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改善結果報告書(兼申請書)の例。合併の「シナジー度」を評価する項目まで設けた
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 豊田通商と旧トーメンが合併し、新生・豊田通商が誕生して、2007年4月で丸1年が過ぎた。この1年、豊田通商は早期に合併の相乗効果(シナジー)を生み出そうと、全社でトヨタ流の「改善提案制度」を展開してきた。

 2006年8月から2007年3月までの8カ月間、全社で「改善キャンペーン」を実施。この間に合計で約1300件の改善提案が両社出身の社員から寄せられた。豊田通商とトーメンのそれぞれ出身の社員がお互いに自分たちのいいところや改善アイデアを出し合い、事務効率が高い仕事のやり方や経費の削減策、営業の知恵などを改善提案を通して情報共有。出身母体も役職も所属本部の壁も超え、全社に改善アイデアを横展開(ヨコテン)する。

 結果的には、この1年の改善効果を金額に換算すると、合計で約6億円の効果が見込まれるほどのアイデアが提案された。

 改善提案で集まった内容は、海外拠点への出張旅費の削減や、食品の安全管理のための新しい組織づくり、自社取り扱い商品の提案ツールの作成など、多岐に渡る。こうした提案を数多く出したのは、現場の若手社員や女性社員たちだった。

 トヨタグループのメーカー各社にとっては以前から、現場の改善提案制度は当たり前になっている。だが、営業担当者が大多数を占める商社の豊田通商にとっては、まだまだ歴史が浅い取り組みだ。改善提案制度が始まったのは2004年のことである。一方、トーメン出身の社員にとって、改善提案制度は初体験だった。

 豊田通商は経営企画部の中にある「TQM推進室」が中心になって、商社の経営品質を上げる改善活動を進めており、今回集まった改善提案の内容については、「効果」「着眼性」「努力度」「持続性」に加え、「シナジー度」まで評価して、価値ある提案を出した社員を称えている。

合併プロジェクトで風土改革を先行

 豊田通商の改善提案制度が成功した理由の1つに、合併に伴う全社融合促進企画「維新伝心プロジェクト」の存在が挙げられる。同社は、両社出身の社員がお互いをよく知り合えるようにと、2006年5月から全社でこのプロジェクトを進めてきた。

 合併に伴う懇親会や飲み会、引っ越しパーティー、さらには幹部やリーダー向けのトヨタ流の研修や新しい企業理念「Toyotsu Way」を伝える全社員向けの説明会など、様々なイベントを通じて、「お互いの意見や働き方を受け入れる姿勢を醸成してきた。その仕上げとして改善提案制度を始めたことが、前向きな提案を生み出したと考えている。合併直後にいきなり改善キャンペーンを始めても数が集まらなかっただろうし、お互いの仕事を否定し合うようなネガティブな意見ばかりが目立っただろう」(維新伝心プロジェクトのリーダーである岩本秀之・経営企画部東京コーポレート企画グループリーダー)。

 維新伝心とは、合併による企業革新を意味する「維新」と、心を通わせる「以心伝心」とをかけた造語であり、プロジェクトリーダーである岩本氏が、その名づけ親である。岩本氏は経営企画部の仕事の一環として、数年前からナレッジマネジメントによる現場での知恵の共有に取り組み、社外の勉強会にも積極的に参加してきた。その勉強会で出会った「維新伝心」という言葉に惚れ込み、今回のプロジェクトに名づけたという。

 「維新伝心という改革のキーワードにすべてのイベントが集約されるようにプロジェクトを組み立てたことが奏功した。こうした統合のキーワードがなければ、通常の飲み会や研修、改善活動との違いを打ち出せなかっただろう」(岩本氏)。引っ越しパーティーでは、清水順三社長以下、役員も総出で維新伝心プロジェクトの揃いのハッピを着て参加し、現場の一体感を盛り上げた。

 豊田通商ではこの1年で、維新伝心という合併の合い言葉とともに、改善提案制度が定着した。