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ネットワーク、データセンター、クラウドサービス、プロフェッショナルサービスを統合した「情報デリバリープラットフォーム」。それが製造業やメディアに向くサービスになるということか。

 そうだ。金融のような特別な要求に応えるということとは少し違うが、クラウドサービスがフィットしやすい業種として、製造業とメディア業界にフォーカスしようと考えている。

リチャード・ウォーリー 氏
写真:新関雅士

 製造業では、大抵の企業が高いコスト意識を持っている。その意識は情報システムやネットワークについても同じ。だからアウトソーシングが向いている。今の情報システムは、構成が複雑化すると同時に、扱う情報量がどんどん増え、運用管理の負担が極めて高い。セキュリティやコンプライアンスなども考慮しなければならない。必要に応じてクラウドサービスを活用することで、よりよい性能・機能を、容易に、そして適正なコストで入手できる。

 もう一つのメディアというのは、ゲームをはじめ新しいコンテンツを生み出す業界のことを言っている。コンテンツ開発のために必要とするコンピュータリソースはどんどん増える。最終的にどの程度必要になるか、初めから見込みにくい。時期によって必要なリソースが増減することもあるだろう。こうしたケースでは、エラスティックな仕組みのほうが合理的。クラウドはソリューションとしてぴったりだ。

とはいえ、クラウドサービスは数が多い。日本国内だけを見ても、通信事業者やインターネット接続事業者、システムインテグレータなどのサービスがひしめき、競争は激しい。

 その通り。ただ、ユーザーの視点で大切なのはネットワークとクラウドを合わせた、いわば「統合クラウド」(ユニファイドクラウド)だ。そもそもクラウドはネットワークなしでは使えない。性能面、機能面を含めて、ユーザーにとって適切なサービスにするには、両方を統合しなければダメだ。それを提供できるのは通信事業者しかいない。

 もっと言えば、両方のサービスをサイロ型に別々に提供しているのでは意味がない。最近は通信事業者各社がクラウドサービスを提供しているが、ほとんどは事業部門が別。担当者は知識レベルやスキルが全く違っているし、そもそも顧客への窓口も別になっていることが多い。

KVHは違うと。

 我々は情報デリバリープラットフォームのために、クラウドサービスや通信サービスのすべてを一つのグループで提供するように組織を改めた。ユーザーにとっての技術的な課題について、一つの組織で考え、解決策を練る。大手事業者では容易にはできないだろう。我々は、この組織の一体感を強みにする。

ほかに、戦略として力を入れていく点はあるか。例えば最近はモバイル、あるいはスマートフォンが話題になりやすい。KVHとしてもモバイル関連に興味を持っているか。

リチャード・ウォーリー 氏
写真:新関雅士

 注力する分野では、もう一つ、国際サービスも挙げられる。これは現時点で、特に金融でニーズが高い。つい最近も国内で大手金融機関とのディールをまとめた。欧米と違って、アジアではアルゴリズム取引はまだまだ少ない。だから欧米のヘッジファンドなどがアジアに入ってこようとしている。それ以外の業種でも、アジアは注目度が高い。こうした状況を受けて、ソウルや香港、シンガポールに営業拠点を置いていく。いずれはクラウドサービスも提供していくつもりだ。

 モバイルに関しては、今の時点で計画していることは何もない。ただ、関連するサービスは考えている。一例が仮想デスクトップ。BCP(事業継続計画)にもかかわるテーマだし、情報デリバリープラットフォームの観点からすると自然な拡張だろう。もちろん、スマートフォンを中心とするモバイルは巨大なマーケット。やれることはあると思っている。

KVH 最高経営責任者(CEO)
リチャード・ウォーリー(Richard Warley)氏
1984年、英London School of Economicsで歴史学の学士号および経済学の修士号を取得。91年、ロンドンのCollege of Lawで法学学士号を取得、Freshfields Bruckhaus and Deringerにソリシター(事務弁護士)として入所。その後、メリルリンチの通信グループインベストメント・バンキング担当ディレクター、米サヴィス(データセンター事業者)のマネージング・ディレクターなどを務める。2008年、米フィデリティ投信グループのプライベートエクイティ部門デボンシャー・インベスターズに入社し、情報通信グループ担当マネージング・ディレクター兼グローバルCFOに就任。2010年9月、KVHのCEO(現職)。

(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2011年7月7日)