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ITホールディングス(ITHD)傘下の主要事業会社TISとソラン、ユーフィットの3社が2011年4月1日に合併した。事業会社の再編で競争力の強化や業務効率化を進める狙いだったが、東日本大震災の発生により逆風下での新体制発足となる。ITHDの岡本社長に、今後の企業のIT投資動向や新会社を取り巻く事業環境の見通しについて聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ


TISなど主要な事業会社の再編は2008年のITホールディングス発足以降で初めてだが、新体制を取り巻く状況は非常に厳しい。

ITホールディングスの岡本普社長
ITホールディングスの岡本普社長

 東日本大震災の影響で、国内のIT産業もまったく先が読めない状態になっている。生産や物流などの拠点が被害を受けたユーザー企業は、まずは自社拠点の建て直しが急務だ。大震災が起こる前の2011年3月10日の状態に戻すことが必要で、とても新規のIT投資どころではなくなるだろう。

 2011年度には国内IT投資は回復してくると考えていたが、その見通しは大震災で大きく変わってしまった。今後3年間は、企業のIT投資が見込めない「真冬」の状態が続くだろう。少なくとも、そのくらいの期間はITへの新規投資が止まるという覚悟で経営していく必要がある。

大震災の前までは企業のIT投資は戻りつつあったのか。

 改善傾向にあった。TISが東京都品川区に新しい大規模データセンターを開設する効果もあり、クラウドサービスの引き合いは2011年に入ってから毎日のように顧客から来ていた。かなり手応えを感じていたのだが、大震災を境にそういった引き合いがパッタリと止まってしまった。

 世の中全体の消費自粛の影響も気になるところだ。国内の消費全体が落ち込むことでモノやサービスが売れなくなり、企業のバックオフィスにおける顧客データや販売データの入力などの処理作業も少なくなる。システム開発の案件だけでなく、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などのITサービスの需要も減るだろう。

 しばらくは日本全体の経済活動が停滞する。復興に協力しながら耐えるしかない。

被害を受けた拠点のシステムを復旧させる需要や、BCP(事業継続計画)の策定および見直し、システムの災害対策などを強化するユーザー企業が出てくる。

 拠点内のシステムが被害を受けたユーザー企業も多いが、壊れたのは主にハードウエアだと思う。そこまで簡単な話ではないが、要はハードを新しく交換して、ソフトを乗せかえればこれまで使っていたシステムは利用できるようになるはずだ。ハードの修復や交換といった需要はしばらく出てくるだろうが、新規のシステム開発が必要になるわけではない。

 BCP見直しの一環で、ユーザー企業が自社の拠点に設置しているシステムをデータセンターへ移行させる案件は増えるだろう。重要なデータをどこにどういった形で保管しておくべきかなどの相談も多くなると思う。

 ただ、BCPの策定と災害対策は、システムの規模に加え、システムダウンで事業を止めてはいけない時間をどれだけ短くするかで投資額が大幅に変わってくる。巨大な地震でも全くシステムが止まらないような災害対策には莫大な投資が必要となるが、実際のところ、そこまでの対策を取る必要がある企業は少ない。ユーザー企業がどのようなBCPを策定して、実際の災害対策を実施するかは未知数だ。

 BCP関連の需要増よりも、新規のシステム開発をストップすることの需要減の影響の方がよほど大きく、IT投資の低迷の大きな要因となる。

ITHDグループとしては、新生TISを中心にこの厳しい環境をどう乗り切るべきと考えるか。

 まだ被災地域は混乱のさなかにあるので、クラウドサービスの無償提供などの支援を被災した企業や自治体へ続けたい。

 このあと本格的に復興の動きが出てくれば、インフラなどの復旧を支援するような新しいソリューションを的確なタイミングで提供していきたい。例えば、インフラの復旧が進むにつれて、建築や土木業界などでシステム需要が増えるはず。細かな図面の処理システムなど、これら業界の企業が効率的に活動できるような新サービスを先をよみながら出していく。

 流通や製造業など、復興が進むにつれて段階的に活性化したり本格稼働していく業界が移り変わっていくはずだ。こうした我々の事業展開により、様々な業界の顧客の業務を効率化。ひいては復興のスピードそのものを早められることにつながることを期待したい。

 インテックとTISが経営統合しITHDが発足した2008年も、新体制が始まって5カ月後にリーマン・ショックに直撃された。事業環境が想定以上に悪化したので合併当初に描いていた計画通りにはいかなかった。しかし、その間も営業黒字は出し続けて、利益は減ったとしても赤字にはならなかった。

 今回も厳しい時期が続き、体力のないITベンダーが淘汰されるなど再編も加速するだろう。だが我々は長い冬を乗り切る体力をつけている。復興が進み日本経済が好転する段階に入れば、ユーザー企業が新たなIT投資を必要とする時期が必ずまた訪れる。その時期の見通しはまだ立たないが奮闘を続けたい。