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写真●インタビューに答える米PTCのロブ・グレムリー製品開発&コーポレートマーケティング部門上級副社長
写真●インタビューに答える米PTCのロブ・グレムリー製品開発&コーポレートマーケティング部門上級副社長
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 CAD(コンピュータによる設計)やPLM(製品ライフサイクル管理)ソフトで存在感を示す米PTCが今、SLM(サービスライフサイクル管理)に力を入れている。SLMによって製造業の設計から開発、販売、アフターサービスという「バリューチェン」全体に関わり、第3の成長の波を捉えようとしている。その鍵を握るのがビッグデータ分析だ。製造業の「サービス化」にまつわる動きを製品開発&コーポレートマーケティング部門のロブ・グレムリー上級副社長に聞いた。

(聞き手は山端 宏実=日経情報ストラテジー

ここにきてPTCは「サービス化」に注力している。

 実はこの半年ほど、製造業の将来ビジョンについて社内で議論してきた。そこで一番参考になるのがお客様の声だ。とはいえ、お客様の声をビジョンに反映するだけでは十分ではない。やはり、業界を引っ張っていく先見性を持たないといけない。その1つが「サービス化」だ。

 英コンサルティング会社であるオックスフォード・エコノミクスに調査を依頼し、製造業の経営幹部300人から話を聞いた。そこでも我々のビジョンと一致する結果が出ている(関連記事:今後3年で3分の2が業務プロセスを変革、PTCのイベントで英コンサルが発表)。

 今までサービスというと、製造業ではあまり重視されていなかった領域といえる。サービスは利益が出るか出ないかの分岐点という企業が多かった。それが大きく変わってきている。そこを強化するために、お客様はソリューション・プロバイダーを探している。

 製造業がサービスの質を高めていくうえで重視するのが「初回修理完了率」だ。これを高めるには、テクニシャン(サービスの担当者)が修理に出向く時に、必要な部品と知識をきちんと持ち合わせていないといけない。例えば、E-BOM(設計部品表)からサービスBOMを作り出し、テクニシャンが品番にひも付いた作業要領書をiPadですぐに見られる状況になれば、メリットは大きい。

 PTCにとって最初の成長の波がCAD、第2がPLMだった。我々はSLMが第3の成長の波をもたらすと考えている。業界としても潜在需要は大きい。

 しかし、今のソリューションを見てみると、個別に分断されている。色々なところでスポット的にソリューションが提供されているというのが現状だ。お客様としては業界のリーダーを求めている。

SLMが第3の成長の波をもたらすとすると、ビッグデータ分析が鍵を握るのでは。

 その通り。SLMのメリットや今後のステップを考えた時、まずはソフトウエアをネットにつなげ、そこから情報を収集する必要がある。その情報を踏まえてサービスを提供し、その結果をエンジニアリングに戻すというサイクルを回すことが重要になる。

 そうすれば、例えば掘削機でオイルの温度が下がっているという兆候を察知し、予防メンテナンスに生かせる。お客様にそうした情報をいち早く伝えて、「こういう状態なので、早めの点検・修理をお勧めします」というアドバイスができるわけだ。

サービス化が進めば、製造業のビジネスモデルは根底から変わるのでは。

 そうなるだろう。実際に「プロダクト・アズ・ア・サービス」を実現している企業もある。一例が大規模ビルの空調システムだ。従来であれば、ビルの所有者は空調システムを購入する。ダクトといった付帯設備が故障すれば、テクニシャンにメンテナンスを依頼しなければいけなかった。

 しかし、顧客が買いたいのは「空調の利いた状態」、つまり室温を適正に保った状態だ。そこで発生する問題はサービス提供者が解決するというのが新しいビジネスモデルといえる。

 空調システムだけではない。エレベーターであれば昇降回数、病院のMRI(磁気共鳴画像装置)なら使用回数、ジェットエンジンなら航空機を飛ばした時間でチャージするというように、お客様とメーカーの関係は様変わりしている。

 この形だと、メーカーがかなりのリスクを負わないといけない。リスクは高いが、その分の見返りも大きいといえるだろう。こうしたビジネスを展開できるのも、製品のなかにソフトが組み込まれていて、それがネットに接続されて、市場に出回っている製品の状態を監視できるからこそだ。

現状のSLMはアフターサービス向けという印象がある。

 私はSLMの適用範囲はもっと広いと思っている。例えば、アプリケーションをデリバリーしたり、テクニシャンのスケジュールを管理したりといったこともSLMでできると考えている。とはいえ、まだ改善の余地は大きい。「コネクティビティー(接続性)」の領域では、買収なども考えている。ビッグデータ分析についても、社内で有機的に開発をするのがいいのか、それともパートナーと連携していくべきかを検討していく必要がある。