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 セブン銀行がこの1月、Windowsサーバー上で勘定系システムを稼働させた。日本ユニシスが開発する勘定系パッケージの第1号ユーザーとなる。稼働実績や業界常識にこだわらない決断によりメインフレームを切り替えたことで、開発費は50億円に抑えた。

 セブン銀行が構築したのは、1万台超のATM(現金自動預け払い機)や個人のパソコン、携帯電話などから、1日当たり合計100万件以上のトランザクションを受け付ける勘定系システムだ。日立製作所製メインフレーム上に構築してきたものを、Windowsと導入実績がない勘定系パッケージの組み合わせで再構築した。稼働実績を何よりも重視する銀行界にあっては、極めて異例な選択である。

 新システムの開発費用は、国内最低レベルの50億円だった。プロジェクトが計画通りに安価に終了できた最大の理由を、セブン銀行の池田俊明取締役システム部長は「勘定系パッケージの選択にある」と断言する。

 セブン銀行が採用したパッケージは、日本ユニシスが開発する「BANKSTAR」。メインフレーム上で動作する信金/地銀向けパッケージ「SBI21」をWindows上に移植した製品だ。プロジェクトに着手した2004年当時、BANKSTARの稼働実績は皆無だったが、実績がなくても自社に最適な製品を選ぶ姿勢を貫いた。

 2001年5月開業と歴史が浅く業務のしがらみが少ないことと、実店舗を持たないことも、パッケージを使ったシステム構築には有利だった。 BANKSTARの機能に業務フローや仕事のやり方を合わせることは「そう大変ではないと踏んだ」(池田取締役)。

 システムの信頼性や可用性の面でも、セブン銀行は「いける」との自信があった。BANKSTARをWindowsで動かすためのミドルウエア「MIDMOST」(日本ユニシス製)に対し、銀行オンライン・システムに不可欠な機能を盛り込むことの確約を得たからだ。例えば、データベース障害が発生しても、別のデータベースが処理を引き継ぎ、30秒以内に処理結果を返すフェールオーバー機能などを実現させた。

図 セブン銀行が今年1月に稼働させた新勘定系システムの概要
勘定系システムだけでなく、ATMや統合ATM、全銀システムなどとの接続経路もすべて二重化してある。台数はいずれも1月24日時点
図 セブン銀行が今年1月に稼働させた新勘定系システムの概要
* 1)日立製作所製パソコン・サーバー「HA8000/270」。OSはWindows Server 2003 Enterprise Edition
* 2)日本ユニシス製パソコン・サーバー「ES7000」。OSはWindows Server 2003 DataCenter Edition。ミドルウエアは日本ユニシスの「MIDMOST」。アプリケーションは「BANKSTAR」。データベースはSQL Server 2000 Enterprise Edition
* 3)日立製作所製パソコン・サーバー「HA8000/270」。OSはWindows Server 2003 DataCenter Edition。ミドルウエアは日本ユニシスの「MIDMOST」。アプリケーションは「ETAIGAI」
* 4)提携金融機関との接続の2重化は、今年4月以降に順次実施予定

 セブン銀行が今回、勘定系システムを刷新したのは、「定期預金など新商品の実現速度を高めたかったため。個別開発が求める期間と費用は、当社の経営スピードからは容認できなかった」(池田取締役)。システム調査を依頼したコンサルティング会社、A.T.カーニーが出した調査結果を参考に、銀行が大きくなりシステムを再構築しづらくなる前に刷新した方が得策と判断した。

 新勘定系システムには、定期預金や融資の機能も組み込んである。システムの準備が整ったことで、セブン銀行は、これら新商品の投入時期を探っている。