![]() 村田製作所の「組織風土改革活動」の統轄責任者である藤田能孝専務 |
村田製作所の「組織風土改革運動」が、この4月から新局面を迎えた。昨年度に6部門に試験導入したバランス・スコアカード(BSC)を、すべての事業部門に展開し始めたのだ。
組織風土改革運動は、2001年にIT(情報技術)バブルがはじけ、売上高が3年間にわたって伸び悩んだのがきっかけ。閉塞感や内向き体質を払拭するために、経営陣が議論を繰り返し、(1)顧客本位、(2)現場重視、(3)変化への迅速な対応、(4)自由闊達でチャレンジング---の風土を育むことにした。「売り上げの伸びが低迷したのは、ITバブルの反動のせいだけではないと考え、議論を始めた」と藤田能孝専務は語る。
こうした風土を育む具体策として、まず2004年6月に推進委員会を設立。ここが事務局となり、2005年3月まで経営品質協議会の「経営品質向上プログラム」を導入した。職場ごとにあるべき姿と現状とのギャップを認識するためだ。
続いて2005年6月に、従業員満足度(ES)調査を実施。子会社を含む1万4500人もの従業員に約150問の設問に答えてもらった。すると経営陣が予想していた以上に、やりがいを失っている様子が浮き彫りとなったのである。「組織の風通しが悪く意見が言えない」「会社は成長しているが、個人の成長に結びついていない」という声が目立ったのだ。これで、風土改革の実現には、ES向上が欠かせないと気づいた。
風土改革の進ちょくを5段階にレベル分け
経営陣や委員会は、風土改革とES向上を推進するには、会社の進む方向性を明示する必要があると考えた。そこで、経営理念や価値観を明文化すると同時に、長期経営計画の策定に初めて取り組んだ。経営陣が合宿し、経営企画部が協議を重ねて、「Murata Way 2015」を2006年10月に完成させた。ここで掲げた2015年の売上高の目標は、現在の2倍の1兆円超。併せて2006年4月から人事評価制度を変更し、管理職が部下の士気を高めることを重視する形にした。
こうして2007年4月、これまでの様々な取り組みを強固に結びつけ、改革を浸透させる仕組みとしてBSCを導入した。BSCは「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「従業員の学習と成長の視点」の4種の数値目標を管理する手法。村田製作所の取り組みと合致する部分が多い。
推進委員会は、風土改革の浸透度を5段階で定義し、現状を「まだレベル2の職場が圧倒的に多い」と判断している。レベル1は「風土改革の4つの言葉を知っている」、レベル2は「4つの言葉の具体的な意味まで知っている」、レベル3は「4つを目指した行動を継続的に実践」、レベル4は「行動した結果を通じて、風土が変わったと社員が感じる」、レベル5は「風土が変わったことが、お客様にも伝わる」である。
当面の目標は、3年以内にレベル4の職場を全体の6~7割以上にすること。「風土改革は一朝一夕には実現できない。地道な努力を続けることが欠かせない」と、経営陣や推進委員会は肝に銘じている。