スマートフォンが注目を集める中、安価な端末やモバイルIPフォンなど新たなサービスを次々に投入する日本通信。2011年4月からのSIMロック解除を背景に、これからどのようなサービス展開を考えているのか。三田社長に戦略を聞いた。
10日間利用権付きの安価なスマートフォン「IDEOS」やタブレット端末「Light Tab」、スマートフォンからのモバイルIPフォンなど、他にないアイデアを矢継ぎ早に打ち出している。
どれも、ユーザーの本当のニーズに応えるサービスだと考えている。「使いやすいもの」を提供しようとした結果が、10日分のデータ通信を付けたIDEOSやLight Tabといった安価な端末であり、後から追加して月々2000円前後で利用できるSIM(Subscriber Identity Module)、スマートフォンでの050番号を使った安価なIP電話といった商品だ。
これからは世界中、情報ベースの経済になる。だから情報のトランスポート、つまりコミュニケーションが重要になる。最近はクラウドコンピューティングなどと騒いでいるが、それ以上に、最終的にその情報を「届ける」ことこそが価値になる。消費者の生活をより良いものにするには、情報をストレスなく、タイミング良く届ける必要がある。
そのために重要な役割を果たすのがモバイル通信環境だ。そのモバイル通信のサービスを提供する我々は、ユーザーのニーズをきちんと読み取らなければいけない。ニーズは一様ではなく、いろいろな形がある。
ところが従来は、モバイル通信サービスのバリエーションは必ずしも多くなかった。端末は好みのものを自由に使えるようにはなっていなかった。サービスは基本的に横並びで、料金面でも定額制など、基本的に一つの味しかない。そのうえ料金プランは複雑で、ユーザーには分かりにくい。
その環境を日本通信が変えると。

そうだ。原因は結局、事業者間の競争環境が十分に整っていないこと。確かに複数の事業者がいて、加入者シェア争いはしているが、基本的にどれも垂直統合モデルで、通信事業者が認めた、事業者ブランドの端末しかなかった。端末に搭載する機能も事業者が決めてきた。結局は3社による独占市場で、市場に大きな変化が生じない。
これでは端末はどうしても高価になるし、通信料金も柔軟性に乏しい。今は販売奨励金がないから、ユーザーにとっては端末乗り換えのハードルは高い。2011年4月以降、NTTドコモがSIMロック(特定の端末でしかSIMを利用できないようにすること)を解除できるようにするが、従来のままではあまり意味がない。だからネットワークそのものを提供する通信事業者“以外”の通信事業者が必要になる。ユーザーの視点に立って何が必要かを考える通信事業者。それが我々MVNO(仮想移動体通信事業者)だ。
通信事業者に対する日本通信の競争力はどういった点か?
通信事業者にはやれないこと、やりたくないこと、興味を持っていないことを、機動的に手掛けられることだろう。それでユーザーのニーズに合うサービスを提供する。
ポイントは、ユーザーについてどれだけ細かい情報まで扱えるかだ。例えば課金。我々は秒単位や分単位での課金に対応できるシステムを作った。既存の通信事業者も、「合計で何秒使ったから今月はいくら」というように、後でまとめて計算するのなら対応できるだろう。しかし、使いながら即座にどのくらい使ったかを計算し、残り金額・通信時間を提示するような仕組みを広範囲に提供するのは容易ではない。だから我々はそこに注力している。効率を上げる、簡単にする、理解しやすくする──。どれも、我々が提供する付加価値ビジネスでは、考えておかなければいけないことだ。
三田 聖二(さんだ せいじ)氏
(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2011年3月3日)
記事公開当初、タイトル画像の三田社長のお名前が誤っておりました。お詫びして訂正します。画像は修正済みです。 [2011/05/18 16:50]