PR

「プロギア」ブランドのゴルフ用品のプロモーションを担当する横浜ゴムの入道晃司・広報部宣伝グループ主任。写真右は、クラブ選びの際の新たな基準「グリップスピード」を測定する装置
[画像のクリックで拡大表示]

 「PRGR(プロギア)」ブランドのゴルフ用品で知られる横浜ゴムは、2月10日に発売するドライバーの新製品「プロギアT3 502 銀」で、同社史上最多の販売数となる年間10万本を狙う。プロギアT3シリーズのドライバーは、これで4タイプ目。今回の販売目標達成の大きな鍵は、ウェブ2.0時代を見据えた新たなプロモーション戦略が握る。

 横浜ゴムが主力のタイヤ事業で培った技術力を武器にゴルフ用品市場に参入したのは1984年。プロギアのプロモーション責任者である入道晃司・広報部宣伝グループ主任は、「ドライバーは3万~4万本でヒットと言われ、当社最大のヒットは2003年発売の『プロギアDUO(デュオ)』の10万本だった。ドライバー市場は縮小傾向にあるが、T3銀でも10万本を狙う」と力強い。

 プロギアT3ドライバーの第1弾は、2005年12月に市場に投入した「T3ブラック」である。2006年2月に「T3ブルー」を、8月に「T3レッド」を追加。今回のT3銀では、発売中の3タイプのT3ドライバーで得られたプロモーション戦略の成功と失敗の経験を踏まえ、過去最大の販売数を狙う。
 
 「実は、上級者をメインターゲットにしたT3ブラックはともかく、ボリューム層を狙ったT3ブルーが苦戦。これは過去二十数年のプロモーション活動の結果、『プロギアは上級者向け』というイメージが強くなりすぎたせいだろう。ところが、『赤鬼』という愛称を付け、『飛びに徹底的にこだわるゴルファー向け』という宣伝文句にしたら、T3レッドが予想外に売れた。ターゲットを絞る明快なメッセージを発信できれば、T3銀もボリューム層に訴求できると分かった」(入道主任)

 横浜ゴムは、プロギアT3銀を「100を切りたいアベレージゴルファーでも驚くほど簡単にボールをとらえ、安定したショットで飛距離を伸ばせるドライバー」という宣伝文句で売り出すことにしている。

ゴルフ愛好家もウェブ2.0時代へ

 入道主任は「10万本という目標は不可能な数値ではない」と言い切る。その論拠は、ターゲットを絞り込んだ宣伝文句だけにあるのではない。横浜ゴムはT3ドライバーを発売し始めた直後の2006年2月から、「グリップスピード」という新たな基準を市場に投げかけている。これがゴルフ愛好家に受け入れられれば、インターネットを介して口コミが加速度的に広がる可能性があると見ているのだ。

 今日では、T3ドライバーのように1本数万円以上もする高機能ドライバーを購入する顧客は、スポーツ用品店などに設置された試打コーナーでヘッドスピードを測定してから、自分に適した商品を購入するのが一般的である。ヘッドスピードは、クラブがボールに当たる直前のヘッドの速度のことだ。

 これに対して、グリップスピードというのはインパクト直前のグリップエンドの速度。横浜ゴムはT3ドライバーの発売に合わせ、ヘッドスピードとグリップスピードの両方を測定できる装置を開発。T3ドライバーでは異なるタイプのヘッドとシャフトを数種類ずつ用意し、利用者のスイングタイプに適した組み合わせを提案し始めたのである。

 例えば、インパクトの直前にリストを返しながら急速にヘッドを加速させるタイプのスイングをする人は、グリップが平行移動する距離が短いため、グリップスピードは遅くなる。こうした「リストターンタイプ」の人には、手元から中央部分までの剛性を高くして全体のしなりを抑えつつ、先端部分だけしなりやすくしたシャフトを薦める。

 横浜ゴムは、ヘッドスピードとグリップスピードを測定できる装置を20万円程度の低コストで開発することに成功。全国の約200の小売店に常設している。さらに、ゴルフ場やゴルフ練習場、測定装置を置いてない小売店などで期間限定の試打会を開く専門チームを作り、地道な試打会を重ねている。専門チームはゴルフのインストラクター資格を持つメンバーで構成し、技術的なアドバイスもできる。

 入道主任は、「ゴルフをする人の平均年齢は50歳代。この層はまさにこれからゴルフ関連の口コミ情報の収集にインターネットを本格的に活用し始めるところだろう。当社としてはいまが勝負どころだ」と見る。今後は、試打の機会をさらに増やしたり、グリップスピード理論などを紹介するプロギア専用ホームページのコンテンツを強化することなどによって、口コミ効果が起こることを期待する。

 実はかつて、「ヘッドスピード」を測定することをゴルフ愛好家の常識にしたのも横浜ゴムだった。後発メーカーだった同社は、1984年にプロギアブランドで市場に参入する際、業界の常識を打ち破る提案をして認知度を高めようと考えた。「そのころは新品のクラブを店で試打できること自体がめずらしかった。ヘッドスピード測定装置を置いてもらい、お客様に積極的に試打を勧めた」(入道主任)

 今回もグリップスピードを測定するやり方がゴルフ愛好家の常識となり、他のクラブメーカーに波及するまでになるかどうかは、「1~2年は分からないだろう」と入道主任は見る。ただしシャフトメーカーの中には既に、横浜ゴムの提案に賛同する会社が出てきた。例えば2006年9月から三菱レイヨン、藤倉ゴム工業、グラファイトデザインの3社がT3ドライバーに適した硬度の特注シャフトの提供を始めている。