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 日経情報ストラテジーが優れたCIO(最高情報責任者)に与える賞で、ITpro EXPO展示会での記念講演が名物となっている「CIOオブ・ザ・イヤー」。これまでの受賞者の中から、製造業代表としてオムロンの樋口英雄氏へのインタビューを紹介しよう。オムロンは、2002年3月期の赤字転落から「V字回復」を果たし、利益を伸ばしてきた。部門ごとの独立性が強いオムロンだが、好業績を受けて「業務改革本部」による部門横断での体質強化が着実に進んでいる。同本部長で、CIO(最高情報責任者)に当たる樋口英雄執行役員に話を聞いた。

※樋口氏は2007年度のCIOオブ・ザ・イヤーを受賞した。

(聞き手は清嶋 直樹=日経情報ストラテジー

オムロン 執行役員 業務改革本部長 樋口 英雄氏
オムロン 執行役員 業務改革本部長
樋口 英雄氏
写真撮影:竹内由美子

オムロンは過去の業績不振などを機に、部門横断の改革に取り組んでいます。

 当社は電子部品から健康機器まで幅広い領域で事業を展開しています。各事業分野が自立して成長してきましたが、全社横断で取り組んだほうがいいこともあります。そこで、2002年に「業務改革本部」ができ、2004年6月から私が本部長を務めています。本部にはIT(情報技術)企画機能のほか、集中購買やSCM(サプライチェーン・マネジメント)を推進する機能があります。

具体的には何に取り組んだのですか。

 例えば、SCM改革では、FA(ファクトリーオートメーション)機器の事業部門で、「顧客への24時間デリバリー」という目標を掲げました。地域ごとや、営業・生産などの部門ごとではなく、顧客にフォーカスして、全体が同期して動く仕組みを考えました。当社は多品種少量生産を徹底しており、FA機器部門だけでも品種は10万種類以上あります。競合他社より品ぞろえが豊富ですが、納期の面では負けている。これを改善できれば、完全に勝てると考えました。

 製品の多くは日本や中国で生産しています。欧米など世界のどの地区からオーダーが来ても、24時間で配送しようということで、めちゃくちゃストレッチ(背伸び)した目標です。2008年3月までには全地区の主要品目の9割以上で24時間デリバリーを実現できる見込みです。従来は比較的高い日本地区でも実現率は6割程度でした。

 改革のために、FMI(ファクトリー・マネージド・インベントリー)という考え方を導入し、昨年10月から全世界で運用しています。工場(ファクトリー)が全世界の在庫を一元管理し、日米欧など各地区に24時間デリバリーに必要な在庫を置きます。地区の在庫が売れれば、その都度、原則として72時間以内に生産して飛行機で輸送し補充します。

事業部門から抵抗はありませんでしたか。

 実は、そこに一番時間がかかりました(笑)。従来は、営業部門が鉛筆をなめて、「これぐらいの在庫を手元に持っておこう」という方法です。これでは、在庫に過不足が出て、24時間以内で届けられないことも多くなります。

 「営業部門は売ることが任務だから、在庫は持たなくてもいい。在庫については、業務改革本部に任せるわ」と決心してもらう。これだけのことですが、なかなか大変です。ほかのメーカーでもできていないケースも多いようです。

どうしてオムロンにはそれができたのですか。

 やはりストレッチした目標が重要です。すぐに達成できる目標では意味がありません。当社の場合、(作田久男)社長が改革の重要性を絶えず話し、事業部門に目標値も提示しています。

 実際に改革を実行するのは、私ではなく、事業部門です。そのため、事業部門と私が「リードタイム半減」「原価半減」といった「共同目標」を立てることを徹底しました。そうすれば、自然と「ITを使って何とかしなければ」となるのです。

ITはどう活用しましたか。

 FMIを支える情報システムとして、グローバルの在庫を一元管理する仕組みが必要です。とにかくスピードを重視し、既存のシステムをつなぎ合わせて作りました。将来的にSCMのモデルをもっと洗練させた時に、システムも作り直すことになるでしょう。

 FMIの前提として、製品や部品の品番やデータ体系を統一する必要がありますが、ここはそれほど苦労しませんでした。私は、20年ぐらい前にIT部門で全社システム構築に携わった時期があります。その時に作ったデータ体系がほとんど崩れていませんでした。そのあたりは割とまじめなカルチャーの会社です(笑)。