![]() ツルハが顧客と常に向き合うことを意識して開発した新型のPOSレジ [画像のクリックで拡大表示] |
北海道や東北を中心にドラッグストア「ツルハドラッグ」を500店以上展開するツルハホールディングスは2007年11月までに、全店に新型のPOS(販売時点情報管理)レジを合計で約1800台導入する。このシステム刷新に約10億円を投じる。
新型レジを導入するに当たり、ツルハは2つのことにこだわった。1つは、顧客が購入した商品をレジ係が1人で袋詰めまで含めて素早く処理できるようにすること。もう1つは、レジ係が常に顧客のほうを向いて応対できることだ。前者はツルハの経営陣の袋詰めサービスに対するこだわりの表れであり、後者はレジを入れ替えるに当たって店員から寄せられた現場からの強い要望だった。
同社の情報システム部門は、この2つの条件を満たすことを優先して新型レジのハードを探した。だが「既成のレジでは当社の条件を満たすものが見つからなかった」(ツルハ情報システムグループの寺嶋晋課長)ため、最終的にはNECグループと共同でツルハ仕様の「対面型レジ」を独自に開発することにした。2006年9月から2店でテスト導入を開始し、オペレーションをビデオ分析しながら、新型レジに合ったレジ周りのレイアウトを新たに考案。常にレジ係が顧客の顔を見ながら応対できるようになった。
1999年に導入した従来のレジはレジ係が片手にハンドスキャナーを持って処理するタイプだったので、両手が自由に使えずに袋詰めが遅くなるという欠点があった。そこで今回は固定式のスキャナーを採用して両手で商品を扱えるようにした。これは現場から出たアイデアだ。商品のバーコードを固定スキャナーでスキャンする処理の流れの延長で袋詰めまで終え、会計を完了してしまう。
さらにレジをレジ台の中央に配置することで、レジ係が顧客と相対で向き合えるようにした。しかも顧客との間に「壁」ができないようにと、新型レジは幅をできるだけ薄くした。これまではレジがレジ台の横にあったため、レジ係は横向きにならざるを得ず、顧客によっては印象を悪くする恐れがあった。
新型レジは2007年2月から導入を開始しているが、既に切り替えを終えた店舗では、顧客1人当たりのレジ通過時間が平均で2秒ほど短くなっている。数字だけ聞くとわずか2秒の短縮にも思えるが、「多くの店員が、以前よりも明らかに処理が早くなったと話している。袋詰めのためにもう1人応援を呼ぶケースも減った。レジの処理時間を短くしながら、1人で袋詰めまでこなせる時間帯がこれまでよりも大幅に増えた」(寺嶋課長)。5月までに新型レジを使ったオペレーションの標準作業を固め、全店に徹底していく計画だ。
ツルハは2010年までに、現在の約2倍に相当する1000店体制の構築を目標に掲げており、新規出店やM&A(企業の合併・買収)を積極的に進めている。今回の新型レジは、その1000店体制を支えるシステム基盤に位置づけられる。
新型レジの導入が完了すれば、すべての店舗の在庫をリアルタイムで確認できるようになるほか、レシートのバーコードをスキャンするだけで返品処理やポイントの事後加算も可能になる。顧客にとっては、それだけ買い物がしやすくなるわけだ。ツルハ自身も、より正確な在庫数をつかみやすくなり、2005年から全商品カテゴリーを対象に採用している自動発注システムの精度も上がると期待している。