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サービス改善レポートの例 [画像のクリックで拡大表示]

 ジェーシービー(JCB)が顧客から寄せられる電話や電子メールに耳を傾けて、自社のサービスを改善していく活動の報告書を「サービス改善レポート」として公表するようになってから、2007年4月で丸1年が過ぎた。

 年間3000~3500件集まる顧客からの新たな問い合わせや苦情、お褒めの言葉などを、2002年に構築し始めた「お客様の声連携データベース」に登録し、そのうち毎年数百件が改善案件として取り上げられる。そしてクレジットカードの申込書フォームの見直しやホームページのリニューアル、カード会員向けの会報誌での告知文の作成などに生かされていく。

 例えば、2007年2月に会報誌やホームページに記載されたサービス改善レポートは「セキュリティコードって何ですか?」という顧客からの質問の電話に端を発したサービス改善の報告だ。2006年5月以降、複数の顧客から「電子マネーを入金(チャージ)するためにクレジットカード番号の登録をしているが、何度やってもうまくいかない」といった電話がかかってくるようになった。オペレーターがよくよく話を聞いてみると、電話をかけてきた人のほとんどがクレジットカードの裏面に記載されている「セキュリティコード」を、個人の「暗証番号」と勘違いして入力していたことが判明。そのため登録がうまくいかなかった。

 JCBはこれまでもセキュリティコードについて会報誌やホームページで何度も説明してきたつもりでいたが、大きく目立つ形で取り上げていたわけではなく、まだまだ会員に認知されていなかった。そのために顧客に疑問を抱かせ、勘違いさせてしまった。そのことを反省し、早速セキュリティコードについて分かりやすくアピールできるように、会報誌やホームページでの取り上げ方を目立つように変えた。非常に地味なサービス改善にも思えるが、これだけでも、その後の問い合わせ件数は減少する。

オペレーターを表彰する改善提案制度を発足

 このように小さな改善を積み重ねていくのがJCBのサービス品質向上策だが、この活動で大きな役目を果たしているのがコールセンターやサービスカウンターにいる合計約1000人のオペレーターである。サービス改善における彼女たちの役割は、顧客からの声を「言われたまま」に正確にデータベースに入力することと、それらの声を基に自分で思いついたアイデアを追記することだ。

 前者は顧客の生の声を拾い集める「事実」の蓄積であり、後者はたくさんの顧客と直接会話するオペレーターならではの発想から生まれる「改善提案」の収集である。このように、JCBはサービス改善を進めるに当たり、事実と提案をきっちり区別して扱うようにしており、そのことを研修を通じてオペレーターに徹底している。

 サービス改善を推進する業務統括部の澤井毎里子・品質管理グループ係長によれば、「オペレーターは対話スキルは高いが、会話の内容を記述するスキルが高いとは限らない。最初のうちは顧客の声を正確に入力できなかったり、事実と本人の提案が1つの記述の中に混在していたりするものが多く見受けられた。それでは事実がゆがんでしまい、顧客が意図することを正しく読み取れなくなる恐れがある。そこで事実と提案を明確に切り分けて記述する訓練を続けることにした」と明かす。


グッドボイス賞のポイントをためるコールセンターのオペレーター [画像のクリックで拡大表示]

 研修と並行して、2004年7月からは「グッドボイス賞」というオペレーターの表彰制度を現場に取り入れた。これは、具体的なサービス改善につながりそうな有効な「提案」を出したオペレーターに対して、JCBが社内の独自ポイントを付与し、10点たまると商品券を手渡す仕組みだ。遊び心を加えながら、オペレーターのモチベーションを高めるもので、オペレーターからは好評だ。

 年間3500件集まる顧客の声(事実)には、ほとんどの場合、オペレーターの提案が付け加えられるようになり、その提案の約40%がポイントの対象になる「いい提案(グッドボイス)」として業務統括部から認定されている状況だ。つまり、JCBはサービス改善を通じて、顧客のことを一番よく知るオペレーターの声まで同時に収集しているわけである。

 もちろん、顧客やオペレーターから声を集めるだけでは駄目だ。サービスを改善していくには、集めた声を使って具体的なサービス改善の実行案を立てて行動に移す必要がある。それはJCBの各担当部門の仕事である。

 JCBは2002年にお客様の声連携データベースの構築に着手すると、同時に社内の運用ルールを定めた。オペレーターが所属するコールセンター部門と、顧客の声を受け取る各担当部門との間に、顧客満足度(CS)の向上を狙う業務統括部がパイプ役として入り込み、顧客の声に対して各担当部門が「いつまでに何をするのか」をはっきり決めさせる期日管理を始めた。具体的には「顧客の声を受け取ってから10営業日以内に、担当部門は業務統括部に対応の回答を提出するようにと決めた。回答が来るまで、我々が担当部門につきまとう」(吉田健二・業務統括部長)。

 担当部門から上がってきた回答は、お客様の声連携データベースに登録する。するとオペレーターは次に同じ問い合わせが来た時、「その件については、いついつまでに対応できるように既に準備中です」といった具合に、担当部門が作った回答を顧客にその場で知らせることができる。こうすれば、顧客に対して「担当部門に伝えておきますなどと言わなくて済む」(吉田部長)。

 その場で回答を得られれば、多くの顧客は納得してくれるし、応対するオペレーターも作業を効率的にこなせる。オペレーターは過去に例がなかった問い合わせが来た時にだけ、お客様の声連携データベースに顧客の声を入力すればよい。

 実はサービス改善は、オペレーターの生産性を上げながら、一方でCSも上げる試みなのである。