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 東日本大震災の影響により、外国人観光客の訪日が激減している。こうしたなかJR九州は、中国人観光客の日本離れを食い止め、将来の需要回復期に九州来訪を促進する施策に力を入れ始めた。2010年4月に中国に設立した上海代表処(事務所)の相良周平首席代表に、どのような施策を展開しているのか聞いた。

(聞き手は島津 忠承=日経情報ストラテジー

JR九州は中国人観光客を誘致するためにどのような施策を展開しているのか。

写真1●JR九州の相良周平・上海代表処首席代表
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 外国人向け格安切符「JR九州レールパス」の販促に力を入れている。JR九州が運行する新幹線や特急を含む列車に一定期間乗り放題となる切符で、北部九州エリア版が3日間で7000円と、一般の切符よりも割安に料金を設定している。博多から大分県の湯布院、さらに長崎へといった旅行がしやすくなる。

 2010年12月にこのレールパスの利用対象者を広げ、これまで外国人専用だったのを、中国に在住する邦人も利用できるように改めた。

なぜ在中国邦人に利用対象を広げたのか。

 まずは中国で働く邦人の口コミで中国人に広められないかと考えたからだ。残念ながら中国では九州の魅力が十分に知られておらず、いきなりレールパスを中国人観光客に販売するのは難しい。例えばJR九州レールパスの存在を知った邦人が、会社の同僚など中国人を誘って九州旅行に出かけるような使い方を期待している。2011年3月12日に九州新幹線が全線開通したのをきっかけに、上海に拠点を置く旅行会社に精力的にアピールして回っているところだ。

中国人観光客へのレールパスの年間販売枚数は現状でどのくらいか。

 残念ながら年間数十枚にとどまっている。レールパスの販売枚数全体の0.1%にも満たない。2010年の年間販売枚数は約5万枚で、そのうち8割を韓国人旅行客が占める。残り20%のうち十数%が台湾と香港となっている。中国人観光客は個人観光ビザが取得しにくいなどの事情はあるが、今後は利用割合をもっと増やしていきたい。3年後に少なくとも1万人に利用してもらうことを目標にしている。

 課題は九州自体の認知度の向上だ。上海に赴任して分かったことだが、中国の旅行会社がツアー紹介広告を作成する際には、行き先しか記さないことが多い。日本への旅行であれば「東京・名古屋・大阪」といった具合である。観光ガイドブックも充実していない。これらの事情により、どんな観光名所があるのかが顧客に伝わりにくく、価格以外の差異化の要素が無くなっている。結果として九州よりも知名度が高く、直行便が豊富で航空チケットも割安な東京などに負けてしまっている。

 実際、2010年に約140万人だった中国人観光客の行き先は東京、大阪、北海道ばかり。九州への来訪はこれらの地域を下回った。こうした状況を変えるには、九州を知ってもらう地道な活動がいろいろと必要になる。そのような活動の一環で、まず邦人の力を借りることにした。

写真2●中国系の旅行会社にモデルコースを説明する資料
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 中国系の旅行会社にもレールパスの存在と効果的な使い方を知ってもらう必要もある。レールパスを利用するとどんな旅行を楽しめるのか、福岡空港からのモデルコースとレールパスの利用手順を詳細に解説する写真付き資料を作成した(写真2)。この資料を旅行会社に持ち込んで説明を重ね、ツアー商品の拡充などにつなげてもらおうとしている。

中国では観光客誘致のほかに、どんな事業展開を目指しているのか。

 中国国内向けに和食レストランを展開する計画だ。当社のグループ会社が東京・赤坂や北千住などで運営する「うまや」を、上海市内で2011年中にオープンさせる予定だ。そのための外食管理会社を2010年秋に設立し、現在は1号店の物件を精査しているところだ。