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写真1●社長の年頭説示を全国17拠点にリアルタイム配信
写真1●社長の年頭説示を全国17拠点にリアルタイム配信
映像と音声の配信にWeb会議システム「MORA Video Conference」を活用することで,導入コストを数十万円に抑えた。

 2007年1月5日午後5時。オリンパスの国内17拠点では,約300人の社員がパソコンやプロジェクターの前で待ち構えていた。新宿本社近くの会場で開催される社長の年頭説示を聞くためだ。オリンパスはWeb会議システムを使って支店や営業所に映像と音声をリアルタイムで配信する仕組みを構築(写真1)。当日は会場に集まった約1000人の社員を含め,約1300人が社長の年頭説示に聞き入った。

 オリンパスが今回の仕組みを構築した狙いは「トップの声を生で社員に伝えるため」(コーポレートセンター総務部総務グループの松沢孝紀グループリーダー,写真2)。同社は2003年10月の社名変更をはじめ,販売会社の合併など,ここ7~8年で会社が大きく変わった。「会社の方針は職制を通じて伝えているが,社長の思いは社員一人ひとりにまでなかなか届きにくいという声が現場から上がっていた」(同)。


写真2●オリンパス コーポレートセンター総務部総務グループの松沢孝紀グループリーダー,同IT基盤技術部ネットワーク基盤グループの草柳健氏,同グループの東英明グループリーダー(左から順に)
写真2●オリンパス コーポレートセンター総務部総務グループの松沢孝紀グループリーダー,同IT基盤技術部ネットワーク基盤グループの草柳健氏,同グループの東英明グループリーダー(左から順に)

 年頭説示は社長の思いを全社員に伝える絶好の機会だが,社長が説示を行うのは首都圏の5拠点だけが対象。全国の支店や営業所は,年頭説示を撮影・編集したビデオテープを見るしかなかった。「2~3週間後にビデオテープで見るのと,ライブ配信でリアルタイムに見るのとでは臨場感が全く異なる。社長のメッセージを生で伝えるための手段として試験的に導入した」(松沢グループリーダー)。

テレビ会議など3方式を検討

 導入を検討したのは2006年10月。当初はテレビ会議システムや衛星回線を使った映像配信サービスを検討した。テレビ会議システムは一部の拠点で既に導入していたので設備投資が少なくて済むが,同時に配信できる拠点数が限られる。一方,衛星回線を利用した映像配信サービスは「専門業者に委託すると約300万円など高価。拠点数が増えると,一気にコストが跳ね上がる」(松沢グループリーダー)。

 悩んでいるうちに浮上してきた案が,Web会議を活用する方法だった。Web会議とは,パソコンを使って離れた拠点間で映像や音声による会議を開ける製品/サービス。パソコンにプロジェクターやスピーカーを接続すれば,テレビ会議と同じことが実現できる。つまり,ビデオカメラで年頭説示を撮影してパソコンに映像と音声を取り込み,他の拠点に一斉に配信する形でWeb会議を開くわけだ。

 しかし,安価で手軽に導入できるASP(application service provider)サービスを検討したところ,「ほとんどは事前テストが本番当日に限られ,映像配信の経験がない我々には不安が残った」(コーポレートセンター IT基盤技術部ネットワーク基盤グループの東英明グループリーダー)。そこで採用したのが,モーラネットが提供する「MORA Video Conference」。Web会議サーバーを自社内に設置して事前にテストできる点が決め手となった。

フレーム数減でトラフィック増防ぐ

 早速,2006年11月から検証を開始。Web会議サーバーを情報システム部門のある東京都八王子市の拠点に設置し,本社や支店とWANを介して映像や音声をやり取りした(図1)。「最初は簡易的なWebカメラとマイクで試したので音のこもりが気になったが,総合的に判断して十分いけると考えた」(松沢グループリーダー)。

図1●年頭説示のリアルタイム配信を実施したネットワーク・システム構成
図1●年頭説示のリアルタイム配信を実施したネットワーク・システム構成
会場に一時的にBフレッツを引き込み,社内WANに接続。ビデオカメラで撮影した映像と音声を,センターのWeb会議サーバー経由で各拠点に配信した。  [画像のクリックで拡大表示]

 映像や音声のやり取りで注意しなければならないのがトラフィックだ。特に映像は,画質を上げるほどトラフィックが増える。映像は当初,320×240ドットの解像度で1秒当たり30フレームを流すことを考えた。しかし,320×240の解像度ではプロジェクターで拡大表示すると画質が荒くなり,実用に耐えられない。トラフィックは4倍程度増えるが,640×480の解像度にした。その代わり,1秒当たりのフレーム数を15に落とした。年頭説示は時間の経過による映像の変化が基本的に少ないからだ。フレーム数を落としても大きな影響はないと判断した。

 解像度640×480,15フレーム/秒のビットレートは約1Mビット/秒。同社では社内WANにNTTコミュニケーションズの「Group-VPN」とNTT東日本の「フレッツ・グループアクセス」を使っており,アクセス回線は全拠点が最大100Mビット/秒のBフレッツを採用している。実効速度は落ちるとしても,特に問題なかった。

 Web会議サーバーを設置した八王子は各拠点からのアクセスが集中するが,アクセス回線が3本あるので十分足りる。さらに年頭説示の間は,社員は原則として業務を行わないことになっており,トラフィックの優先制御は実施せずに済んだ。

直前に通信トラブルが発生

 本番当日はちょっとしたトラブルも起こった。年頭説示の会場で利用していたGroup-VPNの通信に異常が発生したのだ。「原因は詳しく調べなかったが,各拠点にpingを実行しても半分くらいは応答がなかった」(コーポレートセンターIT基盤技術部ネットワーク基盤グループの草柳健氏)。そこで急きょ,八王子の拠点との接続をインターネットVPNに切り替えた。

 実は,年頭説示の会場はGroup-VPNだけでなく,インターネット接続サービスも契約してあった。Group-VPNの納期が本番に間に合わない可能性があったからだ。通常のインターネット接続サービスは納期が間に合うため,両方を契約しておいた。納期が間に合えばGroup-VPN,間に合わなければインターネットVPNで八王子の拠点と接続するつもりだった。

 結局,Group-VPNの納期は間に合ったわけだが,保険で用意したインターネット接続サービスが活躍する結果となった。「あらかじめGroup-VPNとインターネットVPNの両方を設定しておいたので,機器を置き換えるだけで対処できた」(草柳氏)。

汎用パソコンの活用でコスト抑制

 こうして年頭説示のライブ配信は無事に終わった。後日実施したアンケート調査では,一部に冷ややかな声もあったが,「説得力があった」「身近に感じられた」といった好意的な意見が少なくなかった。「画質や音質に問題はなく,成功だったと考えている。来年以降も同じ仕組みでライブ配信を実施する予定だ。今後は,ライブ配信の対象を支店や営業所以外の拠点に広げていくことも考えている」(松沢グループリーダー)。

 今回のライブ配信にかかった総費用は数十万円。その大半はWeb会議サービスの利用料である。撮影用のビデオカメラは会社にあるものを流用し,新規に購入した周辺機器はビデオカメラをノート・パソコンに接続するためのビデオ・キャプチャー・カードと,一部拠点用のスピーカ数台。映像や音声を送受信するパソコンも既存のものを活用した。