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問題解決能力、創造性、協調性を伸ばしたい

 彼らがScratchを開発して提供している理由。それは、プログラミングそのものをゴールにしているわけではありません。プログラミングを通じて、例えば、問題解決能力を高める、創造的な表現ができる、協調的に作業ができる、こうした点を伸ばすためにScratchを提供しています。

 ライフロング・キンダーガーデン・グループでは、こうした能力はごく一部の優秀な人だけが持つ能力ではなく、すべての人が普遍的に持つべき能力であると考えています。そこでベネッセでも、Scratchを日本で広めつつ、Scratchのベースになっている考え方を取り入れた新しい学びを日本、そして世界で展開できるよう、MITメディアラボとコラボレーションしているわけです。

 MITメディアラボとのコラボは今年で3年目になります。まず1年目は、MITメディアラボのことをよく知るところから始めました。ベネッセから何名かMITメディアラボに数日間訪問して研究内容を把握したり、逆にMITメディアラボから研究員が来日したときにワークショップや講演会を実施したりしました。

 2年目は、MITメディアラボとのコラボの成果を、顧客と共有する取り組みを始めました。例えば、進研ゼミ中学講座ではメンバーにScratchを体験してもらい、その上で中学生向けの学びの場を検討しました。具体的には、中学生がScratchを使って、自分で作った作品をお互いに見せあったり、コメントをつけあったりしながら、「プログラミングを通じた問題解決」を気軽に体験してもらう企画です。これは昨年9月から1カ月間、ベネッセ版Scratchを中学講座のサイトで公開し、興味を持った中学生に使ってもらいました。

 この取り組みでは、Scratchの簡単な解説(図1)を用意したりしましたが、中学生にとっては結構ハードルが高かったかなと考えています。短期間にもかかわらず、多くの中学生に試してもらえましたが(図2)、実際に作品を作ることは結構大変なことが分かりました。

図1●サイト内に用意したScratchの使い方のページ
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図2●中学生が作成した作品例
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 こうした過去の取り組みを踏まえて、3年目となる今年は、引き続き通信教育による「プログラミング教育」を考える基礎研究的な位置づけで、次のようなアプローチで活動しています。最初はパソコンやプログラミングに興味がある中学生に試してもらい、さまざまな作品を作ってもらう。この取り組みはもう始めています。こうして、パソコンの得意な中学生から作品づくりになじんでもらい、それが軌道に乗る夏休みごろには、その周りの中学生も加われる仕組みを用意することで、より多くの中学生に参加してもらおうとしています。

 また、これらのほかにも、MITメディアラボと協力して特別授業やワークショップなどを適時実施しています。子ども向けの実験教室である「サイエンス教室」でもScratchを使った取り組みを行います。今年の7月15日に吉祥寺教室にて実施する予定です(Benesse サイエンス教室)。

加えて、三鷹市の小学校での特別授業や(関連記事1)、Scratchのイベント(関連記事2)に関与しているわけですね。

 そうです。前者は、Scratchの開発を率いるレズニック教授に日本の教育現場を見てもらうという狙いがありました。今後、レズニック教授と新しい学びについてディスカッションをするときに、その前提となる日本の教育現場への理解が重要だと考えたからです。

 Scratchのイベント「Scratch Day 2013 in Tokyo」では、場所(ベネッセコーポレーション東京本部内のスペース)の提供をはじめ、主催者(Scratch Day 2013 in Tokyo 実行委員会)にご協力しました。ここでは、新しい学びに対するさまざまな取り組みについて、ベネッセの社員にじかに見てもらいたいという狙いがありました。イベントを下支えしたいという思いもありますが、それと同時に、社員の気づきの場を設けたかったのです。社員が直接、子どもたちがプログラミングをする様子を見て、「子どもたちはこういうふうに取り組むんだ」とか、「こういう新しい学びが今、考えられているんだ」ということを肌で感じてもらえればと思いました。

新しい学びについて、今後はどのように取り組む考えですか。

 私たちも、MITメディアラボのメンバーも、プログラミングを学ぶことがメインではないと認識しています。学ぶのはあくまで、これからの社会でしっかり生きていくためのスキル。そのためのサービスを展開していきたい、そのツールとしてプログラミングがあるかもしれない、と考えています。

 なぜ、プログラミングなのか。それは、プログラミングの神髄の部分は、誰もが持っているべき能力ではないかと考えるからです。プログラミングを含む能力として、米カーネギーメロン大学のジャネット・ウィング教授(当時)が、読み書き算術と同様にすべての人が身につける能力として「コンピュテーショナル・シンキング(リンク先はそのPDFファイル)」を提唱しています。