
三井住友フィナンシャルグループとの提携を解消して以降、独立路線を歩む大和証券グループ。法人部門の低迷などで苦闘が続くが、アジアに軸足を置くグローバルプレーヤーとなるべく布石を打ってきた。その指揮を執った鈴木茂晴社長は「システム刷新を決めたことが社長としての一番の自慢」と話す。4月に会長に就任する予定の鈴木社長に、その言葉が意味するところを聞いた。
法人向けの事業で三井住友フィナンシャルグループとの提携を解消してから1年が過ぎましたが、この間、事業の再構築を進めてきたと思います。まずは事業戦略を聞かせてください。
この1年はアジアビジネスを本格的に拡大してきました。ヒト、モノ、カネをアジアに投入するという戦略を打ち出し、例えばベルギーの金融大手KBCグループから、アジアを中心に転換社債やデリバティブを手がける部門を1000億円で買収しました。アジア投資の一環として、情報システムへの投資も実施してきました。
その意味で、昨年は未来に向けての投資を行った年であったと言えます。ただ、提携の解消については、ビジネスの展開とは直接関係はありません。
個人投資家向けのリテールはまだまだ日本国内で拡大する余地は大きいと思います。一方で、法人向けの投資銀行業務は非常にグローバル化していますので、我々もグローバルプレーヤーとして生き残らなければいけない。そこで、アジアにフォーカスした証券会社になろうとしているわけです。
攻めのシステムは整った
国内市場の開拓余地が大きいというリテールでは最近、オンライン信用取引口座の増加数でトップになりました。
オンラインビジネスは個人投資家向けのビジネスのなかでも大きな部分を占めますから、そのインフラを整えるためのシステム投資を実施してきました。従来は、オンライン専業者とは違う客層、比較的大きな資産を預けていただく顧客が多かったのですが、システムが整いましたので、デイトレーダーといったアクティブな投資家に向けてもビジネスを強化していきます。

既にFX(外国為替証拠金取引)では、我々は「くりっく365」(東京金融取引所が市場を開設・運営しているFX)で二十数%のシェアを占めています。手数料を含めて相当アグレッシブに競争した結果です。株式のほうでも、手数料を下げており最安値に近いところにまできていますので、今後は多くの顧客を獲得できると期待しています。
今年は、ネット銀行も設立する予定ですね。
はい。ただし銀行といっても、住宅ローンなどの融資サービスを提供するわけではありません。あくまでも投資家に対して、銀行口座と証券口座の間で資金を移しやすくするなどの利便性を提供するのが目的です。株式売買などの際にいちいち他の銀行の口座に資金を動かさずに済みます。
鈴木 茂晴(すずき・しげはる)氏
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)