IDEOSやモバイルIPフォンもユーザー目線を意識したものだと。
例えば端末について言うと、そもそも通信事業者ブランドで数万台しか売れない端末では、メーカーとしては値段を上げるしかない。そしてそれを消費者が支払うことになる。この類の製品はライフサイクルが短いから、2年縛りなどの契約条件の概念も合わない。
これに対して我々はIDEOSのように、大量生産できるメーカーのブランドのままで、できるだけ安く端末を提供していく。2年縛りもしない。通信回線も小遣いでも支払えるくらい、月々に換算して2000円台に収まるレベルにする。そもそもこれからの新しいニーズは若年層のユーザーが生み出す。彼らに使ってもらい、Twitterなどで盛り上げたり、苦情を言ってもらえる商品にしなければならない。
モバイルIPフォンで通話料も抑えた点も同様だ。トータルコストを安くすることで、今までとは違う層の人に受け入れてもらえる。実際、コールセンターへのIDEOSに関する問い合わせでは、「初めて買う携帯電話」だと話すユーザーが多い。
流通の面からも変えている部分がある。IDEOSは日本通信としては初めて一般の流通に流したスマートフォン。データ通信専用だから販売時に本人確認が要らない。だからアマゾンでも買えるようにした。後で通話にも使いたくなったら、IDEOSでWebサイトにアクセスしてオンラインで申し込めばいい。当社では携帯電話のカメラを使って、遠隔で本人確認できる仕組みを設けている。これを使えば、音声の契約もリモートで済ませられる。消費者、流通チャネル、そして我々のすべてにとって良好なモデルだ。
SIMロック解除は市場に大きな影響を与えそうか。

IDEOSやLightTabのサービスは、端末とSIM(通信の契約)を別々にしているからこそ実現できる。SIMロックが解除されれば、こうしたサービスを推進しやすい。
我々はこの仕組みを“通信電池”と呼んでいる。例えば乾電池みたいに充電(チャージ)できるSIMもあるし、一括で支払って一定期間で使い切るSIMもある。電池が切れたら差し替えればいい。この考え方に基づくと、いろいろな形、パターンのサービスを提供できる。
例えば3G、WiMAX、LTEなど異なるサービスを使いたいと思ったら、現状では個別の契約が必要になる。でも、電池なら1個を使いまわせる。使い切りの通信電池なら、いくつも持っていても構わない。1万円分の通信電池容量を買って、複数のSIM(電池)でこの1万円を使うのも面白い。電池が切れたら交換するか、チャージすれば済む。オートチャージでもいいだろう。実際、IDEOSで使えるモバイルIPフォンは月額490円に設定してあって、オートチャージにできる。
SIMロックフリーの端末を使うには、ユーザーはどこかでSIMを買わなければならない。そのSIMをどこで買うかといえば、通信事業者かMVNOしかない。そしてMVNOが一番、すぐに種類を多く作ることができる。
我々はIDEOSと同様の仕組みを今後も継続していく。ずっと一つのブランドを守るのではなく、違うメーカーも入れて競争をさせる。モバイルIPフォンなどはそのまま使えるようにして機能を強化しながら、四半期ごとくらいに新しい製品を出していく。
もうビジネスモデルなどについて話をする時期は過ぎた。今度は市場に実績として見せていく。それで、無線を中心とした次世代のインターネットを、日本発という形で始められたらいい。
三田 聖二(さんだ せいじ)氏
(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2011年3月3日)