2010年10月、富士通ビジネスシステムが「富士通マーケティング」として再出発した。富士通グループの中堅企業向けビジネスの要となるべく、富士通からパートナー支援部隊などの移管を受け、直販とパートナービジネスの両方で存在感の発揮を狙う。ただ再編は完了していない。過渡期の同社を率いる古川章社長に舵取りを聞いた。
新しい社名に「マーケティング」を冠した意図は何ですか。
富士通の中堅向けビジネスを当社が中心になって推進する際に、一番の問題はやはりパートナー企業の反応です。この話が出てきた当時、私は富士通にいましたが、真っ先に思ったのはパートナー企業がどう思うかということでした。
私は「富士通ビジネスシステム」という社名のまま、パートナー向けビジネスをやるのは無理だという感触を持っていました。直販ビジネスだけの会社からパートナー企業と共に歩む会社に変わるというメッセージを、社名に込める必要があったのです。
新社名の案を出したのは2010年4月で、富士通社内でも議論がありました。ですが、お客様が何を欲しているのかを知り、それを基に製品やサービスを作り上げて、その価値を訴求するという一連の活動こそが、「マーケティング」だろうということで、最後は富士通の経営陣にも支持してもらいました。
そう言えば2010年10月のITpro EXPOにおいて、当社のSaaS商品の「GLOVIA smart 会計 きらら」が、「ITpro EXPO AWARD 2010」の優秀賞をいただきました。皆で大変喜んだのですが、「きらら」って何のことだか分かりますか。実は「雲母」のことです。雲とクラウドをかけた女性社員の発案なのですが、今までならこんな柔らかい名称は付けられなかったでしょう。やはり、広くマーケティングしなきゃいけないとなると、発想が変わります。
パートナー支援を拡大へ
中堅向けビジネスの体制は今回の組織改正で整ったと考えてよいですか。当初の構想とは少し違うようですが。

パートナー支援では今回、富士通の東名阪地区の支援部隊100人を移管する形でスタートしました。もちろん、これが完成形だとは思ってはいません。
実は、これ以外の地域のパートナー企業から「自分たちもこの支援の枠組みに入れてもらえないか」という要望をいただいています。他の地域は当面、富士通の支社支店に支援業務を肩代わりしてもらうことにしています。ただ地方のパートナー企業からすると、どうしても「自分のところに来る情報は東名阪より薄いのではないか」と思いますよね。
ですから、この先も絶えず富士通とは議論していかなきゃいけないと思っています。完全子会社になったことで、富士通との間で大きな戦略を共有できるわけですから、それを最大限に生かさなければいけないでしょう。
もう少しすっきりした形にできなかったのですか。
地方をどうするかという課題は、簡単に解決できるものではありません。ただ、富士通が地方の民需を手掛けるのは、やはり効率が悪いと思います。地方のパートナー企業がもう少し民需ビジネスをやれるように当社が支援して、富士通はもっと違うところにシフトするのが良いはずです。
我々だけの考えでできるわけではありませんが、地方の実情に合わせて徐々に支援事業を拡大していきます。その際のポイントは、お客様にとっては富士通の中の再編なんて関係ない話だということです。少しでもお客様のプラスになるように考える必要があります。
古川 章(ふるかわ・あきら)氏
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)