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[後編]IaaSを通信網と組み合わせる 他社クラウドとセットで提供

クラウドと言いますと、2007年にマイクロソフトとSaaS支援事業などで提携しました。その成果は出ていますか。

 あまり目立たないのですが、事例は結構出てきていますよ。我々が裏方に回るのでなかなか見えないのですが、今で言うIaaSみたいな環境にアプリケーションを載せてもらって、売れた分をシェアしましょうといった形で、ビジネスを進めています。そんなに大きなビジネスになっているわけではありませんが、右肩上がりで増えています。

 Azureについては、マイクロソフトと一緒に何かやるといったことは、今のところ考えていません。クラウドビジネスは様々な企業と一緒に展開していくほうがよいと思っています。特定の企業と戦略的に組んでいると見られるのは好ましくありません。

IaaSに自ら取り組むとのお話ですが、具体的にどのようなビジネスを展開しているのですか。

 クラウドでもIaaSのような下位レイヤーのサービスは、付加価値を付けるのが困難です。

 でも当社の通信サービスには、IaaSなどに最適な「WVS」というサービスがあります。これが結構売れています。データセンターとの良好な通信環境を提供するサービスで、契約帯域が10Mビット/秒でも、例えば物理回線が100Mであれば100Mまで使えるようにしています。これとクラウド関連サービスをセットで提供しています。このように下のレイヤーのサービスから固めていこうと考えています。

そうすると、ネットワークという足回りを持ったAmazon EC2といったイメージのサービスを提供していくと認識しておけばよろしいですか。

 その通りです。そして、上位レイヤーのサービスはパートナー企業と一緒にやるというのが、クラウドビジネスの基本フレームです。

中国ではスピード感が違う

クラウドをソリューションとして提供しようとすると、要望に合わせてサービスを組み合わせたり、顧客の情報システムと連携させたりする必要も出てきます。そうしたインテグレーションを自ら手掛けるお考えはありますか。

田中 孝司(たなか・たかし)氏
写真:陶山 勉

 自分たちの能力は分かっているつもりです。我々ができる範囲は限られており、できないところをパートナー企業に補ってもらいます。今でも、サーバーなどの簡単なインテグレーションは通信事業者にも依頼が来ますが、複雑なもの、高度なものはやはりITベンダ ーに発注されていますよね。

 通信事業者のサービスの良いところは何かというと、セット売り、分かりやすさ、顧客密着の営業だと思いますので、そこからニーズを掘っていこうと考えています。NTTとの違いで言うと、我々にはNTTデータに相当する部門がないわけです。それを補う意味でも、パートナー企業と一緒に進めていくのがスタンスです。

グローバル展開では、NTTグループの一連のM&A(合併・買収)が最近注目を集めました。国際通信が本業の一つだった御社としては、どんな手を打っていますか。

 NTTは大きな企業をどかんと買われたわけですが、我々も香港のDMXテクノロジーズ・グループを買収し、中国や東南アジアでのサ ービスを強化しています。DMXには二つの事業があります。一つがネットワークインテグレーションやシステムインテグレーション。もう一つが中国を中心にしたCATV向けのデジタルメディア事業です。

 今後も企業向けのビジネスでは、本当に必要なところをM&Aで強化していきます。特にデータセンターをもっと早く増やしていかなければいけないのですが、やはり相手があることですからね。いま中国ではデータセンターは2年くらいでいっぱいになり、利益を出せるようになります。時間のかかる日本とは全く違うスピード感ですね。

KDDI 代表取締役社長
田中 孝司(たなか・たかし)氏
1981年3月に京都大学大学院修了、同年4月に国際電信電話(現KDDI)入社。85年6月に米スタンフォード大学大学院修了。2003年4月に執行役員 ソリューション商品開発本部長、07年6月に取締役 執行役員常務 ソリューション事業統轄本部長、10年6月に代表取締役 執行役員専務 ソリューション事業本部担当 兼 コンシューマ事業本部担当 兼 商品開発統括本部担当。10年12月より現職。1957年2月生まれの53歳。

(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)