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田川 博己(たがわ・ひろみ)氏
写真:陶山 勉

 リーマン・ショック後の業績不振から立ち直り、1年後の創業100周年に向け新たな成長を期するJTB。旅行業の枠組みにとどまらず、「交流文化事業」の推進を旗印に掲げ、情報システムの活用で顧客との関係も抜本的に変えようとしている。「旅行業は人とシステムで成り立つビジネス」と語る田川博己社長に事業戦略とIT活用の勘所を聞いた。

これまでの中期経営計画を1年繰り上げ、4月から新しい中計をスタートされます。その意味するところを聞かせてください。

 中計を繰り上げた一番の理由は、やはりリーマン・ショックの影響です。世界のお金の流れが全く変わってしまうほどの影響があるとは、予想できませんでした。そして、旅行関連でのインターネット活用も想定以上に進展しました。中国の急速な台頭もあります。旅行業を取り巻く環境が大きく変わると予測していましたが、前倒しで進行してしまったのです。

 新しい中計では、成長戦略としてはグローバル事業の収益化、Web事業の強化、地域交流事業の推進などを掲げましたが、基本的には経営のすべてを洗いざらい見直しました。従来のようにヒト、モノ、カネだけではなくて、情報システムや危機管理、内部統制、それに国際会計基準などの課題への対応を全部網羅した総合経営計画として策定したのです。

 例えば情報システムでは、コアとノンコアとを分けて整理しました。クラウドサービスなど新しい仕組みが登場していますから、そういったものを使うほうがいいのか、自前で開発したほうがいいのかを見極めたのです。

 ネットが普及して店頭事業が苦しくなるなかで、店頭の人材はどうするかという、課題にも向き合います。旅行業は人とシステムで成り立っていますが、従来にも増して店舗の大小や数ではなく、スタッフの質で勝負していかなければなりません。

田川 博己(たがわ・ひろみ)氏
写真:陶山 勉

 最近では、衰退した駅前の商店街にあるJTBの店舗より、ショッピングモールにある子会社のJTBトラベランドの小型店舗のほうが成績が良いのです。この4月にJTBトラベランドをJTBの地域会社に合併し、小規模店舗を中心にリテール部門をもう一度再編しようと考えています。

 4月からは収益に関する社内制度も改め、商品開発に貢献した支店や部門にも利益を配分するようにします。ネットで地域情報を世界に発信できる時代に、中央主導の旅行業ではやっていけませんから、全国の支店などで商品の素材をつくる形にしたいと思っています。例えば鹿児島県の支店長は、県民を外へ送り出すことしか考えていませんでしたが、これからは全国、世界中の人を県内に呼ぶための商品を考えてもらいます。