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 NECは5月17日に米コンバージスを4億4900万ドルで買収した。コンバージスは「BSS」(ビジネス支援システム)と呼ばれる通信事業者向けシステムを得意とする。BSSは顧客管理や課金管理など通信事業者のビジネスの中核を担う。NECは3月22日にコンバージスの買収を発表していた(関連記事:NECが米BSSベンダーを買収、OSS/BSS統合ソリューションで海外事業拡大 )。

 NECは2008年5月に「OSS」(運用支援システム)ベンダーの米ネットクラッカー・テクノロジーを買収している。OSSはプロビジョニングやライフサイクル管理といった通信サービスに使うハードウエアの運用管理を担当する。NECの山口キャリアサービス事業本部長にBSS事業、OSS事業の戦略を聞いた。

(聞き手は白井 良=日経コミュニケーション


OSSベンダーに加えてBSSベンダーは買収した狙いは。

NEC 執行役員 キャリアサービス事業本部長 山口昌信氏
NEC 執行役員 キャリアサービス事業本部長 山口昌信氏

 グローバルの通信事業者で、「TOMS」(通信運用システム)と呼ばれるOSSとBSSを一体化した製品の需要が伸びている。特に米国のソフトベンダーであるアムドックスを中心とした動きが急激で、3~4年前から業界のトレンドになっている。そこで、我々もOSSとBSSを一体化した製品を用意する。ネットクラッカーもコンバージスも製品力は強い。アムドックスに十分対抗できる製品を提供できる自信を持っている。

 ネットクラッカーとコンバージスの製品は一体化させていく計画だ。製品の統合は遅くとも1年以内、できれば今年度下期に出したい。ただし、どこまで統合するかは段階がある。まずはユーザーインタフェースを統合して、その後データベースも含めて統合させていく。

 TOMSは一つの製品ではなく、いくつかのブロックに分かれた製品だ。一つのプラットフォームで様々な機能を用意する。例えばビリングだけでも十数個ある。通信事業者は必要に応じて機能を導入していく。こうした機能の強化はこれまでも進めてきた。ネットクラッカーは2011年にインドのスーベックスのアクティベーション事業を買収した。これもOSS/BSSの強化の一環だった。

OSSとBSSを一体化するとどのようなメリットがあるのか。

 グローバルの通信事業者は、サービスの“土管化”による収益の悪化が課題になっている。OSS/BSSを一体化すると、新サービス立ち上げ時の初期コストや運用コストを抑えられる。一般に従来型のOSS/BSSでは、新たな通信サービスを開始するたびに個別のシステムを準備する必要があった。

 TOMSではそうした新サービスに柔軟に対応できる。サービスを管理するOSS/BSSを個別に作るのではなく、加入者個々の利用するサービスを把握できるシステムを作るという発想だ。

 通信事業者はネットワークをオールIP化して、音声、データ、固定通信、携帯通信といった各種サービスのコアネットワークを統合している。ネットワークを一体化したのだから、OSS/BSSをサービスごとに作りたくないというのは自然な流れだ。なるべくシームレスに運用したいが、サービスごとに課金体系は異なる。新しいOSS/BSSではそうした違い吸収する。

 このほか、通信事業者に新しいマネタイズの機会を創出できると考えている。例えば、ユーザーがオンデマンドで追加の帯域を購入するサービスが可能だ。ユーザーがスマートフォンを利用していて、契約帯域をオーバーしたとする。そうした場合、OSS側からユーザーに帯域オーバーを通知して、ユーザーは帯域を購入する。購入情報はBSSが受け取る。OSSとBSSを一体化できていると、帯域の追加購入をリアルタイムにOSSに反映できる。従来のシステムでは、OSSとBSSの間でデータを受け渡すのに数日が掛かっていた。

 M2M(マシン・ツー・マシン)の新サービスもあるだろう。何万、何十万という加入者を抱えるサービスになるとTOMSは必須になる。海外では自動車が国をまたいで移動する場合がある。そうしたケースでユーザーごとに最適化したサービスを提案するためにTOMSは役立つ。

そうした製品を提供することはNECにとってどのような意味があるのか。

 ここ最近、通信事業者向けのビジネスは分野ごとに付加価値の高低が極端になっている。NECとしては、成長分野で利益率の高いサービスとマネジメントの分野(NECでは「サービス&マネジメント」と呼称)を伸ばしていきたい。NECグループのキャリアネットワーク事業は現状、サービス&マネジメントの売上比率は全体の15%に過ぎない。これを30%、40%に広げていこうとしている。

 また、世界市場で勝たないといけない。NECグループはサービス分野ではニッチだが強いソリューションを提供できる。OSS/BSSは通信事業者と密接な関係を築きやすいシステムでもある。これを足場にして、キャリアクラウドやスマートフォン系のサービス、M2M、トラフィックマネジメントソリューションなども提供していきたい。

ここ数年、コンバージスはシェアを落とし続けていた。その原因をどのように分析しているのか。また、回復策は。

 レガシー製品から新製品の「Smart Suite」への切り替え時期に、レガシー製品から離れるユーザーが新製品を導入するユーザーよりも多かった。

 ネットクラッカーと統合すると、製品面でも営業面でも補完しあえる。コンバージズのBSS製品はネットクラッカーのリアルタイムOSS製品との親和性が高い。製品の一体化は組織の融合でうまくいくと考えている。ネットクラッカーとコンバージスは優秀な人材を抱えている。また、狭い業界ということもあり互いをよく知っている。

 営業面では、NEC、ネットクラッカー、コンバージスの合計でおよそ250社の通信事業者と取引している。互いに顧客の重なりは少ない。ネットクラッカーのユーザーにコンバージスを、コンバージスのユーザーにネットクラッカーを売り込んでいく。製品同様、組織を融合すればソリューション営業の体制はすぐに作れる。