PR

新北九州空港と羽田空港を結ぶ定期便を運行するスターフライヤー。2006年3月の新北九州空港開港に併せ,2005年10月からわずか5カ月という短期間でネットワーク環境を整備した。FTTH(fiber to the home)と広域イーサネットを適材適所で活用した“メリハリ・ネットワーク”を実現した。

写真1●ネットワークのアウトソーシングを推進したスターフライヤーの武藤康史・常務取締役営業本部長(右)と経営企画部システム企画グループの廣池昭満氏(左)
写真1●ネットワークのアウトソーシングを推進したスターフライヤーの武藤康史・常務取締役営業本部長(右)と経営企画部システム企画グループの廣池昭満氏(左)

 黒い機体を世界で初めて旅客便に採用したスターフライヤーは,2006年3月に就航したばかりの新しい航空会社。航空業界と言えば大手航空会社の華やかなイメージが強いが,同社はスタートしたてのベンチャー企業である。「自前でネットワークの部隊を抱えていけるほど大きな会社ではない」(スターフライヤーの武藤康史・常務取締役営業本部長,写真1)。

 そこで同社はネットワークの構築や運用・管理をソフトバンクテレコム(旧日本テレコム)にアウトソーシングした。ソフトバンクテレコムは北九州に多くの顧客を抱えており,スターフライヤーもその実績を高く評価していた。だが,それだけで採用したわけではない。他の通信事業者以上にソフトバンクテレコムが柔軟な提案をしてくれたためだという。

 スターフライヤーの経営企画部システム企画グループの廣池昭満氏(写真1)は,「(ソフトバンクテレコムは)最初からBフレッツを使った方が安いのではという提案もしてくるなど,がんじがらめに同社のサービスに押し込めなかった」と語る。その結果,スターフライヤーは用途に応じて最適なサービスを選択。1事業者へのアウトソーシングでありながらも,“マルチキャリア”のネットワーク導入に成功した(図1)。

図1●スターフライヤーのネットワーク構成
図1●スターフライヤーのネットワーク構成
 スターフライヤーはソフトバンクテレコムにネットワークの構築と運用・監視を委託したが,ネットワークは同社だけでなく,東西NTTのサービスも採用したマルチキャリア構成となっている。将来的にはデータ系と音声系のネットワークの統合も検討している。
[画像のクリックで拡大表示]

 アウトソーシングによって,コスト削減効果も得られた。廣池氏は「自社運用の場合は運用要員を4人程度抱えてシフト勤務する必要がある。その分の人件費とアウトソーシングの委託費を比較すると,コストを4分の1程度に抑えることができた」と説明する。

会計ソフトがWAN構築に影響

 人命を預かる航空会社は,信頼性や安定感をひときわ重視する。スターフライヤーも例外ではないが,今回のネットワーク構築に際してはしゃくし定規に判断せず,求められる信頼性に応じてメリハリを付け,適材適所で回線サービスを使い分けた。

 例えば,4拠点の中で本社だけはNTT西日本の「フレッツ・グループ」を使って閉域網を構築した。他拠点ではソフトバンクテレコムの広域イーサネット・サービス「ULTINA Wide Ethernet」を使い,より信頼性の高い閉域網を構築している。その理由は(1)本社と空港拠点の業務の違い,(2)アクセス回線のコスト,を考慮したためだ。

 スターフライヤーの就航は2006年だが設立は2002年。システムの整備は就航前から進めていた。その過程で本社にクライアント/サーバー型の会計業務パッケージを導入。このソフトはLAN環境では使用に何の問題もなかったが,データ・センターにサーバーを設置してWANを介して利用すると極端にレスポンスが遅くなった。廣池氏がソフト・ベンダーに問い合わせると,「7Mから8Mビット/秒のスループットが必要」との回答。だが「コスト的に本社にそれだけのスループットに対応できる回線を導入する余裕はなかった」(廣池氏)。

 そこで同社は,全拠点同一の回線サービスを入れるつもりだった当初の発想を転換。機体の整備支援システムなどを使う空港業務とは異なり,本社はスタッフ部門が中心。そのため,「本社で通信障害が起こったとしても運航業務への影響はない」(廣池氏)と割り切った。回線障害時の復旧時間が保証されないことなどは承知の上で,最大100Mビット/秒の「Bフレッツ ベーシックタイプ」を導入し,「フレッツ・グループ」を採用した。

 一方,本社以外の拠点ではWide Ethernetを導入した。空港業務はシフト勤務で24時間365日稼働する。ネットワークの障害で運航自体が止まるわけではないものの,運航業務に影響を与える恐れがある。そこで高信頼性を求めた結果,SLAによって網内の月間稼働率99.9%以上を基準値とし,帯域保証の付くアクセス回線を選べるWide Ethernetが最適と判断した。

IP電話は内線と発信だけで使う

 スターフライヤーは今回のネットワーク構築を機に,内線電話もIP化した(図2)。既に本社は就航以前にサクサのビジネスフォンを導入済みで,一部で内線電話システムが稼働していた。そこで,既存の環境を生かしつつ拠点間をVoIP化するために,ソリトンシステムズのVoIPゲートウエイを導入。ソフトバンクテレコムの050番号を割り当てるIP電話サービス「IP-One IPフォンネット」で接続した。

図2●スターフライヤーのIP電話環境
図2●スターフライヤーのIP電話環境
 拠点間をIP化することで内線電話コストを約3割削減できたという。IP電話サービスはソフトバンクテレコムの「IP-One IPフォンネット」を利用した。
[画像のクリックで拡大表示]

 とはいえ,スターフライヤーはIP電話の障害時でも運航業務を継続しなければならない。現状ではIP電話よりも信頼性が高い0AB~J番号の加入電話の併用が不可欠である。そこで,社員の名刺の電話番号は0AB~J番号に統一。着信は加入電話で受けるようにした。

 同社は今回のネットワーク構築に当たり,データと音声の統合も視野に入れていた。だがネットワーク構築期間が5カ月間と短かく,予算も限られたため「音声とデータを混在させるためのチューニング作業までは手が回らなかった」(ソフトバンクテレコム)。まずは安定稼働を優先。音声とデータの統合は今後の課題とした。

写真2 機内の座席に設けられたコンセント
写真2 機内の座席に設けられたコンセント
 全座席にコンセントが備え付けられており,誰でも利用できる。ビジネスパーソンが機内でパソコンを使ったり,携帯電話機を充電する用途などを想定している。

 さらに将来は,顧客に対してもネットワーク・サービスで他社と差別化する計画を持つ。同社の航空機はノート・パソコンなどの使用を考慮して全座席にコンセントが取り付けられている(写真2)。武藤常務は「(同社が採用する航空機メーカーの)仏エアバス次第だが,機内でのインターネット接続もぜひ実現させたい」と将来像を語った。