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大分銀行は2006年11月,社内ネットワークを刷新した。NTT西日本と九州通信ネットワーク(QTNet)の広域イーサネットを採用し,勘定系と情報系でそれぞれ使い分けている。顧客や行員向けの映像配信システムを導入するなど,ネットを使ったアプリケーション利用も活発に進める。

 社内ネットを全面更改した大分銀行は,業務用の「融資支援システム」だけでなく,顧客向けの情報配信や行員向けのリアルタイム映像配信など,新しいアプリケーションを矢継ぎ早に導入し,新ネットワークをフル活用している(表1)。

表1●大分銀行が実施してきたネットワーク更改作業
表1●大分銀行が実施してきたネットワーク更改作業
再構築した社内ネットを使い,新しいアプリケーションを利用し始めている。

 こうした多数のアプリケーションを利用する際の基盤となる新たな社内ネットワークは,NTT西日本とQTNetの広域イーサネットを組み合わせて構築した。

写真1●大分銀行の原田伸行システム部システム企画グループ推進役(左)と奈良雅彦システム部システム企画グループ推進役補(右)
写真1●大分銀行の原田伸行システム部システム企画グループ推進役(左)と奈良雅彦システム部システム企画グループ推進役補(右)

 以前の社内ネットは専用線で構築しており,営業店のアクセス回線は128kビット/秒に過ぎなかった。そのため,「情報系の通信データ量が多くなるにつれて営業店から,『データのダウンロードに時間がかかる』という苦情が増えてきた」(大分銀行の原田伸行システム部システム企画グループ推進役,写真1の左)。

 加えて,同行が融資支援システムと呼ぶ,新たな業務アプリケーションを2006年12月に導入することを決めたため,それに先駆けてネットワークも再構築することにした。

 融資支援システムでやり取りするデータには,物件写真や公的な資料が添付されており,通信量は多い。ストレスなく使うためには,ネットワークの大容量化が必須だったのだ。

勘定系と情報系を別ネットワークに

 新しい社内ネットは設計から構築まで,約1年をかけて完成した(図1)。勘定系と情報系のネットワークを別々に構築し,全107拠点を接続している。

図1●大分銀行の社内ネットワーク
図1●大分銀行の社内ネットワーク
勘定系/音声用と,情報系でそれぞれ異なる通信事業者の広域イーサネットを使っている。障害時は,相互にバックアップする設計で,信頼性を高めた。  [画像のクリックで拡大表示]

 NTT西日本の広域イーネットには勘定系とIP化した音声トラフィックを流し,QTNetの広域イーサネットには,情報系のトラフィックを流す構成だ。営業店に導入したアクセス回線は拠点規模によって異なるが,勘定系は0.5M~1Mビット秒,情報系は最大10Mビット/秒と大幅に増強した。

 WANサービスを選ぶ際にはIP-VPNも検討したが,「九州エリアの地方銀行で広域イーサネットの導入実績が多かった」(原田推進役)ため,最終的には広域イーサネットに決めた。勘定系と情報系のネットワークは,相互にバックアップするように設計・構築した。このため,一方の障害時には自動的にもう一方のネットワークに切り替わるようになっている。

 勘定系システムやネットワークの運用は日本ユニシスの子会社「エイタス」にアウトソーシングしているという。

銀行業務を止めないために検証を徹底

 ネットワークの構築時に最も時間をかけたのは,冗長化構成の検証だった。「ネットワークが停止すると,銀行業務まで止まってしまう」(大分銀行の奈良雅彦システム部システム企画グループ推進役補)からである。

 ネットワークで使っているルーターやスイッチといった通信機器は,米シスコ製で統一している。以前の社内ネットで使っていたため,運用ノウハウを十分に蓄えてあったからだ。

 二つのネットワークによる冗長化構成を実現するためのルーティング・プロトコルとしては,シスコの独自プロトコルであるEIGRPを採用した。ネットワーク障害時の経路切り替え時間が比較的速いことと,ルーティング・プロトコルが消費する帯域が小さいことを評価した。

 ネットワーク切り替えの確認については,大分銀行の事務センター内にNTT西日本とQTNetの広域イーサネットを実際に引き込み,拠点側の擬似環境を作り上げ,数カ月間かけて検証作業を進めたという。考え得る切り替えパターンなどをすべて想定すると,ベンダー側と銀行側主体のテストを合わせ,最終的には約7200個ものパターンを検証することになった。

 こうした入念な検証作業が奏功し,「本格稼働後にネットワークが障害で切り替わったことがあったが,エンドユーザーは全く気が付かなかった」(奈良推進役補)。

移行作業に向けてリハーサルを実施

 検証作業だけでなく,移行作業にも十分に気を使った。2006年7月から5カ月をかけ,おおよそ1日当たり数店舗ずつ,夜間を使って旧ネットワークから新ネットワークへ切り替えた。業務支援システムの導入が2006年12月とあらかじめ決まっていたため,移行スケジュールを遅らせるわけにはいかなかった。

 そのため,実際の移行作業に移る前に,検証環境を使ってリハーサルを繰り返したという。まず,旧ネットワークから新ネットワークへの機器の切り替え作業がどのくらいの時間がかかるのかを確認し,その後,移行リハーサルに照らしてみる。そして,移行時間を短くできるように工程を改善する。こうして,全体の移行時間を少しでも短縮できるように工夫した。

 併せて,実際の移行作業時には,作業が長引いて翌日の銀行業務に支障が出る状態を避けるよう配慮した。具体的には,想定内の移行時間を過ぎてもうまく新ネットワークに切り替えられない場合は,割り切ってその日は元のネットワークに戻すといった移行ポリシーを作成して徹底した。

すぐに映像配信システムの導入に着手

 予定通り2006年11月には全107拠点の接続が終わり,その翌月には無事に融資支援システムの利用を開始できた。ここで一服することなく,大分銀行はすぐに次のアプリケーションの導入に着手した。顧客向けの情報配信システムと,行員向けの研修システムである。狙いは,顧客サービスの向上と業務効率の改善だ。

 この二つのシステムでは沖電気工業の製品を採用し,情報系のネットワークを通じて映像情報を流している(図2)。配信側のシステムはそれぞれ異なるものの,営業店側の表示用のクライアント端末とディスプレイは両システムの共用である。

図2●大分銀行が導入した情報配信システムと研修システム
図2●大分銀行が導入した情報配信システムと研修システム
情報系の広域イーサネットを使って映像を配信し,支店や営業店の店頭にあるディスプレイに表示する。情報配信システムは顧客へのCMなどに利用,研修システムは行員向けに使う。スタジオは本社にも設置している。  [画像のクリックで拡大表示]

 顧客向けの情報配信システムは,店舗内に設置したディスプレイに,大分銀行のオリジナルCMや地域情報などのコンテンツを配信したり,金利情報をアップデート表示するためのもの。銀行に来店した顧客が見られるようにしておく。

 情報配信システムによりネットワークを通じて配信される情報は,画面上では三つのエリアに分かれて表示される(写真2)。(1)映像表示エリア,(2)金利情報エリア,(3)テロップ表示エリア──である。

写真2●支店や営業店に設置されている表示ディスプレイ
写真2●支店や営業店に設置されている表示ディスプレイ
画面は,(1)映像表示エリア,(2)金利情報エリア,(3)テロップ表示エリアに分かれている。金利情報は,1日2回更新される。映像とテロップはクライアント端末が夜間にダウンロードする。

 このうち,金利情報は一日二回,情報配信システムがホスト・コンピュータから取得して,店舗内の表示をアップデートする。映像とテロップは,業務外となる夜間のうちにサーバーからクライアント端末にダウンロードしておく。こうしてクライアント端末に蓄積しておいた映像を,翌日からディスプレイに繰り返し表示する。

 表示する映像コンテンツを変える場合は,新しいコンテンツをサーバーから拠点の端末に夜間のうちに配信するようにしている。

頭取の「年頭あいさつ」が初利用

写真3●大分銀行が導入した情報配信サーバーなど
写真3●大分銀行が導入した情報配信サーバーなど

 一方の行員向けの研修システムは,事務センターと本店に設置したスタジオから,ネットワークを通じてリアルタイムに映像配信するというもの。行員の社内研修などに利用することを想定して導入した。スタジオで撮影した映像はエンコーダを通じて,まず事務センターの「研修システム・サーバー」に送られてから全店舗にライブ配信される仕組み。映像はMPEG-4で圧縮して送信する。

 ただ,行員向けの映像配信システムの初めての利用シーンは,研修ではなく頭取の年頭あいさつという大舞台となった。映像配信システムの導入を提案する会議の際に,「社内研修だけでなく頭取のあいさつなどもネットワークを通じて流せるようになる」という利用事例を原田推進役が話したところ,「ぜひそれをやろう」ということになったのだ。「システム導入後の初利用が頭取の年頭あいさつというのは,かなりのプレッシャーだった」(原田推進役)。

 そのため,システムの導入の際には,映像の遅延やコマ切れが起こらないようにデータ配信の設定値の調整を徹底した。データ送信の情報量やタイミングなどを少しずつ変え,そのつど画面を見てチェックする作業をベンダーに依頼した。

 そして数回のリハーサルを経て,2007年1月4日の年頭あいさつのリアルタイム配信は無事に終了した。本番は特にトラブルもなく,例年は音声だけだった頭取の年頭あいさつが,2007年は社内ネットを通じて全店舗に映像付きで配信された。

テレビ会議システムの採用に意欲

 大分銀行は,次に導入するアプリケーションの検討を始めている。キーワードはやはり「映像」だ。

 今回導入したシステムは,事務センターからの片方向の映像配信だった。今後は,双方向に映像をやり取りできるテレビ会議システムを導入してみようかと考えているという。現在はわざわざ人が集まらなければならない「ブロック店会議」などを,テレビ会議でできるようになれば,移動コストだけでなく移動時間も節約できるようになるからだ。

 ほかには,監視センターを新たに作り,ネットワークを通じて全店舗の監視カメラのデータを一元集約して監視することにも社内ネットを利用できるのではないか,というアイデアも出ているという。