直販部隊とパートナー企業との競合は防げますか。
富士通から移ってきたパートナー支援部隊は、直販部隊とは別の事業所を構えており、両者の間には事実上ファイアウォールを設けています。
直販部隊をなくして支援だけをやると言ったら、パートナー企業は気持ちいいかもしれません。でも、直販をやらずお客様を直接知らずして、ニーズにマッチした商品を作れるものでしょうか。お客様と会話し、何を求めているかということを理解して、パートナー企業の声も聞いて商品開発に反映するべきです。その結果、陣営として全体が強くなればよいのだと思っています。
その意味で、パートナー企業と当社がコラボレーションするプログラムを作りました。共同購買でコストを下げるとか、SE育成などを支援するといったものです。さらに「MASTプログラム」と呼ぶ販売コラボレーションでは、パートナー企業各社に対して専任の担当者を決め、パートナー企業の戦略に合わせた形で、見込み客の開拓など売り上げを伸ばすための方策を検討していきます。
クラウドへの危機感に応える
そうした取り組みを、パートナー企業、特に大手企業はどのように評価していますか。
実はこの前も、ある大手のパートナー企業の経営陣がいらっしゃって、MASTプログラムについて協議しました。こういうものを売りたいとか、どのような協業が可能かといった具体的な話です。
パートナー企業が特に強い関心を持つのは、クラウド関連です。経営規模が大きくない企業がデータセンターなどのインフラに投資するのは大変ですから、パートナー企業の危機感はものすごく強いのです。
それに対して、我々はクラウド基盤を提供できます。富士通グループでは全国に多数のデータセンターを持っていますが、そこにパートナー企業のSaaSを載せることができます。しかも、当社の「きらら」などと連携してもらうことも可能です。
2010年4月に、富士通から中堅企業向け商品の開発部隊150人が異動しています。2010年10月には当社の商品開発部隊と融合させて、270人体制となりました。パートナー企業の商品も、そういう技術者の力を使って連携できるわけです。
富士通製品の商流は変えていませんね。
はい。パートナー企業から見ると、支援するのは当社だけれど、富士通製品は富士通から仕入れるわけです。パートナー支援事業は富士通からの業務委託という形ですから、売り上げにはほとんど貢献しません。
商流を変えるには最低1年はかかるでしょう。ただ、富士通には「なるべく早めてほしい」と言っています。そうでないと、富士通から移ってきた人たちのモチベーションを維持できませんから。
大手向けのビジネスは継続
富士通の中堅向けの直販部隊も、まだ移管されていません。御社の大企業向けの直販ビジネスも、富士通に移しませんでした。今後どうされるのですか。

富士通の中堅向けの直販ビジネスは、2015年までに当社に移します。ただ担当者まで異動するわけではありません。そういう人たちは富士通で大手向けビジネスを担ってもらったほうがよいと思います。移管されたお客様の案件は、当社だけでなく、パートナー企業にも引き受けてもらうことも考えています。
一方、当社が担当する大手のお客様の案件ですが、当社の強い分野で長年にわたって培ったノウハウや知見を生かせるなら、引き続き推進していきます。一番先進的な試みは大手のお客様が取り組むケースが多いので、その意味でも大手のお客様と接点を持っておく必要があります。もちろん、富士通とは役割分担を徹底していくつもりです。
1999年度に2200億円を確保して以降、売上高の減少が続き2009年度には1300億円にまで落ち込みました。この状況を打開できますか。
確かに、売り上げがずっと下がり続けていることは最大の問題です。いくつか要因がありますが、結局はお客様のニーズをくみ取る力が弱まったことに尽きると思っています。人が減ったこともあり、現場の接点が少なくなってしまいました。その結果、お客様が求めていることが分からなくなった。だから、売れません。
2011年度からの中期計画をこれから作りますが、課題はやはり成長です。2015年度に売上高3000億円を目指します。そのあたりがSIerとして“一部リーグ入り”の条件ではないでしょうか。そのためにはクラウドだけでなく、その周りに生まれるビジネスを、お客様視点でいかに見つけ出していくかが重要だと思います。
古川 章(ふるかわ・あきら)氏
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)