PR

 CIO(最高情報責任者)は「キャリア・イズ・オーバー」の略だというジョークが海外にはある。それほど、功績を挙げて経営者に認めてもらうのが難しい役職といわれている。米ガートナーで数年間にわたり聴衆からトップ評価を得続けているトッププレゼンターに、海外のCIOはどんなことに悩んでいるのか、どんなアドバイスをしているのかを聞いた。ガートナー入社前はアメリカ議会図書館の議会調査局に勤務して政治問題などの調査に関わっていた。現在はCIOに関するマネジメント課題を専門分野としている。

(聞き手は井上 健太郎=ITpro

写真●米ガートナーのCIOリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストであるティナ・ヌノ氏
写真●米ガートナーのCIOリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストであるティナ・ヌノ氏

ITガバナンスにおいて重大なリスクとは何か。

 私は「ガバナンス」とは投資の管理であり、そのポートフォリオの価値を最大化することだと捉えている。

 ITプロジェクトが失敗する代表的な理由は三つだ。(1)十分なリソースが無い、(2)業務部門が参加しない、(3)そのプロジェクトと同程度な規模のプロジェクトを過去に成功させたプロジェクトマネジャーが足りない---である。

 多くのIT組織はこの三つのうち1~2個を抱えている。私はクライアントに「一つ以上あったら無理だ」と言っている。CIOは、「これではできない」というケースがあることを理解すべきだ。

 特に(2)については、IT部門は、業務部門が関心を持っていない場合にも、自分たちだけでプロジェクトを完了させようとしがちだ。なぜ業務部門が興味を無くしているのに、IT部門が関心を持ち続ける必要があるのだろうか。仮想化技術の導入プロジェクトのような例外もあるが、CRM(顧客関係管理)などのプロジェクトの場合、それでは遂行する意味が無いとIT部門は気づかなければならない。

 CIOは、数は少なくとも、成功の条件が整ったプロジェクトだけを実行するべきだ。

米国など海外でもCIOのリーダーシップ強化は課題なのか。

 進んでリスクを取るすばらしいリーダーシップを持つCIOも多くいるが、苦労しているCIOも多い。CIOが苦労する理由として、いまだに多くの企業の経営陣がCIOに「リーダーになってくれ」と言いながら、リーダーの意味をはっきりさせていないことが挙げられる。

 CIOがリーダーとして成功するためには組織内で、他の経営陣と同じレベルのパートナーでなければならない。ところがあるCIOは「経営のパートナーにならなくていい。言われたことだけすればいい」と経営陣から言われた。IT部門のことをコストセンターやサービスプロバイダーと見ているのだ。

 これではいつまでたってもCIOは忠実な召使いのままで優れたリーダーにはなれない。CIOにリーダーシップを身につけてもらいたいならば、経営陣は以下のような自問自答をして、点検しなければならない。

 まず「IT部門はノーと言えますか?」という質問をするべきだ。ノーが言えない人間関係は対等ではない。

 この他にも「CIOに対してどれだけ予算決定の権限を渡す意思がありますか」「ITアーキテクチャーのコントロールをそのくらい渡す意思がありますか」「エグゼクティブミーティングにCIOの出席を要求しますか」といった質問を経営陣は自問自答すべきだろう。

 一方で、もちろんCIOには相応の資質が求められる。私は2010年に、経営陣が次期CIOを選ぶための49の質問集を作った。例えば、CEO(最高経営責任者)が戦略的であるならば、候補者に「あなたは会社の成長にどのくらい貢献できますか」と聞くことが望ましい。そうでない場合には「どのくらいコンプライアンスを徹底できますか」という質問も大事だ。

CIOと経営者のコミュニケーションは日本でもしばしば話題になる。CIOは「意味の分からない言葉を喋る人」とみなされ、経営者から敬遠されていると指摘する人もいる。日本のコンピュータ専門誌では「平易な言葉で、伝わるプレゼンテーションをしよう」という趣旨の記事を繰り返し掲載してきた。

 確かにITエグゼクティブの多くは、技術をどう使うかの説明だけに照準をあてて、どうビジネスに影響があるかを説明できない。私も「この技術を使ったら何ができて何が役に立つのかだけを説明するべきだ」とアドバイスしている。