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全薬工業は帯域不足解消とコスト削減を目的に,基幹系ネットワークを刷新した。重要拠点では広域イーサネット,中小拠点ではエントリーVPNを用いたメリハリ・ネットワークを構築。万全のバックアップ体制を準備し,止まると致命的という基幹系をエントリーVPN上に移行した。

 風邪薬の「ジキニン」などで知られる全薬工業は,2006年4月に基幹系ネットワークを刷新した。中小規模拠点の基幹系ネットワークとして残っていたフレーム・リレー*網を廃止し,メールやWebなどの情報系ネットワークとして利用するKDDIのエントリーVPN*「KDDI IP-VPN ブロードバンドValue パック」に統合。それに伴いアクセス回線も,一部を除いてADSLから最大100Mビット/秒のBフレッツ*に変更した(図1)。

図1 基幹系ネットワークの帯域不足の解消とコスト削減を目指してネットワークを刷新
営業/物流系システムのトラフィック量が増え,フレーム・リレーを用いて構築していた基幹系の帯域不足が深刻化していた。そこで,基幹系を情報系のエントリーVPNに統合することにした。

 中小規模拠点では基幹系,情報系ともにエントリーVPNとBフレッツを使うようにした一方で,高い信頼性が求められる研究所などの重要拠点では以前から利用している広域イーサネットとイーサネット専用線を使う。つまり全薬工業のネットワークは,基幹系と情報系を統合したシンプルなメリハリ・ネットワーク*へと生まれ変わった(図2)。

図2 拠点ごとにメリハリを付けて基幹系ネットワークを再構成
これまでフレーム・リレーを利用して構築していた中小拠点の基幹系ネットワークを,エントリーVPN網に統合。アクセス回線にはBフレッツを採用した。ただし本社とエントリーVPNを結ぶ回線もBフレッツという弱点が残る。このため9月中旬以降は,エントリーVPNと広域イーサネットを相互接続できるKDDIの「フリーゲートウェイ」を利用する予定だ。
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「基幹系のトラフィックが2倍に」

 ネットワーク刷新のきっかけについて,同社の経営企画室IT室の山田達男課長は,「フレーム・リレーで構成していた基幹系ネットワークのトラフィックが増え,帯域が足りなくなってきたから」と語る(写真1)。

写真1 全薬工業の経営企画室IT室の山田達男課長

 同社では,数年前から基幹系ネットワークで扱う営業/物流システムの重要度が急速に高まってきた。量販店などへ卸す商品の品目が飛躍的に増え,その情報を各拠点でやり取りする頻度が増大したからである。「3年前に比べて基幹系のトラフィックは約2倍に達している」(山田課長)。

 また,拠点間で定期的にデータをバックアップしており,「数十Mバイトのデータがネットワークを流れることも少なくない」(山田課長)。帯域が128kビット/秒のフレーム・リレー網では,既に限界に達していた。

 大規模拠点では,一足先に帯域不足の問題は解消していた。2004年ごろにフレーム・リレーから旧パワードコムの広域イーサネット「Powered Ethernet」(現在はKDDIの「KDDI Powered Ethernet」)へと移行したからだ。しかし中小規模拠点では,依然として低速なフレーム・リレー網が残ったままだった。

 さらに「古くなったフレーム・リレーを廃してネットワーク費用を抑えたい」(山田課長)との思惑もあった。そこで中小規模拠点の基幹系ネットワークを,情報系ネットワークとして利用していたエントリーVPNに統合。情報系はアクセス回線にADSLを使ったネットワークだったが,これをBフレッツに変更し,情報系と基幹系を合わせて使うことを決断した。

 ただし中小規模拠点とはいえ,重要度が増している基幹系ネットワークのアクセス回線をBフレッツで構築することについては,やはり不安があった。「30分でも営業/物流システムが止まると,業務に致命的な影響が出る」(山田課長)からだ。「特にBフレッツは,利用者に知らせることなく工事によるサービス停止がある」(山田課長)。その点を最も懸念していた。

定期的にpingを打ち回線を監視

 そこで定期的にネットワークにping*を打ち,反応が無ければバックアップのISDN回線に切り替える仕組みを独自に用意した。

 ネットワークを切り替えて3カ月ほどが過ぎたが,「小さなトラブルが2回程度あったくらい」(山田課長)。基幹系がストップするなどの大きなトラブルはないという。山田課長は「ネットワーク・コストを全体で3~4割削減し,帯域不足も解消した」と満足げな表情を浮かべる。

 アクセス回線を高速化したことは,情報系アプリケーションにも恩恵をもたらした。各拠点で利用中のテレビ会議が使いやすくなったのだ。「アクセス回線がADSLのときは画像がコマ落ちすることもあった。しかしBフレッツにしてからは,スムーズに会議できるようになった」(山田課長)。

ゲートウエイでバックアップを強化

 もっとも,このような体制ですべての不安を解消したわけではない。中小拠点はともかく,本社に引き込んだBフレッツの信頼性に関する不安は払拭できていないからだ。同社は料金面のメリットから,営業/物流系システムが置いてある本社とエントリーVPNを結ぶアクセス回線も思い切ってBフレッツにした(写真2)。しかしここは,営業/物流システムと各拠点がやり取りする際に必ず通る経路。「この回線が落ちたら中小規模向けの基幹系ネットワークはすべて止まってしまう」(山田課長)。

写真2 本社に設置した営業/物流システム(左)と各網に接続するネットワーク機器群(右)

 ただ幸いなことに,そのネックをコストをかけずに解消できる手段が間もなく登場する。KDDI Powered EthernetとKDDI IP-VPNを無料で相互接続するサービス「フリーゲートウェイ」が,9月中旬からスタートする予定だからだ。

 同サービスを利用すれば,本社のアクセス回線のBフレッツが途切れても,ゲートウエイを経由して広域イーサネット側から本社の営業/物流システムに接続できるようになる。山田課長は「広域イーサネットはパワードコムの時代に使い始めたもので,当時はKDDIとの合併の話はまだなかった。合併のメリットがこんなところに現れるとは思いもよらなかった」とほくそ笑む。

今後はモバイル環境に検疫を導入

写真3 営業担当者(MR)向けノート・パソコンのセキュリティ対策
15分間操作しなければロックがかかる仕組みなどを用意。現在は,検疫ネットワークの導入を検討している。

 山田課長は残されたネットワーク上の課題として,モバイル環境の強化を挙げる。同社は営業担当者(MR*)向けに約250台のノート・パソコンを用意するなど,以前からモバイル環境の充実を図っている(写真3)。今後はこのモバイルに,検疫ネットワークと高速データ通信サービスの導入を検討しているという。

 セキュリティ対策としては,クライアント監視ソフトや15分間操作しなければパソコンをロックする仕組み,一定期間がたつと強制的にパスワードを変更するポリシーなどを既に導入済み。しかし「2重3重のセキュリティは必須」(山田課長)との考えから,検疫ネットワークも採用する方針だ。

 データ通信に関しては,「MRが外出先で使うシステムの帯域がどんどん増えている」(山田課長)ことが大きな悩み。コストと相談しながら,現在利用しているPHSから第3世代携帯電話へ移行したいとしている。