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 JFEスチールは3月、旧NKKと旧川崎製鉄で2系列に分かれていた基幹系システムを完全統合した。修整が容易な“変化に強い”システムを目指し、概念データモデリングの設計手法を採用。300億円近い費用を投じ、2000万ステップ規模のシステムを全面再構築した。

 JFEスチールは、新統合システム「J-Smile」の稼働により、これまで旧NKKと旧川崎製鉄で2系列に分かれていた業務手順を完全統合した(図)。これにより、一部の製品では生産リードタイムを20日から15日に短縮するほか、年間100億円のコスト削減効果を見込む。内訳は、原料の一括調達による購買コストの削減が20億円、販売・生産・物流の業務効率化で60億円、システム維持費で20億円である。

図 JFEスチールにおけるシステム統合の概要
図 JFEスチールにおけるシステム統合の概要

 システム統合を進めるにあたって、JFEスチールは旧2社が使っていたシステムのどちらか一方に片寄せするのでなく、新システムを一から構築する方法を選んだ。その狙いについて、同社の福島幹雄副社長は「ビジネスの変化に応じて素早く修整できるシステムを作りたかったから」と説明する。

 旧2社のシステムは、いずれも「20年以上前に原型が完成したもの。それを長年手直ししてきた」(JFEスチールの菊川裕幸システム主監)。その結果、システムの修整に手間がかかるようになり、ビジネス・プロセスの変化を反映するのが難しくなっていた。

 このような共通の課題を持っていた両社だけに、「システム統合をするなら、片寄せでなく作り直そうということで一致した」(菊川主監)。ただ、全面再構築には時間がかかるため、2003年4月の経営統合時は暫定的に両社のシステムをブリッジ・システムでつなぎ、それから再構築のプロジェクトを本格スタートさせていた。

 業務手順や取引ルール、取り扱い製品が今後も頻繁に変わることを前提にしたシステムを作るために、JFEスチールは「ビジネス・プロセスが変わってもシステムが持つデータの意味は変わらない」(菊川主監)ことに着目。データが持つ意味とデータ間の関連を表す「概念データ・モデル」を使って、ビジネスの現状をモデル化し、それを基にあるべき姿を導き出す開発手法を採用した。J-Smileの開発にあたって定義したデータは9万項目に達する。

 J-Smileの開発規模は2000万ステップ。メガバンクの勘定系システムに匹敵する大規模なシステムを安定稼働させるため、ハードウエアは日本 IBMの最上位メインフレームである「eServer zSeries 990」を選んだ。アプリケーションは、「ハードウエアやOSに依存しないオープンな開発言語であるJavaで構築した」(菊川主監)。システム開発は主に、システム関連会社のJFEシステムズとエクサが、ピーク時800人がかりで手がけた。