & Adobe AIR/Adobe Flash」の一般向け提供を開始しました。

 AdobeのAIRやFlashは、クリエイターになじみのある開発環境です。そこにFeliCaを組み合わせたら面白い展開ができると考えています。2010年10月には、Macユーザーのクリエイターの要望にこたえるため、SDKのMac版「Mac FeliCa Proxy β版」を公開しました。

写真2●サービスビジネス課 ビジネスプランニングマネージャーの相馬 功氏
写真2●サービスビジネス課 ビジネスプランニングマネージャーの相馬 功氏
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相馬:現在、ソニーのVAIOをはじめ、国内各社のPCが、非接触ICカードのリーダー/ライターである「FeliCaポート」を内蔵しています。電子マネーでインターネット決済をする際に使うのですが、それだけでは日常的に利用するまでには至りません。SDKを公開してアプリケーションを充実させることで、FeliCaポートの利用率が上がることも期待しています。

鳥居:SDKを普及させるための啓蒙活動にも積極的に取り組んでいます。ブログやTwitter、Ustreamなどを通してFeliCaを知ってもらうことから始まり、昨年(2009年)は、FeliCaとAdobe AIR / Flashを使ったアプリケーション開発コンテストを開催し、一般のデベロッパーから楽しいアプリケーションを募集しました。今年は、マッシュアップ開発コンテスト「MA6」にリーディングパートナーとして参加し、SDKを使ってもらうことで、デベロッパーへの認知度向上に努めています。

SDKの公開に当たって社内で反対はありませんでしたか?

相馬:特定企業向けの“お堅い”ビジネスからの方針転換です。当初はSDKを無償で提供することに対し、社内で議論がありました。今は、既存事業とバランスをとりながら、一般のデベロッパー、クリエイターに向けた新しいフィールドに広げていくスタンスです。

鳥居:FeliCaは、たくさんのステークホルダー、私たちにとって重要なクライアント企業に利用してもらっているデバイスです。SDK公開によってクライアント企業が迷惑を被らないかどうかが社内で懸念されました。

 最も懸念されたのは、電子マネーに対する不正なアタックです。そこで、電子マネーの領域と一般に公開している領域は技術的に切り分けられているから問題ないなど、社内での懸念事項に関して技術面を担保した上でクリアしています。

写真3●プラットフォーム商品部 4課の竹村 航氏
写真3●プラットフォーム商品部 4課の竹村 航氏
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 2010年10月のMac版FeliCa Proxyのβ版公開に当たっては、「外の声」を資料化して社内を説得しました。特定企業向けのビジネスに特化していたころは、一般のデベロッパーやクリエイターと直接お話しする機会はありませんでした。Mac版のSDK公開は、FeliCaを広める活動の一環として、勉強会などでデベロッパーの方と直にコミュニケーションする中で挙がってきた要望に基づいています。

竹村:勉強会での要望がなかったら、おそらくMac版のSDKを公開する案は出ていなかったと思います。デベロッパーの声を直接聞いたからこそ実現できた企画です。

相馬:インターネットとの連携や家電への搭載を加速させる可能性のある今回の取り組みは、FeliCaがさらに成長する上で不可欠です。こうした大きな流れへの理解は、社内で得ています。