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 2011年3月に東京電力が実施した計画停電を、データセンターや各社の情報システムは無事にやり過ごすことができた。この夏は計画停電を実施しない見通しを東京電力は示している。しかし「万が一の再実施を想定せずにこの夏を迎えるべきではない」と警告する声もある。情報システムの担当者はどう構えておくべきなのか、BCM(事業継続管理)に詳しいガートナー ジャパンの石橋正彦セキュリティ担当リサーチ ディレクターに聞いた。

(聞き手は井上 健太郎=ITpro

写真●ガートナー ジャパンの石橋正彦セキュリティ担当リサーチ ディレクター
写真●ガートナー ジャパンの石橋正彦セキュリティ担当リサーチ ディレクター

ユーザー企業の動きはどうか。

 3月中旬に計画停電が打ち出された当時は、自家発電装置の購入や設置の見積もりを取るなどしていた企業が多かった。また、関東圏外のセカンダリサイトを持たない企業では、中部や関西方面のデータセンター業者から見積もりを取る動きがかなり出ていた。

 しかし4月に入ってからは、かなり楽観的な空気が漂い始めている。データセンターの見積もりを取ったまま何もせず静観しているところが多い。3月の計画停電を無事に乗り切ったことで、「夏にまた実施されたとしても何とかなる」と考えているようだ。かなり慎重な日本企業でも、関東圏外に全てのサーバーを移した例は無く、一部を移しただけだ。

 3月当時、自社拠点内のシステム用に自家発電装置を購入した企業もあったのだが、4月に入ってからは、据えつけ工事をせずに静観している。

そうした状況をどう見ているのか。

 ちょっと楽観しすぎだ。夏に本当に電力消費が供給力以下で収まるのかどうか確証は無いし、大きな余震で発電所に新たな被害が生じる可能性もある。7~8月になって計画停電をやっぱり実施することになる可能性が無いとは言い切れない。

 もし中部・関西のラックが埋まっているとしても、北海道や九州などに、数ラックでも小規模なセカンダリサイトは持っておいたほうがいい。

 実際、関東圏のデータセンター業者の中には、「夏が近づくと、また慌ててラックを探すユーザー企業が出てくるだろう」と予想して、中部や関西のデータセンターのラックを確保し、プレミアムを乗せて売り込むタイミングを計っているところもある。

 私がアドバイスをした企業のシステム担当者からは、「数ラック契約しておくコストを上司から嫌がられた」という声も聞かれる。3月を無事に乗り切ったことが、かなりの油断を招いていると言わざるを得ない。

セカンダリサイトを持っている企業はそもそもどのくらいあるのか。

 当社が震災以前に実施した調査では、国内企業の10%程度しかない。残りの9割はデータセンターと自社拠点の組み合わせという形態だ。

 危機管理対策として位置付けたセカンダリサイトを持つ企業は実際には金融業、通信業、大手製造業などに限られ、全体の数%だろう。セカンダリサイトを持つとの回答には、合併前の会社などのサイトを残してあるのをそう呼んでいるだけのケースも含むからだ。

 もし自家発電装置を確保してあっても、いざというときにすぐに稼働させるのは難しい。重油の備蓄タンクを敷地内に置く手続きや、排熱ダクトを建てる工事、近隣への騒音対策などが必要になるからだ。本当に稼働可能かどうか、今から検討しておいたほうがいい。

 国内企業と対照的に、外資系企業は動きが早い。国内のサーバー機能をせっせと本国に移している。特に米国企業は、2000~2001年のカリフォルニア大停電などを経験しただけに、電力インフラの問題に警戒心が強い。