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 「日本で仕事をしているアーティストたちは本当に優秀。米Digital Domainで、すぐに活躍できるだけの素養を持っている」と、米デジタル・ドメインの三橋忠央氏は話す。三橋氏は映画『トロン:レガシー』(公開中)や『ベンジャミン・バトン』(09年)などで、ハリウッド映画のVFX(ビジュアル・エフェクト)制作に携わった経験から、もっと日本のアーティスト達が世界で活躍できる場があると主張する。三橋氏から見たクリエイターの将来像について探った。

(聞き手は、渡辺一正=nikkei BPnet編集部



米デジタル・ドメイン リード・テクニカル・ディレクターの三橋 忠央氏
米デジタル・ドメイン リード・テクニカル・ディレクターの三橋 忠央氏
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米Digital Domainに参加したのはいつからですか。

 Digital Domainに参加したのは2006年10月からです。さかのぼって説明しますと、直前は米DreamWorks Animation(サンフランシスコ)に2年間勤務しました。その前がワーナー・ブラザーズの子会社の米ESC Entertainmentで、そして一番最初が米Manex Visual Effectsでした。そこが社会人出発点です。

 その前は、サンフランシスコにある美大の大学院生でした。日本では理系だったのですが、その時点では就職先が明確にできませんでした。CG制作をやってみたいと思っていたのですが、96年当時、自分がイメージしたCG教育の場がないような気がしていました。それで、米国で勉強するしかないと思って、留学したのです。

CGをやりたいと思ったきっかけは何ですか?

 子供のころから映画好きでしたね。『スター・ウォーズ』、『インディ・ジョーンズ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、もちろん『トロン』などSF大作をよく見ていました。今回、米Digital Domainで『トロン:レガシー』のプロジェクトに参加することになったのですが、機会があって日本の自宅で荷物を整理していたときに、小学生のころに使っていた『トロン』の下敷きが出てきました。そのころの強いあこがれがあったのは事実ですね。

いくつかのスタジオを渡り歩いていますが、その経緯は?

 最初にあこがれの米Manexに入って1、2本の映画にかかわったのですが、ワーナー・ブラザーズが設立した米ESCに35人の映像チームごと引き抜かれました。設立と同時に移籍したESCでは、『マトリックス・リローテッド』、『同レボリューションズ』、『キャットウーマン』、『コンスタンティン』、コーエン兄弟の『レディキラーズ』までやりました。

 しかし、米ESCがクローズするということになり、米DreamWorks Animationに移りました。『シュレック』などのフルCG長編アニメを作っていましたが、「実写映画のエフェクトをやりたいんだ」ということに気づきました。

 そんなときに、米Manex時代からの上司で、『マトリックス』でジョン・ゲイターと一緒にスーパーバイザーをやっていたキム・リベリ(米Digital Domain副社長)から、ピッタリのプロジェクトがあるんだと電話がありました。彼の家に誘われ、バーベキューをしながら、どういうプロジェクトか聞いたんです。それが『ベンジャミン・バトン』でした。デイビット・フィンチャーが監督で、フォトリアルな人間を作らなければならない。マトリックスの時よりも、もっと難しいぞ、と。

 サンフランシスコに愛着があったので、米Digital Domainがあるロサンゼルスに移るのは、正直迷いました。キムから今後のキャリアについてもアドバイスをもらいました。それで、仕事に生きるべきかと思い、『ベンジャミン・バトン』をやるために、米Digital Domainへ移籍したわけです。