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 NHKが放送する番組の美術制作を手がけるNHKアートは,ICタグを使って撮影用セットやセットを構成する部品を管理するシステムを構築した。セットを倉庫からスタジオへ配送する際やスタジオから倉庫へ返却する際に,セットを載せた台車に取り付けたICタグを読み取って資産管理システムに記録する(図1)。これにより,セットの正確な保管場所や配送先が管理できるので,セットを探す時間が短縮できる。また,セットの配送漏れをなくす効果や,どのセットが何回使われたかというデータを蓄積して分析できる利点もある。利用するICタグの周波数は13.56MHz。枚数は3000枚である。トランスコスモスがシステム構築を担当した。

図1●台車に取り付けたICタグでセットの入出庫を管理する
図1●台車に取り付けたICタグでセットの入出庫を管理する

 システム開発は2004年4月から始めた。読み取りの手間がかからないことや汚れに強いことから,バーコードではなくICタグを使うことにすんなり決まった。

 だが,セットの入出庫を間違いなく捕捉する仕組み作りに苦労した。ICタグを在庫管理に利用する場合,一般的に倉庫の出入り口にゲート型のリーダーを設置し,通過するICタグを読み取って管理することが多い。ただし,「ゲート型はコストが高くて使えなかった」(NHKアート 経営企画室総合企画担当部長の山中一郎氏)。一方,ハンディ型リーダーは,現場で持ち運ぶには大きすぎると考えた。

 解決策は,PDAとPDA装着型のリーダーを組み合わせる方法だった。PDAには「Oracle Lite」を載せ,出庫依頼データを管理する。当日の出庫依頼データは,あらかじめクライアントからOracle Liteにダウンロードしておけるので,配送漏れのチェックもできる。

 ただし,PDAのデータを資産管理システムに送信するプロセスには工夫が必要だった。PDAで処理したデータは,PDAをクライアントに接続して資産管理システムへ送信しない限り反映されない。しかし,「年末特番の制作時期など忙しいときは,PDAをクライアントまで持っていく暇がない」(山中氏)ため,出庫されたかどうかシステムで把握できないのだ。

 苦肉の策として,ICタグに出庫データの一部を持たせることにした。具体的には,台車の管理番号,配送元,配送先,出庫時間をICタグに書き込む。入庫する際には,Oracle Lite内の出庫依頼データとICタグから読み取った台車の管理番号を突き合わせて検品するとともに,配送元や出庫時間といったデータも読み取って資産管理システムへ反映する。