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 「リアルタイム経営の追求という目標は、40年前から変わっていない」。2011年8月15日付でSAPジャパンの新社長に就任した安斎富太郎氏は、こう断言する。ERP(統合基幹業務システム)ベンダーのイメージが強い同社はここ1年ほど、インメモリーDB(データベース)やモバイルなど新分野での活動が目立っている。しかし安斎氏は「以前と基本的な方向性は同じ」と話す。日本IBM、デルでも一貫して営業を担当してきた同氏に、SAPジャパンの今後の方向性を聞いた。

(聞き手は島田 優子、田中 淳=日経コンピュータ
SAPジャパン 代表取締役社長 安斎 富太郎氏
SAPジャパン 代表取締役社長 安斎 富太郎氏
(写真:新関 雅士)

2011年度上期(1~6月)の売上高は前年同期比で22%増。業績回復基調での社長就任となった。

 社長に就任して、まず社員に言ったのは「顧客の成功に貢献できるようになってほしい」ということだ。顧客から期待され、その期待に十分に応えられる社員になってほしいと考えている。

 東日本大震災が発生した今年3月11日以降、IT投資計画を見直す顧客企業は少なくない。投資の一部を凍結した企業もある。こうした状況にもかかわらず、当社が業績を伸ばせたのは、顧客企業が積極的に投資したいと思う分野を我々の製品が支援できたからだと分析している。特に伸びているのはSCM(サプライチェーンマネジメント)や人事といった経営強化につながるアプリケーション、そしてインメモリーDBソフト「HANA」のような新規分野の製品だ。

 いま顧客が求めているのはスピードと柔軟性の二つ。想定外の事態が発生したことを受けて、リスク管理のためにも「予測の範囲をもっと広げたい」と顧客の経営層は考えている。そのために、ERP(統合基幹業務システム)パッケージを中核にして、そこに蓄積されたデータを早く、柔軟に解析したいという要望が高まっている。

 HANAはこうした要望に応える製品だ。また「いつ、どこでも必要な情報を参照できるようにする」という観点から、スマートフォンなどモバイルに対するニーズも高い。当社はモバイル機器向け開発環境「Sybase Unwired Platform」や、モバイル機器とSAPのアプリケーションを連携するためのミドルウエア「SAP NetWeaver Gateway」などを提供している。

HANAは競合他社のデータウエアハウス製品と真っ向から対決するとの指摘もある。「ERPベンダー」というイメージとは全く異なる印象だが。

 SAPは2012年に創立40周年を迎える。40年の間、一貫して変わらないのが「リアルタイム経営を支援する」という方針だ。

 これが今、第2段階に入ったと考えている。第1段階ではERPを軸に、「業務プロセスの統合によるリアルタイム」という質の部分を主に追求してきた。第2段階は、本当の意味での「リアルタイム」を追求する時代になる。これを支援するのがHANAであり、モバイル関連製品であるという位置づけだ。

HANAは顧客のIT戦略も変え得る

SAPジャパン 代表取締役社長 安斎 富太郎氏
SAPジャパン 代表取締役社長 安斎 富太郎氏
(写真:新関 雅士)

 カラム型を採用し、インメモリーでデータを処理できるHANAによって、日本におけるインメモリーDBソフト市場を開拓し、リードしていく。これが当社の立場だ。他社のDBソフトと比較されることもあるが、HANAはDBソフトに対してオープンな存在だ。Oracle DatabaseをHANAで動かすこともできる。

 インメモリーDBに、当社がなぜ力を注ぐのか。顧客企業におけるITのコスト構造や投資のあり方を変えるからだ。ある企業はHANAを利用することで、8時間かかっていたバッチ処理を2時間に短縮できた。単なる運用費の削減でなく、ITにかかっている費用そのものの構造を変える可能性がある。すると顧客のIT投資のあり方が大きく変わり、IT戦略自体も変わっていく。こうした効果を期待している。

インメモリーDBやモバイルといった新規分野では、どのように売り上げを伸ばしていくのか。

 新規分野の製品を販売するために、営業担当者などを集めて新組織を作った。教育研修の提供といったパートナー向けの支援策も強化している。

 HANAは特定のハードウエアに依存しない。米インテルと共同開発したHANA向けのプロセッサを搭載しているサーバーであれば、米IBMや米シスコ、米デル、米ヒューレット・パッカード、富士通といったパートナーのサーバーを利用できる。

 現在、当社のパートナーは約230社ある。ほとんどがERPパッケージの導入などを手がけているが、既存のパートナーの中にもHANAに興味を持ってくれる会社がある。7月上旬にはパートナー20社で独本社に、8月には中国の研究所を訪問した。