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フジクラの大橋一彦社長
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新たな経営理念を浸透させるために作成した絵本「飛ぶぞう。」
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 光ファイバー・光部品大手のフジクラは、絵本を活用した経営理念の浸透活動に力を入れている。

 大橋一彦社長が創業120年目に当たる2005年を「第3の創業」の年と位置づけ、同年10月に新たな理念を明文化。その内容を踏襲した絵本を作成し、2006年10月に大橋社長の手紙付きで全社員やOBに計2万部を配った。現在までに、各部で絵本の読み合わせ会を開いたり、社長が各拠点を訪問して絵本を片手に新理念の浸透を訴えたりしている。

 大橋社長の大きな狙いは風土改革だ。「以前はNTTなど通信会社や電力会社に製品を納めていればよかったが、もはやビジネスモデルもスピード感も変えないといけない。社員はみんなまじめで指示があれば素早く動くが、今後は自発的に自らの殻を破る力が必要になる。変化を恐れてはいけない」と言い切る。大橋社長がこう訴えるのは、海外拠点が多く事業環境の変化も激しい電子電装部門の統轄責任者だった際、理念によるベクトル合わせの重要さを痛感したせいでもある。

 指示待ち体質を打破し、提案力や挑戦心を高めたい。そんな思いを託した新理念「MVCV」をまず2005年10月に明文化した。これは社内の各部門から選抜した二十数人のプロジェクトチームが策定。新理念は「ミッション(会社の社会的使命)」「ビジョン(会社の目指すべき姿)」「基本的価値(社員の行動基準)」の3層構造になっている。

 ところが、抽象的で堅苦しい言葉が並ぶ理念は、単に文章にしただけでは心に響きづらい。新理念を書いたビラや小冊子を経営陣が自ら各拠点に配布したものの、大橋社長はその浸透度合いに不満を感じた。そこで絵本を作り始めたのだ。

 東ハトが経営再建時に、新経営陣の思いを絵本に託したやり方を参考にした。これは、想像力や共感力を喚起して人の心に訴えかける物語の力を使って理念を浸透させる手法「ストーリーテリング」の一種といえる。

 「飛ぶぞう。」というタイトルをつけた鮮やかな水色の表紙の絵本を開くと、どの見開きにも動物の絵とその説明、経営理念や社史の要約が描かれている。

 例えばある見開きには、おたまじゃくしと鯨の絵、「オタマジャクシがクジラになってはいけないのでしょうか。」という説明、「先輩たちは、高い目標をかかげ、果敢に取り組み、新しい事業を立ち上げ、経営の礎を築きました。そこには確かに仕事をする喜びや達成感あふれる新鮮な感動がありました。」といった言葉が躍る。

 フジクラの2007年3月期決算は、売上高6450億円、経常利益330億円で増収減益となる見通し。「実は1年前の2006年3月期は過去最高の業績を記録してしまい、新理念を浸透させようにも危機感をみんなで共有しづらい面があった。2007年3月期が減益となることを喜んではいないが、風土改革に挑む気運は高まるのではないか」と大橋社長は見る。

 新理念を浸透させて企業風土を改革する取り組みは、絵本だけではない。例えば、新理念に照らし合わせた業務改善を推奨し、優れた改善事例を全社会合の場で表彰した。「企業風土改革は終わりのない活動。トップが積極的に動いて、変革の重要性を訴え続ける必要がある」と考えている。