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カフェプロジェクトに取り組むダイハツ工業の販売会社の1つである奈良ダイハツの奈良店
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 3月1日に創立100周年を迎えたダイハツ工業が2005年9月から取り組んでいる全国の販売会社を対象にした店舗改善活動「カフェプロジェクト」が、短期間での顧客満足度(CS)の向上に大きく貢献している。カフェプロジェクトを開始した直後の2005年10~12月の3カ月間のCS調査の結果と2006年同時期の結果を比較すると、調査項目によっては1年間でCSが4.6ポイント上昇したものまであった(最大満足度を100で換算)。

 カフェプロジェクトを担当する国内企画部総合営業企画室店舗総合営業グループの山田秀文氏は「過去に経験がないほどの短期間でCS調査の全国平均が大きく上昇した。これまでも様々な店舗改善活動を実施してきたが、CSは下がるのを食い止めるだけでも相当たいへんで、1ポイントでも上昇に転じるまでにはかなりの時間がかかった。昨年1年間でカフェプロジェクトの効果を確認できたので、2007年は一層、現場への定着を図りたい」と話す。ダイハツは2006年に軽自動車の販売が引き続き好調だったが、それを下支えしたのは新車の販売効果だけでなく、販売会社のカフェプロジェクトへの取り組みが大きな要因だったといえる。

 ダイハツは毎月、販売会社のCS調査を実施しており、結果を販売会社にフィードバックしている。CSは、店舗に対する顧客の印象の「変化」によって相対的に決まる傾向があるため、現状のサービスのままでは顧客が今の状態に「慣れて」しまい、放っておけば結果が前年を下回ると想定される。実際ダイハツの場合、CSに対して特に厳しい目を持つ女性客は、新車購入時から約3年が経過するとCSが7~9ポイントも低下することが分かっている。「女性客は男性客以上に、一度嫌な思いをされるとなかなか信頼を回復していただけず、結果的にCSは上昇しない」(山田氏)。

 そのため、これまでのダイハツは商品やサービス、接客を改善し続けてCSを「維持」するだけでも一苦労だったが、「カフェプロジェクトは結果が大きく上昇したことに手応えを感じている。当初1年間の予定だったカフェプロジェクトを、期限を決めずに続行することにした」(山田氏)。

女性にウケる店舗作りができていなかった

 そもそもカフェプロジェクトとは、軽自動車の主力顧客であり、ダイハツの顧客の約70%を占める「女性客」に受け入れられる店舗作りを目指した取り組みである。プロジェクトの名の通り、女性に好まれる「カフェ」のような居心地のいい店舗に生まれ変わろうと、ダイハツが全国の販売会社に活動を呼びかけた。そう言うと、プロジェクトの中身は「カフェのような店内装飾」や「コーヒーなどの飲み物サービスの充実」が主体となる取り組みに聞こえるが、それはあくまでも活動の「導入部分」に過ぎない。その点を誤解すると、このプロジェクトの真の姿を見誤ることになる。

 カフェプロジェクトはCSを高めるための店舗の「改善活動そのもの」である。カフェのような店舗作りをきっかけに、もう一度、接客や商談、サービスの提供方法や体制を根本から見直して、ダイハツの販売会社の底上げを図るものだ。その中には「4S(整理、整とん、清掃、清潔)」といったトヨタ流の改善活動の基本も当然含まれてくるが、さらに「女性客の視点」を加味したのがダイハツ流の改善活動であるカフェプロジェクトの特徴である。

 「カフェ」という店舗スタッフが取っ付きやすいコンセプトを明快に打ち出したことが、ダイハツ流の改善活動のスタートを切りやすくしたことは確かだ。ダイハツはカフェプロジェクトの企画・立案に際し、大手広告代理店の博報堂(東京・港区)からコンセプト設定の提案を受けて、採用している。

 ダイハツは2005年8月からこれまでに合計5回、全国の販売会社を東京と大阪の会場に招いて、カフェプロジェクトの「リーダー会議」を開催してきた。この3月には6回目のリーダー会議を予定している。全国の販売会社がそれぞれ任命したカフェプロジェクトのリーダー男女1人ずつ、合計120人以上が集まり、カフェプロジェクトの進め方について議論したり、お互いの事例を共有してきた。各リーダーが自社に戻ってから全店にカフェプロジェクトを広げられるように、リーダー会議では「店舗ミーティング」の模擬演習を実施して、全国展開の布石を打った。

 リーダー会議の議題は、1~2回目が「あいさつや身だしなみ、ドリンクサービス」といった接客の基本に立ち返ったものだ。ただし、いわゆるマナー研修ではなく、どうやって店舗スタッフに徹底していくかを議論し合う内容になっている。3~5回目は店舗での「顧客応対ルール」の確認や、自動車整備を担当するサービスエンジニアに対する「3コンタクト」の推奨を提案した。

 3コンタクトとは、実際に整備をするサービスエンジニア本人が顧客に対して、「(1)受付・問診から、(2)整備、(3)納車時の説明」までの3つの仕事を一貫して提供することを指し、顧客に安心して納得がいく整備サービスを提供する狙いがある。ダイハツはリーダー会議とは別に、3コンタクトのための「ロールプレイング大会」を2006年夏に開催し、あまり顧客の前には出たがらないサービスエンジニアの意識改革にも乗り出している。カフェプロジェクトの内容は、ここまで広範囲に及ぶ。

 こうした取り組みの結果、全販売会社のCSの平均値は、飲み物のメニューが選べるようになった「ドリンクサービス」が2005年の67.5から2006年の72.1まで上昇したのをはじめ、店員の「接客態度」は73.7から75.4に、「的確な商品説明」は72.4から72.8に、自動車の「金額・整備内容の説明」は64.5から65.4に、同じく自動車の「メンテナンスアドバイス」は57.1から58.7に、それぞれ1年ですべて上昇に転じた。

 裏を返せば、カフェプロジェクトの取り組みは、顧客に「ダイハツが変わった」と強く印象づけられるだけの効果的な改善活動だったというわけだ。

女性スタッフの積極登用がプロジェクトを促進


奈良ダイハツの女性スタッフがアイデアを出し合って、カフェプロジェクトを推進する。写真右の女性スタッフはダイハツ工業が主催する「リーダー会議」にも出席している
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 カフェプロジェクトが1年で成果を上げられた大きな要因の1つは、「カフェ」の名の下に、若い女性客と同じ目線に立つ同年代の女性スタッフを改善活動に巻き込むことに成功したことだ。言い換えれば、カフェプロジェクトは女性スタッフを改善活動に参加しやすくするための「仕組み作り」といえる。

 販売会社を代表してダイハツのリーダー会議に参加するのも、1人は必ず女性スタッフである。カフェプロジェクトに取り組む販売会社の1つである奈良ダイハツ(奈良県奈良市)の面田実常務は、「当社は数年前からCS活動に取り組んでおり、その意味ではカフェプロジェクトに目新しさはないが、女性スタッフを活動の『主役』に据える試みには共感しており、改善活動に対する意識の醸成に役立った」と評価する。

 実際、奈良ダイハツでは各店の女性スタッフからどんどん新しいアイデアが出るようになったという。そうした女性スタッフの中には、奈良ダイハツを代表してリーダー会議に出席している人もおり、「そもそも出張に行く機会が少ない女性スタッフにとって、リーダー会議への参加は本人の大きなモチベーションになっている。他店の女性スタッフとの意見交換も刺激になっている」(面田常務)。

 実は奈良ダイハツは、2002年から2006年まで5年連続で、全国に63社ある販売会社の中でCS調査の年間結果がナンバーワンになっている。ダイハツからは「お客様満足度最優秀賞」として表彰されているほどの模範店である。リーダー会議では、奈良ダイハツの良さを学ぼうと、女性スタッフはほかの販売会社から何度も声をかけられた。

 ただし、面田常務はカフェプロジェクトに対して、決して浮かれた気持ちになっていない。「カフェプロジェクトと言っても、本物のカフェにはサービスが遠く及ばないのは言うまでもないことだ。カフェ風の店舗作りといったハード面だけを整えても意味がない。車のプロとしてのおもてなしの心が一番大切で、当社は数年前からそこに重点を置いて全社改革を断行してきたから、5年連続で高い評価をいただけたと考えている」と本音を明かす。

 実は奈良ダイハツは1999年のCS調査で、結果が全販売会社中で「屈辱の49位」(面田常務)まで落ち込み、その反省を踏まえて翌年からは全社でCS活動に心血を注ぎ込んできた経緯がある。そして3年後の2002年にCSナンバーワンに返り咲き、以後トップの座を守り続けている。

 その全社改革の象徴が「大きな声でのあいさつ」で、「当社の店舗に来た人であれば、新聞配達の人でもヤクルトのおばちゃんでも、誰に対しても、八百屋さんや魚屋さんのように大きな声であいさつすると決めた。仕事中のどんな状況でも来店客に元気にあいさつできるように、あいさつを基準に仕事のやり方や店舗レイアウトを変えてきたほどだ」(面田常務)。

 店舗スタッフ全員が一斉に大きな声であいさつしてくることに戸惑う顧客がいるほどだが、繰り返しているうちに「最初の一声」が掛けやすくなり、コミュニケーションが活発になっていくという。そうした土壌の上にカフェプロジェクトが載ってきて初めてCSは向上できると、CSナンバーワン販売会社の奈良ダイハツは考えている。