開始から1年で、世界中のユーザー数が5000万まで膨れ上がった、スマートフォン向け無料電話/メッセージアプリ「LINE」。その躍進ぶりからは、携帯電話事業者も目をそらせずにいる。さらに外部のサービスとの連携など、事業はますます拡大する方向にある。LINEにかける思いと戦略を、森川社長に聞いた。
LINEのユーザー数がサービス開始から1年強で5000万を突破するなど、ビジネスの成長、拡大の勢いがすさまじい。

この伸び方は、我々にとっても予想を大幅に上回る結果だ。うまくニーズに応えられた。NHN Japanはもともと、オンラインゲームのハンゲームと検索サービスのネイバーが合併してできた会社。ゲームはソーシャルゲームのはしりで、検索は「人が知りたい情報は人と人のコミュニケーションの中にある」という思いから始まったソーシャルサーチだ。どちらも、事業の軸と考えているのはコミュニケーションで、LINEもその流れで生まれた。
最初に考えたのは、検索に結びつきやすいコミュニケーションサービスを提供することだった。例えばQ&Aや「まとめ」(キュレーション)のコミュニティーだ。ただ、こうしたサービスは、コンテンツを作る人に幅広く参加してもらうのは難しい。もっと人と人がつながるためのハードルが低いものが欲しかった。
それから試行錯誤を繰り返し、たどり着いたのが、市場が急速に立ち上がりつつあったスマートフォンにフォーカスしたサービス。スマートフォンで使いやすいサービスは何か、突き詰めていったら「SMSに近いサービス」、つまりLINEになった。
どうして、これほど急激に伸びたと見ているか。
まず、スマートフォンの市場そのものが、予想を大きく上回るスピードで拡大している。そしてLINEを、従来のサービスやアプリをスマートフォン用に変更するのではなく、あくまでもスマートフォンをメインターゲットとして意識した、振り切ったサービスにできたことが大きい。
もう一つ、最初から英語版を提供し、海外でもユーザーが広がったことが強く影響しているだろう。5000万のうち3000万は海外のユーザーだ。
他社サービスとLINEを連携させる「LINE Channel」も始めた。
単なるコミュニケーションだけでは、大きなビジネスにつなげていくのは難しい。だから、ゲーム、助け合い、情報共有といった広がりを持たせたい。そのための試みの一つが、他社にLINEをプラットフォームとして提供するLINE Channelだ。
とにかく、コミュニケーションが楽しくなるもの、ユーザー同士の会話が弾むきっかけになるものを提供したい。単なる気分転換や暇つぶしの域を越え、どうしたらユーザーのコミュニケーションの質、価値を高められるか、チャレンジしていく。
プラットフォーム事業の収益性は。
LINE Channelに関しては、やってみないと分からない側面がある。もちろん、KDDIとの「LINE for auスマートパス」など、既に始めているサービスでは、ある程度の収益は見込める。
ただ、今の規模のままでしっかり黒字を出そうとは思っていない。コミュニティーと連動して収益を高めていくのは、難易度が高い。何かのきっかけでユーザーが離れてしまって立ち行かなくなる危険性がある。だからLINEに関しては、あせらずに、引き続きユーザーを集めるほうに集中したいと考えている。北米、中国など、まだまだこれから拡大していきたい市場があるし、もっと広げられると思っている。2012年内には1億ユーザーを達成したい。