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 建物や製品の設計を支援するソフトウエアを手掛けるオートデスクが、クラウドへの取り組みを加速させている。建築や製造の分野では、エネルギー効率や環境基準への配慮が不可欠な時代になっている。その中で、支援ソフトのクラウド化はどのような意味を持つのか。同社のCMOに聞いた。

(聞き手は福田 崇男=日経コンピュータ



米オートデスク シニア・バイス・プレジデント CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー) クリス・ブラッドショー氏
米オートデスク シニア・バイス・プレジデント CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー) クリス・ブラッドショー氏

設計や分析に必要なソフトウエア製品のクラウド化を進めているが、その狙いは何か?

 当社顧客の多くは、建築関連かゲーム関連の企業だ。彼らは設計業務の中で、シミュレーションや分析といったコンピュータリソースを多く使う作業をする。20~30年前なら大きなメインフレームで処理していた作業だ。

 大規模なハードウエアを必要とするため、中堅中小規模の企業はなかなか手を出せなかった。クラウドサービスとして、設計や分析に必要なツールを提供することで、従来よりも利用しやすくなるはずだ。大手企業にとっても、IT資産を持たずに必要なツールを利用できるという利点がある。

 この5年で、設計や分析、デザインに必要なソフトウエア製品のクラウドサービス化に力を入れてきた。個人的には、あと3年でほとんどの製品をクラウド化できるのではないかと考えている。

設計や分析をする場合、端末の画面上でグラフィカルに図面を表示するなどの機能が必要になる。すべての処理をクラウドに移行するのは難しいのではないか?

 その通りだ。これまでワークステーションやPCで実施していた処理の一部をクラウドに移行している。例えば解析ツールであれば、必要なパラメータをPCからクラウドに送り、分析結果を返信する仕組みだ。建築物を設計する際の環境負荷についても、クラウドで計算する。

 現在、力を入れているのはタブレット端末への対応だ。タブレット端末で作成した図面やデザイン画を参照できるようにしている。

タブレット端末への対応も進めているが、PC向け機能は何が異なるのか?

 まず、想定する利用シーンが異なる。PCを使うのは設計や分析、デザインの際で、場所もオフィス内がほとんどだろう。タブレット端末は、建設現場や顧客のオフィスで、最新の図面を参照するのに使う。

 変更があれば、指で図面をなぞって変更点を指示する。指示した内容は、その図面を共有するすべてのユーザーに通知することができる。情報共有を円滑にするのに、タブレット端末は役立つため、導入する顧客企業は多い。それを支援する機能を提供している。指の操作だけで図面を拡大・縮小できるのもいい。

顧客企業がよく使っているタブレット端末は何か?

 国によって異なる。日本や米国では、iPadとAndroid端末がほぼ同数という印象だ。差があるとしても僅差だろう。中国では圧倒的にAndroid端末を使う企業が多い。

建設業界は、スマートシティ構築に向けた取り組みを加速させている。オートデスクとしてどのような戦略を採るのか?

 スマートシティに関連する分野では、複数の取り組みを進めている。一つは、ビルなど建築物を設計する際のシミュレーション解析技術の提供だ。

 建物をどのように建築するかが、エネルギー効率を左右する。例えばビルの向きを少し変えると、居住空間における冷暖房の使い方やエネルギーコストも変化する。ビルの外壁を変えるだけでも違う。空気の流れも変わる。こういったことを細かくシミュレートするソフトウエアを提供している。

 例えば現在中国の上海で建築中である「上海タワー」の設計にも、当社のソフトウエアが利用された。上海で一番高いタワーを目指すための課題となったのは、風への対処だった。

 強い風に耐えるために建物を強固にすると、使用する鉄筋やコンクリートの量が増えてしまう。そこで、建物をねじれ構造にした。これにより、風が抵抗なく流れるようにしたほか、ビルの冷却にも役立つように設計した。

 ただし、スマートシティともなると規模がまるでちがう。ビルや交通機関、住宅などの集合体だ。一つのツールだけで、エネルギー効率が最適な都市を設計できるわけではない。

 技術開発は進めている。各地のスマートシティ構築プロジェクトに参加し、ノウハウの蓄積にも取り組んでいる。

今回の東日本大震災を受けて、オートデスクが持つ建築物や製品の設計技術について、何か影響はあるのか?

 日本の建築会社のほとんどは、耐震を考慮した建物設計をしっかり実施していると考えている。今回の自身で被災地に大きな影響をもたらしたのは、むしろ津波だ。政府がこういった災害に関する基準や規制を作成している。これらについては変わる可能性があるのではないか。新たらしい基準や規制が整えば、ツールもそれに対応する必要がある。

 設計や分析用のソフトウエアには、設計の善し悪しを判断する機能はない。モデリングやシミュレーションのためのツールだ。

 ただクラウドへの対応を進めたことで、シミュレーションや分析機能が使いやすくなった。大企業並みのIT機器を揃えることなく、最新のツールで設計や分析が可能だ。その点では、今後の復旧や復興へに向けた取り組みの一助になるのではないだろうか。