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欧米流とは経営の感覚が違う

グローバル化を進めるなかで、海外の優秀な人材を採用できていますか。また、外国人の経営陣への登用もあり得ますか。

 昨年は海外で大卒者を400人採用しています。一方、国内では250人です。例えば韓国では60人を採用しましたが、応募者は何千人にも上ります。韓国現地法人の社長は当然韓国人だし、役員も当然韓国人です。韓国企業として活動しているから、優秀な人材を確保できるわけです。

 もちろん本社の経営トップにも、外国人が就いてよいと思いますよ。ただ東レの場合、繊維やフィルム、炭素繊維、水処理、医薬医療など様々な事業領域があり、長年在職していないとすべてを理解できません。例えば炭素繊維は、30年間も累積赤字がありました。続けるか続けないかを経営者が判断するには、炭素繊維の本質や将来性にまで踏み込んで理解しないと不可能です。

 ですから我々の経営の感覚は、欧米流のMBA的な感覚とは違うのです。我々のような経営をやれるのであれば、外国人でも構いません。ただ、四半期決算だけでどうしたこうしたと言う人は、本質的に無理だと思います。

数字だけを見て判断する欧米流経営と一線を画すとなると、経営者にとって情報システムはどれくらい重要なのでしょうか。

日覺 昭廣氏
写真:陶山 勉

 我々にとって重要なシステムとして、生産管理システムがあります。自社開発のITツールなどを徹底的に活用して生産の効率化を図っています。

 例えば繊維ですと、原料を入れて糸として伸ばすまでの一連の生産プロセスが、ずっとつながっています。我々が造るのは、ほとんどがこうした「ラインもの」ですが、その製造現場は制御システムの塊です。ほとんど無人でオペレーションしており、プロセスの効率化、安定化を図っています。これも組み立てメーカーとの違いでしょうね。

 それとグローバル展開していると、全世界の拠点同士で情報交換を瞬時にやれる仕組みが必要になります。例えば、中東での大規模な水処理プラントなどの案件では、エンジニアリング会社などとも、RO膜の性能データを全部共有化しないといけません。セキュリティを担保したうえで、それを実現するために、ITツールが極めて重要になります。

経営判断に必要な情報は現場に

現場の仕組みではなく、経営判断に必要な情報を提供するようなシステムはいかがですか。

日覺 昭廣氏
写真:陶山 勉

 それはどうでしょう。経営判断のためには、やはりきちんとした人に報告してもらわないといけません。データはあくまでもデータにすぎないのであって、計算そのもの、あるいはインプットが正しいかを判断できる人が見ないと、何の役にも立ちません。

 それに経営判断に必要な情報は、すべて現場にあると思っています。営業や製造にしても、すべて現場ですよね。私はずっと大学院でシステムをやっていましたので、情報処理の重要性も分かりますが、やはり大本の現場を見ないと駄目です。

例えば水処理関連では、素材だけではなく周辺分野にも事業を広げていますよね。その際ITが役に立つことはありますか。

 今、大きな課題です。我々の素材を使って最適なオペレーションができるようにするシステムを造ることで、付加価値を出せるのではないかと考えています。例えばスマートグリッドのようなものです。あれは電気の世界の話ですが、水処理関係などでも必要ではないかということで、検討しています。

東レ 代表取締役社長
日覺 昭廣(にっかく・あきひろ)氏
1973年3月に東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。同年4月に東レに入社。2000年6月に工務第2部長、01年6月に理事 エンジニアリング部門長 工務第2部長。02年6月に取締役 エンジニアリング部門長、04年6月に常務取締役に就任。05年6月に常務取締役 水処理事業本部長 エンジニアリング部門長。06 年6 月に専務取締役、07年6月に代表取締役副社長に就任。10年6月に代表取締役社長 COO、11年6月に代表取締役社長 CEO兼COO。1949年1月生まれの62歳。

(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)