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 創業以来、一度も赤字を出したことがない京セラ。リーマン・ショックも経営と従業員の結束に加え、独自の経営手法である「アメーバ経営」を駆使して乗り切った。スマートフォンの普及を追い風に、今期に過去最高の売上高の達成を目指すと言う久芳徹夫社長に、その強さの秘密と情報システムが果たしてきた役割について聞いた。

前期の業績はほぼリーマン・ショック前の実績に戻りましたね。京セラは創業以来、赤字を出していませんが、その強さはどこから来るのですか。

久芳 徹夫(くば・てつお)氏
写真:吉田 竜司

 いつも話していることですが、京セラは「全従業員の物心両面の幸せを追求する」ことを、企業の理念としてうたっています。経営と従業員が一体となって会社を支えていこうという気持ちを全員で共有している。まずそこが一番大きいと思っています。

 もう一つは、我々の管理手法であるアメーバ経営です。アメーバ経営は「自分の部署だけが良ければよいのだ」と誤解されることが多いのですが、アメーバ経営の本質は、全体が良くなるように自分の部署がどう動くかということです。そのうえで、独立採算でやっていくことで自分の部署の状態が分かりやすくなるわけです。

 リーマン・ショックのときも、ITバブル崩壊のときも赤字を出さなかったのは、皆が皆を支えていこうという気持ちに、アメーバ経営が組み合わさった結果だと思っています。会社という形では考えにくいかもしれませんが、家庭に置き換えてみれば分かりやすい話です。父親の給料が半分になれば、家族は一致団結しますよね。我々は大家族主義とよく言いますが、そのような思いでやってきたわけです。

 ただ最近は、大企業病と言いますか、知らず知らずのうちに官僚的になったり、無駄なお金を使ったりもしていました。それでリーマン・ショックのとき、オイルショックやITバブル崩壊を乗り切ったときのことを従業員に訴え、京セラの強さとは何かを改めて再認識してもらいました。

サプライチェーンに影響無し

いくら強固な理念や経営手法があると言っても、それだけで常に利益を出し続けるのは難しいのではないですか。

 もちろん従業員には無理をさせています。リーマン・ショックのときには、工場間で異動してもらいました。鹿児島から関西に応援に行ってもらったこともありました。アメーバ単位できっちり見ているから、従業員に収益面の実感があるのです。誰かが応援に行かなければいけない場合には、それを理解してくれます。

 そうやって苦労してもらっているので、社長になったとき「全従業員の幸せを追求することが私の使命だ」と改めて宣言しました。利益を出し賞与や給与で報いられるように、私は一生懸命やらないといけないと思っています。

今回の震災は業績に影響がありましたか。製造業ではサプライチェーンの寸断が大きな問題となりましたが。

 幸いなことに、震災の影響はほとんどありませんでした。実は、阪神・淡路大震災のときに困ったのは、港が被災したことによる材料供給の途絶でした。そのため、大事な材料は在庫として持つことに決めていましたので、それが今回幸いしました。もちろん、万全ではありません。一部の部材は集中購買していますが、分散化も図っていかなければなりません。

久芳 徹夫(くば・てつお)氏
写真:吉田 竜司

多めの在庫や調達先の分散化はBCP(事業継続計画)の観点からは良いのでしょうが、経営効率の面でマイナスになりませんか。

 私は別に矛盾することだと思っていません。例えばレアアースは今後ますます希少なものになり、ずっと値上げの方向です。ですから、在庫はマイナスにはなりません。事業の継続のために当然、在庫を持つべきなのです。目先の損益だけではなく、将来を考えるのが経営ですからね。

 調達先の分散化ですが、代替品を本当に使えるようにするためのテストや工夫が必要で、いろいろと大変です。ただ、その努力が足りないと、今回のような問題がおこるわけです。つまり企業として努力すべき部分は、かなり残っています。

今期は、過去最高の売り上げを目指すそうですね。

 はい、売り上げは過去最高の1兆3600億円を目指します。利益面では、営業利益で1680億円と前期を上回ろうという計画です。

京セラ 代表取締役社長
久芳 徹夫(くば・てつお)氏
1979年3月に九州大学工学部卒業、1982年6月に京都セラミツク(現・京セラ)入社。2000年7月に自動車部品事業部長、02年8月にファインセラミック統括事業部長。03年6月に執行役員に就任。05年6月に執行役員常務ファインセラミック事業本部長 兼半導体部品事業本部長。07年4月に執行役員専務、08年6月に取締役 兼 執行役員専務。09年4月より代表取締役社長 兼 執行役員社長。1954年2月生まれの57歳。

(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)