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 積極的なM&A(合併・買収)を繰り返し、今や35カ国・地域に海外拠点を持つに至ったNTTデータ。2015年度までの新たな中期経営計画で「世界トップ5」入りを狙うことを宣言し、国内の公共・金融に偏ったビジネス構造を大きく変えようとしている。6月20日に社長に就任した岩本敏男氏は「リマーケティング」も推進すると言う。その事業戦略を聞いた。

2015年度までの4カ年の中期経営計画で、世界のトップ5入りを目指すとしていますが、その真の狙いをまず聞かせてください。

1976年3月に東京大学工学部卒業、同年4月に日本電信電話公社(現NTT)に入社。91年4月にNTTデータ通信(現NTTデータ)金融システム事業本部担当部長、94年8月に金融システム事業本部企画部長、98年10月に人事部部長、99年9月に金融システム事業本部第一金融システム事業部長、2004年5月に決済ソリューション事業本部長。同年6月に取締役に就任。05年6月に取締役執行役員金融ビジネス事業本部長。09年6月に代表取締役副社長執行役員に就任。12年6月より現職。1953年1月生まれの59歳。(写真:栗原 克己)

 今やグローバルでの売り上げは2000億円を超え、35カ国・地域に拠点を持つに至りました。ようやくグローバル化の最初のステージにたどり着いたと言えます。

 グローバル化に取り組んできたのは、二つの理由からです。一つは日本経済の伸びが期待できないこと。もう一つは我々自身の課題です。公共や金融に比べ、他の産業、いわゆる法人分野では売り上げが市場規模に見合ったものになっておらず、なかなか伸ばすこともできていませんでした。

 この法人分野では、特に製造業でグローバル化が急進展しつつある。その動きをサポートできれば、顧客のためになるだけでなく、我々のシェアを上げることにもなり得ます。そこで、まず世界で「エリア」を獲得すべく、M&Aを推進したわけです。

 そして、次のステージに進むために、まず買収した企業も含めグローバルでNTTデータのブランドに統一しました。さらに、NTTデータの傘下に入った人たちにも分かりやすい目標として、「Global TOP5」を掲げたのです。我々の売上高は1兆2511億円ですが、トップ5に入るには2000億円ぐらい増やさなければなりません。自然体で達成できる目標ではありませんから、これからもM&Aは重要な戦略です。

オフショア依存は長続きしない

M&Aでグローバルでの売り上げを積み上げたとはいえ、現状では、性格の異なるIT企業の集合体でしかありません。ビジネスモデルをどう変えていくのですか。

 グッドクエスチョンです。買収した企業は国ごとに考え方も違うし、生い立ちも違う。各社とも中堅のソフト会社であって、通信関連が強かったり、製造業向けが強かったりする。そうした企業をとりあえず束ねたのが現段階です。

 今、目指しているのは、ソリューションを「Global One Team」で提供することです。例えば産業分野ごとに、業界トレンドや競合状況などを分析することで、重要な顧客にソリューションをグローバル横断で提供するわけです。これにより、自動車や化学薬品など各産業の上位企業にアプローチしていきたいと考えています。

ビジネスモデルの最終形はやはりグローバル・デリバリー・モデルですか。

 グローバル・デリバリー・モデルは、インドや中国などで安く作ることと、顧客とトップリレーションを持つ営業やコンサルタントとの組み合わせです。当分有効でしょうけど、長くは続かないと思います。我々も中国でのオフショア開発に取り組んでいますが、すごく賃金が上がっており、オフショア拠点としては5年もつか、10年もつかといった状況です。

 ですから、将来に備えなければなりません。IBMと違いハードを出すわけではないし、SAPやオラクルのようにパッケージを持っているわけでもありませんので、違った観点で武器を用意していきたいと考えています。

その武器とは何ですか。例えば、アプリケーション開発・運用の自動化でしょうか。

 ほとんど正解です。世界のIT企業が同じことを考えているわけですが、私もそうすべきだと強く思っています。日本企業は今でこそ韓国、台湾の企業に押されているとはいえ、1960年代から繊維、造船、鉄鋼、電化製品、そして半導体と品目を変えつつ、生産技術で世界をリードしてきました。

 同じことがソフトにおいてもできるはずです。現状では、我々の業界は労働集約型の産業であり、労働集約型産業の宿命としてヒエラルキー構造が出来上がっています。その結果、多重下請けなどの問題が起こったり、3K職場などと言われたりしています。

 製造業も昔は労働集約型でしたが、労働集約的なものは海外に出て行き、国内にはほとんど残っていません。今や国内では、生産技術を高度化することで知識集約型産業に変貌しています。デザインなどの上流工程のほうが強くなっていますよね。IT産業でも必ず同じような動きになるはずです。